49.vs氷鳥
氷鳥は迷宮に侵入した生命をこれ以上進ませないために停止させにかかる。氷鳥はその場からは動かずに冷気を解き放ち、同時にナーニャに向かって鉄の針を撃ち込んでいく。四層は瞬く間に氷漬けにされ、撃ち込まれていく鉄の針により、内部まで完全に凍結していく。
「対特殊防壁、起動」
ナーニャは自身が持つ最大の守りを展開するが、それは氷鳥が飛ばしてくる大量の針によって簡単に突破される。
「出鱈目過ぎでしょ!!!」
ナーニャは結界を自身に張って、全力飛行で鉄の針を避ける。結界により、冷気はかなり防げているが、鉄の針には簡単にナーニャの結界を破るだけの力があった。
「強制転移、起動」
また、ナーニャの魔法は氷鳥付近で発動させようとすると陣が凍結、停止するため起動すらしない。
「記録解析、再現、改造、精霊核付与、炎の巨人」
ナーニャはその場で魔法を使い、炎で構成した巨人を出現させて冷気に対抗しようとする。巨人は周囲に熱を与え、氷を溶かしていく。
「炎の巨人よ。狂戦士として炎の斧を持って眼前の敵を打破せよ。」
ナーニャの命により巨人は巨大な炎の斧を出現させ、全力で氷鳥に向かって駆け出す。その巨人が通った後は氷は溶け、森は炎上していた。
ゴオオオオォォォォ!!!!
巨人は氷鳥の目前まで迫り、その巨大な斧を振り下ろす。その威力は蛇ゴリラ程度ならば易々と蒸発させれる程であった。しかし、氷鳥がそれだけで溶けるということはなかった。斧は氷鳥に触れた瞬間、炎の斧は熱を完全に奪われ消滅した。だが、巨人はその程度で止まらない。武器がないなら拳でいけばいいじゃないと氷鳥の頭を殴り溶かそうとした。
そんな、巨人にやっと氷鳥は行動した。ただ口から冷気を吹きかけただけだった。巨人の熱はその冷気に完全に奪われ、精霊核も停止させられて消失した。その冷気は炎上していた森を再び氷漬けにし、直線上にいたナーニャは間一髪でそれを避け事なきを得る。
「能力は凍結、いや停止かしら。どちらにしても私の魔法では氷は溶かせなさそうね。生命体ではない。精霊核及び魔、霊、妖なども使用していない。何らかの術で作成された装置みたいな物ね。生きてないのか。。、、取り敢えず、カトがいつも言うように全力を試してみますか!」
ナーニャは巨人で稼いだ時間を使って、鎌を手元に出現させていた。
「これは地獄より来たる大鎌、これ纏いしは地獄の業火」
ナーニャの鎌は炎を纏い、氷鳥の大きさに合わせて巨大化する。
「焼き鳥になれ!マーストラ!!!!」
ナーニャは大鎌を投擲して氷鳥を貫く。その瞬間四層にその業火が駆け巡り、凍結していた世界は溶かされ炎上していた。
「やっぱ、生物じゃないから効果が薄かったのかな。」
ナーニャは少し胸辺りが溶けた程度の氷鳥にうんざりする。氷鳥は羽を広げて冷気を放つとその溶けた部分も再び凍り、足りない分は周囲の氷から拝借して元の状態に戻す。
「アルマスのはこんなのだったと思うけど。」
ナーニャはアルマスの本の術を参考にして身体強化を行う。
「あとはアレンジして、高速行動」
ナーニャは停止に少しでも抗うために高速で動けるように魔法をかけた。
「さあ、逃げましょうか。」
ナーニャは氷鳥を倒すために三層へと必死の逃亡をスタートする。氷鳥は炎上し続ける鎌を放っておいて、その場から離れてナーニャを追った。四層の地上を焼く業火は至る所に埋め込まれた針によって熱を奪いつくされ消火していった。
ナーニャは高速飛行で氷鳥から逃げる。氷鳥はナーニャを追いかける。幸いな事に飛行速度はナーニャよりも遅くどんどん遠ざかっていく。しかし、氷鳥が羽ばたく度に冷気はナーニャ以上の速度で広がり、辺りの温度は氷鳥と同じになっていく。ナーニャの結界では氷鳥付近の温度には耐えられず、内部の凍結を許してしまうため、ナーニャとしては実質的にどんどん追い付かれている状態と同義であった。
「炎槍砲、起動」
ナーニャは事前に準備していた魔法を使い、氷鳥を少しでも削ろうとするが、目に見えた効果はない。
氷鳥は針を大量に射出し、ナーニャを停止させにかかる。ナーニャは何とか避けまくる。結界を最低限の出力に抑えて飛行能力に全力を回す。
地面に埋め込まれた針も再び起動してナーニャに発射される。追尾機能がないのが不幸中の幸いだろうか。今だに致命的なダメージは負っていない。
「うぐっ!!」
その瞬間、ナーニャの右手に針が刺さる。ナーニャは大事になる前に手ごと切断した。切り落とした手からは刺さった針が枝分かれして、大量の針が突き出し凍り付いていた。
氷鳥の攻撃は激しさを増していく。始めは対応できた針と冷気であったが、次第に針の量と速度は大きくなり、冷気の温度は下がり、広がる速度は速くなる。
更に地面に埋め込まれた針は植物の様に成長し、鉄の木となり、その葉は針となってナーニャに向かって発射される。
地上を覆う氷は成長して巨大な氷山となってナーニャの行く道に立ち塞がる。中には直接ナーニャを貫きに来るのもある。龍となって空中から襲ってくるものもあった。
「あああああ!!!!!!」
ナーニャは腕から流れ出る血の量を増やして血を操り鋭い爪を持った赤い巨大な右腕を作って龍を粉砕する。
「ああああああああ!!!!!!!」
ナーニャはそのまま目の前に存在する障害物を破壊して進んで行く。ナーニャは血を多く使っているために思考能力が低下しており、頭を使う魔法ではなく比較的に本能的に扱える自身の能力、特性を使うようになっていく。
結界は既に針にやられた。体を瞬間的部分的に霧化させて大量に飛んでくる針を避け、黒い巨大な羽を生やして飛行速度を上げ、目の前に塞がる障害を血の爪で破壊していく。鼓動は異常な程に速くなり、血は常人では考えられない程に熱く、そして大量に溢れ出る。そのせいか、冷気はもう気にならない。ナーニャはただ三層への穴へと突き進んだ。
「あった!」
ナーニャは三層への穴を見つけ、飛び込む。三層から四層に行くときに通る場合は魔法的な措置が必要であったが四層から三層に向かう分には必要ないようだ。
ナーニャは虚無な空間の三層に到達する。その瞬間、ナーニャは転移して二層へ行きそのまま二層に退避し、そのまま倒れこんだ。
体はボロボロで血の武装は解けている。ナーニャは必死過ぎてさっきまでどうやって逃げていたかを覚えていないようだ。彼女は疲れすぎて気絶した。
数分後、ナーニャが目を覚ますと、氷鳥はやっと三層に到着した。どうやら、三層への穴が氷鳥からすると小さく通るのが大変だったようだ。
氷鳥はナーニャの魔法の痕跡を辿って移動を開始する。いや、開始しようとした。氷鳥は移動できない。空気や地面となる物質がないため、翼をいくら動かしても、脚をいくらバタつかせても移動することが出来ない。魔法を使えるわけでもないので、四層に戻ることも出来ない。
「よし!計画通りっと」
ナーニャは氷鳥がこの層に来て何もできなくなることを予想していた。また、何もないため、世界を凍結して自身の領域に塗り潰していくことも、ナーニャが接近しても停止させることも出来ない。しかし、氷鳥は四層への穴の丁度そこにいるため、氷鳥をどうにかしないことにはこれ以上進めない。
「さて、鎌は使えないから借りましょうか。」
ナーニャは魔槍ルゴーリオを取り出す。
「今回は誰かさんがいつも後片づけを押し付けてくれているせいで助かったわ。いつもなら、しっかり後片付けしなさいと怒るところでずが今回は許しましょ。」
カトはメヤタルナ城塞を魔槍ルゴーリオで半壊させた後、ルゴーリオの回収をしておらず、ナーニャはカトの退去に気が付いた時点で人知れず武器召喚して回収していたのだ。
「一応カトから、臨時の持ち主として認められているから使えると思うのだけど。」
ナーニャは槍を少し振るう。
「問題なさそうね。」
ナーニャは魔法の準備を始める。さっきまでの四層とは違い三層は氷鳥の領域へと塗り潰されていないため接近した場合、あらゆるものが停止させられるという状態ではない。つまり、直接触れていない限り、至近距離で魔法が使えるということだ。
「三層に長いこといるのは私自身も危険だから秒殺しないとヤバイのよね。」
ナーニャは再び結界を張り直し三層への階段を下りていく。討伐に使える制限時間は三分間。それ以上は結界が持たず崩壊し、彼女を構成する物質が気体となり拡散してしまうため自力での復活が不可能になるからである。
「さて、やりますか。」
ナーニャは三層に入った瞬間、氷鳥の近くに転移する。氷鳥は標的が現れたことにより、ナーニャに向かって針を飛ばしていく。
ナーニャは魔法を距離を気にせず使えるようになったため、転移を使ってそれを避けていく。
「はあああああ!!!!」
ナーニャは魔槍を投擲する。氷鳥は魔槍の危険性を認識するが、移動することが出来ない。氷鳥の体は大きく抉られる。
氷鳥はすぐさま再生しようとするが、氷鳥から飛び散った氷は気圧が無い為、気体となって霧散し既に氷鳥が回収できる状態になく、氷鳥は体の再生が出来ない。
「ここで決める!!」
ナーニャは腕を切断し、大量に血を出し、それが拡散しないように操作する。
「魔女の大釜」
ナーニャがそう言うと巨大な釜が現れた。氷鳥が釜の中に居るように出現した釜にナーニャの溢れ出る血は釜に注がれる。釜の底は地獄の業火で炙られ血は煮え滾る。
「血は鼓動ある限り止まらず、故に簡単に停止の概念で止めれると思わないことね!!!」
大きく体と核を損傷し氷鳥に今までの様な出力はなく、少しずつ溶かされていく。
「赤く染まれ!溶けて混ざって消えてしまえ!地獄の釜!!!」
ナーニャが地獄の釜を発動させた瞬間、業火の火力が爆発的に増大し、氷鳥は完全に溶け消えた。
「やった、、、やった、やった、、やったわ!!!!」
ナーニャは氷鳥を単独撃破できたことに喜んだ。時間は一分もかかっておらず、自傷を除けばダメージも皆無であり、完全勝利と言えるだろう。
「さあ、さっさとアルマスを助けに行って自慢しますか。」
ナーニャはルンルンとした気分で四層に向かった。
そして四層に入った瞬間、ナーニャは完全に凍結させられた。




