56.土地をくれ
「想像以上に荒れてるな。」
スラル王国の首都ハーロルの現状を見て、ワルドはそう呟いた。
「ここは大陸有数の大都市って言われていて、お城がとても立派ということで評判だったと聞いていたんだけど、、まさかね、、」
カノンがそう言い、
「まさか、完全にその城どころか城下町までもが消し飛んでいたとは思わんかった。」
アルマスが言葉を繋いだ。
アルマス達はヘーテスからハーロルが大きな被害を受けていると聞いていたが正直ここまでの状態だとは思っていなかったようだ。
「スラル王国は結構裕福な国で栄えていましたが、ここまでくると、もう再興は難しそうですね。一応、調査するという仕事があるのでいろいろと調べてきます。」
風丸は大陸の調査という仕事があるため、その一環として町の状態などについて調べに行った。ハクは面白そうだとそれについて行った。
三人は適当に歩いているとアルマスは大きな避難所を発見した。中は完全に空であり、少し前まで生活していた跡が見れた。
「この時期に観光はないよな。何用だ?食料も金目の物はもうないぞ。」
突然、鎧を着た男が目の前に現れた。男は剣を抜いている。それをみた瞬間、カノンやワルドはいつでも戦闘に入れるように構える。
「少し前までここに人間がいたようだが、ここにいた人間はどうなったんだ?」
アルマスは聞いた。
「集団でどっかに避難していったよ。俺以外の兵士も全員、そっちに同行したから残ってるのは俺ともう一人ぐらいだ。」
残ってる人は彼以外に子供がおり、捨てられたか、親が死んだのだろうか。
「そうか、で、俺達の目的は人探しだ。本業は運び屋だから運搬とかは受け付けるぜ。なんなら食料でも売ろうか?」
「運び屋、人探し。、、名はアルマスであっているか?」
男は剣を鞘に戻しながら聞く。
「あってるが、どこで知ったんだ?大陸ではあまり活動していなかったんだが」
「スラルの誇る大陸有数の学園の最上位クラスに特例で入った人間の情報が国の中枢に伝わっていないはずがないだろ。運び屋のアルマスとカノン、能力も覚醒済みであり、単独でのハルル諸島から大陸への運搬が可能である数少ない少年少女。」
男は名乗る。
「威嚇したのは悪かった。いつもの盗賊かと思ったのでな。俺の名はロット。部下も上司も守るべき国民も守れなかった情けない騎士の名だ。」
ロットと名乗った後、アルマス達も名乗っていった。
「じゃあ、俺も一応自分の口から言っておこう。名はアルマス、運び屋だ。とある奴から依頼されたので人探しをしに大陸を旅している。」
「同じく運び屋のカノンよ。よろしく。」
「一応護衛として雇われたワルドだ。」
「同じく護衛の風丸です。」
「面白そうだからついてきたハクです。」
いつの間にか風丸とハクがいた。簡単な調査は終わったらしい。まあ、まっさらな大地に瓦礫が転がっているだけなのですぐ終わるのは当然ではあるが。
「よろしくでは早速、栄養価の高い食材などの販売はしていないか?まともな金や物はないが欲しい物があるのなら何でも渡そうじゃないか。俺はともかく、ここの子供には魔が混じってしまった動植物は毒だからな。」
ロットは早速アルマスに食料を求めた。
「そうだな。、、、栄養のある食料はあるが、欲しいものか。」
「無料配布とかはしないのか?」
ワルドがそう聞くがアルマスは否定する。
「俺はこいつらに恩を売るほどの価値をまだ見出していないからな。友達でもないし」
「厳しいな。」
ロットはアルマスの言葉に苦笑いしながら言った。
「じゃあ、土地でも貰ったら?」
話を聞いていたカノンが言う。その瞬間アルマスが閃いた。
「それだ!土地をくれ。都市があった範囲全部。管理はお前に投げつける。対価は一年間分の米、野菜、肉、保存環境や畑とかの初期部分は整えてやる。」
アルマスの要求にロットは少し考えて了承した。
「了解した。要求を受けよう。管理及び防衛は俺がしよう。人手は俺一人で何とかしよう。実質的に廃業していたので働き口が見つかっただけでもありがたい。」
アルマスは無理な要求をしたつもりであったが、ロットは簡単に了承したためかなり戸惑っている。
「かなり損してると思うけどいいの?」
「俺的にはこのスラルの土地は他国に侵略される可能性が高いからかなりリスクが高いと思うがいいのか?」
「この土地の広さを一人で守り切るのは流石に不可能では?」
カノンとワルド、風丸がロットに尋ねる。
「これは元々俺の土地という訳でもないから損などない。あと、国防は元からの職務だ。一国や二国程度の軍隊を恐れる理由がどこにあるんだ?暴風使いに黒晶の怪物。お前達もただの人間の塊など簡単に蹴散らせる側だろ。第一、相手の多さは俺が負ける理由にはならない。」
ロットはカノンやワルド、風丸の言ったことに対して正しく理解した上でそう言い放った。
「魔法で契約させてもらうが問題ないな?」
アルマスがロットに聞く。ロットはもちろんと頷いた。
契約を交わしたロットとアルマス達はロットに案内され、とある地下室に入った。
「ただいま。」
ロットが入った部屋には六歳程度の小さな少年がベットの上にいた。
「お帰り。お客さん?」
少年の声は腹が減っているせいか元気がないし不機嫌そうだ。
「ああ。五人いる。こっちから、」
「アルマスだ。」
「カノンです!」
「ワルドだ。」
「風丸と言います。」
「ハクだよ!」
アルマス達は軽く自身の名前を少年に紹介した後、地上出て食事の準備を始めた。
「喜べ!今日から腹いっぱい食べれるぞ。」
ロットは少年を元気づけようと笑顔で言った。
「やったー!」
少年はベットから降りてパジャマから着替える。
「栄養についても問題ないからな。」
ロットがそう言うと少年は嫌な顔をした。
「僕野菜嫌い!」
少年は枕を投げつけた。枕の速度は音速を超えていた。
「野菜も食え!」
ロットはそれを容易くキャッチする。
「果物とお菓子あるらしいぞ。」
ロットがそう言うと少年は態度を変えた。
「野菜も少しは食べる」
「扱いやすいな。」
ロットと少年は雑談をしながらバーベキューの準備をしているアルマス達の元へと向かった。
ジジッ、、ザッ、
階段の途中、ロットは一瞬少年の体が少し乱れたような気がした。




