53.出発
白い獣が巨大な塔を背を向けて馬車を引く。
「やっと修行の日々が終わった!!」
馬車の上でアルマスはそう叫んだ。
方針の会議から一ヶ月後、アルマス達はヘーテスの迷宮からスラル王国の首都サルに出発した。この一ヶ月間、アルマスは風丸から剣術の基礎、ヘーテスから魔法含むあらゆる超常的な術の基礎などを学んでいた。また、これは全員ではあるが、悪魔による戦闘訓練、総当たりの模擬戦などもあった。
「ヘーテスって改めて化け物だと感じたわ。カトやペテテル見てる感じだと悪魔が全員あれだけの強さって訳じゃなさそうだけど。」
カノンもそう言っている。戦闘訓練がよっぽどきつかったのだろう。
「悪魔とか言ってるくせに魔と共通するのが魔法に対する適性が高いだけとか、名前詐欺にも程がある。邪竜とか飛竜とかも竜とは違うらしいし種族名ふざけんなって、いつもテスト前の学校で思った奴は少なくないと思うぜ。」
アルマスは過去の学校生活を振り返りながら言った。
「悪魔も魔も竜も何なら妖怪とかも全部人間が自身らのイメージで、適当につけて広がて定着したからややこしいような状態になってしまっているってカトが言ってたよ。」
ハクは白い獣の姿となって馬車を引きながら話す。
「誤った認識をもとに名前が定着してしまったことによってわかり辛くなるのは別に問題ないらしいけど、それによってその存在自体にも影響が少なからず出るらしいから迷惑だともいっていたよ。」
「はへー、存在があっての名前だから名前によって存在に影響が出るのはおかしいんじゃねえか?」
ハクの話を聞いてワルドが質問した。カノンや風丸も確かにと頷いている。それに対してアルマスが答えた。
「これはあまり実感でしにくいと思うんだが、この世界は物理法則や魔法、俺達が持つような能力といった力の他にいろんなルールがあるんだ。で、そのさらに上に、意志ある物の思念や願い、信仰などによって世界が変化するっていうとんでもないルールがあるんだ。」
そうアルマスがいうと、ハク以外がポカーンという顔になった。アルマスとハクはそのような反応になることを予想していたのか、やっぱりという顔になった。
「すいません、言う通り全く実感が持てません。実例をもとに説明して頂けますか?」
少しの間の後、風丸がアルマスにそう言った。
「実例か。丁度ここにいるじゃないか。ハクっていう最後の一がいるじゃないか。カノン、最後の一の発生条件を覚えているか?」
「ええ、その種が最後の一体になった時に誕生すると記憶してるわ。」
「ああ、その通りだ。では、そのエネルギーは何処から来ているか説明できるか?」
その言葉を聞いてワルドはわかったようだ。少し遅れてカノンや風丸もわかったような顔になった。
「わかったか?この謎のエネルギーの正体は今までその種が生まれてから死ぬまで抱えていた種の存続、具体的には血を残すという本能から来る願いの総量だ。たかが一体が一生願ったところで目に見えた変化が起こる訳もないが、それがその種全ての合計なら話が変わってくる。ただの魔獣に蹂躙されるような獣がこんな怪物に変化するんだからな。こいつの場合、複数種の同時消滅、こいつが偶々それらの血を受け継いでいた混血野郎だったからここまで変化したという説が俺の中では濃厚だがな。まあ正直、俺達には最後の一の発生の時ぐらいしか実感出来ないようなことだから忘れてもらっても構わない。また…」
その後しばらく続くアルマスの説明は続いた。既に多少知っていたハクはそちらに少し耳を傾けながら辺りの景色を見渡した。
今走っている道はカルワルナと首都を出来るだけ一直線で繋げた道であり、普段はカルワルナで大陸外の品を仕入れた商人で賑わっている道であるが今は一人も通行人はいない。
港町カルワルナがあった場所にはその町をすっぽりと収められるほどの大きさの天を貫くほどの巨大な塔がたっている。奈落への穴が開かれたがヘーテスが迷宮を発生させ増築しその穴の大きさに合わせて迷宮を広げ、更に攻略されないように階層を増やしていると気が付いたらこうなっていた、とヘーテスは語った。
そのせいでハクからはもう随分走っているのに塔はずっと見え続けている。普通の生物にはある程度近づかないと知覚できないように幻術を掛けてあるらしいが、ハクの眼を誤魔化すことは出来ていないようだ。ヘーテス程の技量でもハクやアルマスの眼を誤魔化すレベルのは流石に大変で面倒臭いらしい。
ハクは塔を視界から外して周囲を見渡す。魔獣や魔はあまりいない。邪竜によって生み出された魔は邪竜と同化したカナの一声で完全消滅したため、魔獣がいるのならば自然発生する個体か、蛇ゴリラから逃れ襲う目的を失った大規模爆発型魔獣発生で発生した魔獣であるため、この少なさは当たり前であった。
ハクはそれを火球を飛ばして全て焼いていく。少し強力な個体であっても彼の炎に耐えれるような奴はここにはいなかった。
「訓練の成果が出てるな。」
アルマスが少し窓から顔を出して言った。どうやら、説明は終わったらしい。
「ちょっとした強風程度では精度に支障が出ないくらいにはしたからね。アルマスもやってみたら、投擲。」
「そうだな。最近やってなかったし。」
ハクの誘いに乗りアルマスは屋根に上がった。そのまま本を取り出して、剣を創って投げた。剣は凄まじい速度で飛び魔獣を貫きそのまま地面へと潜っていった。
「模擬戦の時も思ってたけど髪が白くなってからの身体能力凄いよね。それなら理性無しの僕をワンチャン倒せるんじゃない?」
「無理だろ。息をするように身体強化と魔法で体を強く速くしているが、お前の皮を貫通できるほどの攻撃力がない。」
アルマスはそう言いながら空中に数本剣を創って、本の術を使って射出した。威力は先程の投擲と同程度であり全てが魔獣達の頭を貫いた。
「聖剣ならどうなんだい?製作者権限とかで使えるんでしょ。」
ハクはアルマスが迷宮に入った瞬間のことを思い出しながら聞く。
「あれは奈落だから出来たことだ。あそこは時間や空間とか諸々のルールがあやふやになる。それであの瞬間は振るえただけで普段は100%解放なんて出来ない。ただ、ワルドか風丸を連れてこれるならその状態のハクには勝てるな。」
アルマスはワルドの能力と風丸の技を思い浮かべる。ハクもそれに同意のようだ。
二人がワイワイ喋りながらちらほらいる魔獣の的当てをしながら首都への道を進む。 因みにこの後、カノンも的当てに参加し、この一帯に暴風が吹き荒れるのであった。
めっちゃ迷走してる気しかしない




