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聖剣の担い手探し  作者: かざむき
55/92

54.首都ハーロルにて

「各地の被害の報告を頼む。」


 少し大きなテントに声が響く。奥の机にその声の主が座っており、その後ろにはスラル王国の国旗が垂れ下がっていた。机の前には書類を持った兵士が立っていた。


「はい。まず、ここ首都ハーロルですが、先日原因の特殊個体を何とか討伐しましたが、壊滅状態であることは変わりなく復興の目途は立っておりません。

 次に大陸南端の主要都市カルワルナですが、完全消滅したという報告を受けています。しかし、こちらについては実際に確認に行った兵士達に記憶の混濁が見られるため正確な情報であると言い切ることは出来ません。

 そして、東の要の…

 …報告は以上です。」


 兵士はテントから出て、男は報告を聞いて頭を抱えた。


「我らの国も終焉の時か、、」


 彼は一人呟いた。彼はこの国の現状に絶望していた。もう何もやる気力が起きてこない。

 主要都市は全て壊滅または消滅している状態である。また人口に関しても元の三割まで減少し、それも餓死などの理由でさらに減少するだろう。また、所々で今回の厄災の原因が獣人と言った人間以外の人類と決めつけ迫害する運動が活発になってきている報告もある。その他にも被害をあまり受けなかった小国が勢力を広げようと企んでいるという情報もあった。普段は頼れるタノラ帝国も受けている被害は他国に比べればマシというだけで甚大であることには変わりないので救援を要請できるわけもない。

 男は悩んでいても仕方がないとテントの外に出る。


「この景色は慣れたくないな。」


 男は目の前に広がる景色を見て呟いた。戦いは余程激しかったのだろうか、瓦礫すらあまり残っていない。石畳はほとんどが砕け吹き飛んでおり地面もかなり抉れている。少し先にはこの国の中枢であるハロール城の跡地があった。昨日までは少数の兵士が遺体やら役立ちそうな物などの捜索を行っていたがもう撤退しているようだ。

 人々は首都から少し離れた所に住民の避難所が設立したが、食料などまともにあるはずもなく崩壊は時間の問題であった。


「戦える者はほとんどが戦死。もし、生き残っても、こんな食料が無くて発狂寸前の奴がわらわらいる場所にわざわざ留まるはずがないよな。」


 男はこの町に魔獣を容易く葬っていける強者がほぼ残っていないことを残念に思った。男はそんなことを考えながら町であった場所を散歩する。


「久しぶりだな、ロット」


 男は急に後ろからロットと呼ばれた。彼は直ぐに振り返り自身の名を呼んだ者を確認する。


「なんだ、ノブか。風の噂で聞いたが串屋を始めたらしいな。調子はどうだ?大盛況か?」


 ロットはノブに挨拶代わりに冗談交じりの質問をした。


「始めはいい感じだったぜ。結構繁盛したし、ちょっと特殊な固定客も居てくれたから順調な滑り出しだったんだがな。最後は町ごと綺麗さっぱり穴に落ちちまった。で、そういうお前はどうなんだ?兵士を上手く纏め上げてるし、上が全員城ごと消えたから、今は王か?」


 ノブは笑いながら言う。ロットも軽く笑った後、真面目モードになる。


「外から見ればそうなのだろうが、俺的には兵の面倒ばかり見て、国民を無視してるから王とは呼べん。カルワルナはどうなっている?穴に落ちたとはどういうことだ?まさか奈落が開いたとは言わんでくれよ。」


「ビンゴ!開いたぜ。門番の野郎が機転を利かして迷宮で塞いでくれなければまずかった。現在カルワルナは直径がカルワルナと同じサイズの馬鹿でかい塔が立ってる状態だ。まさかメヤタルナの作品を利用して強引に奈落を繋げるとは驚いた。あそこは凄かったぜ。吸血鬼、悪魔、邪竜、最後の一(ラストワン)などいろんな奴らがいたからな。経緯としては…」


 ノブからカルワルナの現状とそうなった経緯を簡単に話されたロットは、そのスケールの大きさに俺達ってマシだったのかと思った。

 

「お前はなぜ参戦しなかったんだ?ワルナトロティカも参戦している状態だろ」


 ロットの質問にノブは少し考えてから答えた。


「それはあくまでもの能力を使える奴が参戦するだけであって、あれ自身が参戦しているわけではないというグレーゾーンだからな。いくら俺があの怪物どもより格下と言ってもこの状況で戦闘するなら確実に天秤のシステムが壊れ、空が開く可能性が高い。もし動くならばヘーテスやバーバルムのようにかなり加減をする必要があるから面倒臭いから参戦しなかっただけだ。まあ、奈落が空いた瞬間はガチ焦ったが。マジでヘーテスが居てくれて助かった。俺がやったのはそれらしい言葉を並べて第三者に迷宮の存在を確かめさせて迷宮の存在を安定させたことぐらいだし。第一俺としてはこの時代のことはこの時代の者に解決してもらいたいと考えているからな。」


 ロットはノブが意外と考えていたことに驚く。そして、ロットは思ったことをそのまま言った。


「そうかよ。お前も大変なんだな。俺からしたらお前は今を生きる人類だがな。まあ、本当にヤバい時ぐらいは手を貸してくれよ。」


「ああ、そうするよ。さて、次はどこで串屋やろっかな~。」


「呑気だな。避難所の連中の前で言ったら刺されるんじゃないか?」


「刺せるもんなら刺してみろって話だ。あの程度の魔獣共から自分の身すら満足に守れないような弱者に俺が殺せるか。なんなら、目の前で串屋でもやってやるか?開店セールで安くするぜ。」


 ノブはかなりふざけた調子で答えた。


「それは名案だ。時間があったら是非やってくれ。食料問題が深刻なんだ。」


 こんな調子でロットとノブの会話は二、三時間続いた。二人共最近のことで相当な愚痴が溜まっていなのだろう。


「おっとそろそろ時間だ。それじゃ!串屋の話は考えとく。」


 ロットとノブの会話はこの一言で唐突に終わりその場からノブは消えた。いや、目にも止まらぬ速度で移動しただけであろう。ロットはこの感じをいつも通りだと思い特に不満も感じていない。

 ロットはテントに戻る。そして、終わりが見えない仕事を再開するのであった。




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