50.再会
「見たか、ナーニャの最後の顔。自信に満ちてやがったぜ。」
ナーニャが最後凍らされた場面を見て、カトが笑いながら言った。
「あそこまで出来るんだったら十分じゃないか。おかわりくれ。」
トルクスがご飯を食べながら言う。
「ヘーテス、俺の分の追加で。まあ、俺が万全だったなら勝てたと思うがな。」
トルクスに続きアルマスもヘーテスにおかわりを要求した。
「不意打ちで即凍った奴が何言ってんだ。後、米はさっきので最後だ。残念だったな。」
ヘーテスはアルマス達にそう言い放ち三人は残念そうな雰囲気になった。
今ここで飯を食べていたのはヘーテス、アルマス、トルクス、カトの四人である。少し前までカノンやワルド、ハクなどもここで飯を食べていたが、彼らはさっさと食事を済ませて草原に暴れに行った。
この石レンガの部屋には真ん中に大きなテーブルがあり、彼らはそれを囲んでいた。部屋の端には本棚があり、どれも古く分厚かった。部屋に光源らしき物はないが、なぜか部屋は明るく影はない。窓はなく扉が一つあるだけだ。
「そういや、トルクスとカトってメヤタルナ城塞でやりあったんだろ。お前達に恨みとか禍根とかって残ってないのか?聞いている限り、カトは大量の人間を殺戮したようだが。」
アルマスは敢えて危険な方向に話題を持っていく。
「俺は悪魔だし、奪った側だから何とも思ってないぜ。あと、殺戮ってなんか言葉の響きがいいな。」
カトはさらっと言う。トルクスを煽っている自覚はあるようで、若干いつでも戦闘に入れるような体勢であったりする。
トルクスはそんなカトを見ながら言う。
「煽っても無駄だぞ。俺にしてもそう言う物はない。薄情だろうが、俺ももう人間じゃないから人殺しとかで騒ぐ気が起きない。友や知り合いを殺されたがもう過ぎたことだ。今更どうしようと意味がない。そんなことよりもヤバいことが起きているんだろ?第一、復讐するにしてもそれが終わってからでも遅くないし、そんなことをすると最悪ヘーテスを相手しなければならない。復讐に関してはカナがしないかどうかが心配ぐらいだ。そういや、全員人型だから忘れていたが今この部屋に人類一人もいないな。」
その言葉を聞いた三人は思っていたよりもトルクスが達観していたことに驚く。カトは体勢を元に戻しまだ残っている飯に手を付け始めた。アルマスは食事を終えて本を読み始めた。ヘーテスはいつもよりもかなり細い鎖で食器などの片付けを始めた。トルクスもワルド達と日課の修行にいくために剣などを準備する。
コンコンコン
すると、扉をノックする音が聞こえた。
「失礼します。ナーニャが目を覚ましました。」
ペテテルが扉を開けて入ってきた。それに続いてナーニャも入ってくる。
「ヘーテス。一体、どういうことなのか、説明してもらってもいいかな?」
ナーニャは青筋を浮かべて喋る。アルマスやカトは不味いと思いさっさと部屋から出ようとするが、ペテテルは外に出て、ついでに扉を閉める。
「カトとアルマスも残りなさい。」
トルクスは場の雰囲気がやばいことに気が付き、気配を殺して終わるのを待つ。
「ペテテルから聞いたわ。何で最初から、ここに、呼ばなかったのよ!!!!」
ナーニャは大鎌を取り出してヘーテスに切りかかる。ヘーテスは黒鎖を使って大鎌を受け止めた。
「元気そうで何よりだ。怒っている理由は分かるが、ここでぶつけるのは良くないな。」
「知るか!ここがあんたの創った迷宮なら場所なんて自由自在でしょ!ブラッドウルフ」
ナーニャは血を操って狼を作り、ヘーテスを襲わせる。ヘーテスは銃でそいつらに特殊な弾丸を撃ち込み破裂させる。
「そらそうだが、面倒なんだよ。」
「いいから一発殴らせろ!!」
ナーニャは大鎌を放っておいてヘーテスに直接殴りかかる。ヘーテスは軽く避けようとするが、それをアルマスとカトが阻止し、ヘーテスは思いっ切りナーニャに殴り飛ばされた。
ここはヘーテスが奈落に創った生まれたての迷宮の最下層だ。ナーニャが怒っていた理由であるが、それは迷宮に入ったときにみんなでアルマスとナーニャの道中を観覧し、娯楽として楽しんでいたからである。迷宮の層がまだ全く作れておらず、もう少し二人の迷宮攻略を見ていたかった彼らは氷鳥を起動させたことも怒りの原因の一つでもある。
「って言うか。アルマス、あんたは何でそっち側にいるの?私と同じ被害者側じゃないの?一緒にヘーテス殴ろうよ!」
ナーニャはさらっと始めから迷宮にいた組のようになっていたアルマスにもヘーテスを殴るのに参加して貰おうと呼びかける。アルマスは面倒くさいのを嫌って無視する。
「あと、何で、こんなところに迷宮を創ったのよ。」
ナーニャはヘーテスに聞く。アルマスやトルクスもそれについては興味を示した。
「あー、それについて、奈落への穴を塞ぐためだな。大昔、奈落にいろいろと落としたから、長いこと開けてると、何が這い上がってくるか分からない。、、、さて、話は終わりだ。さっさと修行、、じゃないな、自分らの力を正しく把握してこい。」
そういうとヘーテスは全員を強制的に部屋から追い出した。
アルマス達は部屋から追い出され、廊下を歩く。
「カノン達ってどんなところでその能力の把握をしてるんだ?」
ナーニャよりも早く目が覚めたアルマスもまだ、カノン達の修行風景を見ていなかった。
「元々はバカみたい広いだけの草原で各々が自身の限界に挑戦していたぜ。」
廊下を抜けると目の前広がっていたのは草原ではなく、地面は漆黒の結晶に覆われ、暴風が吹き荒れ、巨大な竜が空を舞いながら巨大な結晶の怪物と争っている。気温は灼熱のようであり、まるで異世界のような光景が広がっていた。よく見ると巨大な怪物の残骸の結晶や巨大植物の結晶や意図的に伸ばされたであろう天まで届く結晶の柱がちらほら見ることが出来る。
「結晶はワルド、暴風はカノン、竜はカナで、灼熱はハクが起こしています。」
風丸が転移して来てアルマスに言う。
「風丸か。こんな環境でお前は修行してるのか?」
アルマスは恐る恐る聞く。返答によっては自分達もここでしなければいけない可能性が格段に上がるからだ。
「もちろんですよ。鬼化した状態で暴走しても問題ないのでとても便利です。ヘーテスのお陰で自動蘇生も付与されているためいくら事故っても問題ありません。みんな、自分の最大がどのくらいなのかを把握するために暴れまわっている感じなので、アルマスも頑張って自分のリミッターを外して暴れてみるのもどうでしょうか。」
そういうと風丸は地獄の中に飛び込んでいった。一回り大きくなったと思ったら立派な角を持った白い獣が出てきて争いを始めた。
トルクスは体をエネルギー体に変化させて、竜と黒い怪物との戦いに身を投じた。
「あれに混ざるのか?」
「私は前提条件の暴風に耐えきれずに飛ばされる自信があるわ。」
「血を纏ったらいけるんじゃないか?」
「なんで知ってるのよ!」
「アーカイブ見させて貰ったからな。」
「ヘーテス、後でもう一回殴ろ。」
「勝手にしとけ、暴風については風除けの魔法とかないのか?」
「あるにはあるけど、、」
アルマスとナーニャがグダグダ話しているとカトがしびれを切らした。
「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと行け。」
カトが蹴飛ばして二人は嵐の中へと飛び立った。さっきまで弱音を吐いていた二人も術を駆使してこの環境に適応する。二人はどうせならということで風丸とハクの戦闘に混ざることにした。
戦況はハク対風丸、アルマス、ナーニャとなり、ハクの圧勝で終わった。




