34.魔槍ルゴーリオ
カトは陣を展開していく。
「まずは炎だ!」
陣の一つから炎があふれ出し、辺りは火の海と化した。
トルクスは大急ぎで横たわるワルセぺスを担ぎ、火から逃げる。
「クハハハ!いいぞ!いいぞ!どうだ!信頼している仲間に足を引っ張られる気分は?」
「ちぃ!」
トルクスは剣を振るう。光は炎に当たると火は消えていく。
「その光と魔法は相性が良くないようだな。まあ、いいハンデだ。」
「何がハンデだ。こちとら、仲間背負って逃げてんだよ!」
「それが何だ?まあ、精々頑張れ。暑くなって来ただろう。次は水をくれてやる。」
違う陣から、大量の水が溢れ出し、激流となってトルクスを襲う。
トルクスはワルセぺスを床に置き、両手で剣を握る。
「くそがあぁぁぁ!!!!」
刀身は先程よりも輝きを増し、放出された光は激増した。
「この威力は不味い!」
光の奔流は水を全て蒸発させても抑えきれず、カトは障壁を展開し、そのまま光に飲まれた。
ドガガガガガ!!!
床は光により、破壊、変形し、急激に熱されて膨張した空気によって崩れた。
トルクスはワルセぺスを抱えて着地する。周りには崩落に巻き込まれた兵士が至る所に倒れている。
トルクスに救助する余裕はない。先程の短時間のカトとの打ち合いで体にはかなりの負担が掛かっており、ワルセぺスを担いでの戦闘はきついものであった。能力の解放でもう、視界は少し霞んできている。思考能力も大きく低下しており、もう一つのことしか考えられないくらいだった。
「久しぶりに身の危険を感じられた。やはり戦いとは素晴らしい。もっともっと楽しませてくれ!!!」
カトは無傷で姿を現した。
トルクスは剣を構える。周りにはもうワルセぺスを含めて人はいない。誰かが回収してくれたようだ。
「はああああ!!!」
トルクスはカトに向かって駆け出す。
カトは只の水を喚び出し、魔法で凍らせて棒を作る。そしてもう一本魔法で氷の棒も創り出す。カトは二本の氷の棒をすぐにトルクスに投げつける。
トルクスはどちらも剣で弾く。凍らせて作られた棒は砕け散り、魔法で作られた氷の棒は剣触れた瞬間に消滅した。
「なるほど、その光は魔を完全に否定するのか。逆に材料さえ、魔によるものでなければ、工程は関係なくただの高エネルギーを持った光でしかないということか。いや、それでは床を抉ったことの説明が出来ないな。いや、放出の時は何かが混じっているのか?どちらにしても考察し甲斐があるな!」
カトは鉄を喚び出して、熱で剣の形にし、トルクスの剣を受け止める。力で負けるトルクスは後ろに跳び、カトに剣先を向けて光を放射する。カトは正面に陣を展開し、海中との空間を繋いで、溢れ出てきた海水を加速させる。
ボォン!!
超至近距離で起こった海水と光のぶつかり合いは水蒸気爆発というによりトルクスが吹き飛ばされたという結果に終わった。
「コピー、死ね!」
カトは魔法で剣を大量にコピーして射出する。
「光よ!!」
トルクスは光を放ち、コピーにより創り出された剣は消滅する。前を確認するとそこにカトの姿はない。そして背後から、声が聞こえた。
「終わりだ。楽しかったぜ。」
トルクスの背後にカトは回り、そう呟き、カトの剣はトルクスの心臓を貫いた。
「ごふっ!」
トルクスは膝から崩れ落ち、仰向けに倒れる。
「お前は良くやったよ。その剣であと数年修行していたら、俺に勝てたかもな。」
カトはそう言い本来の仕事の城壁の破壊に取り掛かろうと魔法の準備を始める。その瞬間、カトは胸を光に貫かれる。
「は??」
前には心臓を貫いたはずのトルクスが立っていた。
カトは城塞全体の力の流れを確かめた。
「そういやこの城塞って、あの研究者の作品だったな。流石に自衛の為にいろいろと仕掛けられてるよな。さっき、倒れた人間が消えていたことや、貴様の復活に合点がいったよ。」
先程まで何も仕事をせずに循環しているだけだった城塞のエネルギーがトルクスに注がれていく。トルクスは光を纏う。トルクスの身体能力が上昇する。体の構造もいろいろ変化していっている。
「俺とまともに戦える領域に至ったか。才能あると思っていたが、英雄クラスの才を持っていやがるとわな。俺も本気を出させてもらう。」
カトは槍を喚び、両手で構える。空中には先程とは比べ物にならないくらい大量の陣が展開されている。
「さあ、第3ラウンドを始めようか!」
カトがそう叫んだ瞬間、トルクスは自身と剣をエネルギーの塊に変換し突っ込んでくる。
カトは槍に魔力を集めて対抗する。
ガギギギギ!!!!
カトの槍とトルクスが衝突する。力は拮抗しているが、トルクスの光がじわじわとカトを焼き、浄化していく。
「意思を持ったエネルギー体に変化するとか、本当にふざけてるな!!!」
カトは後ろに跳び、空へと飛び上がる。トルクスはカトに向かって光の奔流を放つ。カトは槍を投擲し、その奔流を打ち破る。
すぐさま、トルクスは槍を投げて失ったカトに突撃する。
「召喚(槍)」
カトはすぐさま槍を手に喚び、空中でトルクスと打ち合う。カトとトルクスは共に高速でぶつかり合っているが、トルクスの動きは直線的で、カトにうまく回避されたりしているため、トルクスは若干押され気味であった。
「そろそろ契約を履行しろだと!、、分かった。」
突然そういうとトルクスを思いっきり吹き飛ばして、カトは城門正面の地面に降りる。
「あいつのせいで魔法は防がれる可能性が高い。ならば、槍で穿つ他ないか、、、魔槍起動。」
カトの槍の魔力が急激に上昇する。魔槍は起動された。
「この器は壊れちまうが、城塞を完全に破壊してやるよ。」
トルクスは魔槍のヤバさを感じ取る。先程までほぼ消えていた自我が戻って来るほどの衝撃であった。
トルクスは辺りの物質をエネルギーに変換しながら、カトに正面から突撃する。
「やめろー--!!!!」
「我が投擲を見よ。そして、我が槍の名を聴くがいい!!ルゴーリオ!!!」
カトの体は弾け飛ぶ。トルクスと魔槍ルゴーリオが衝突する。トルクスに流れ込んでくるメヤタルナ城塞の力が一気に増大する。
「うおおあああぁぁぁ!!!」
しかし、次の瞬間、トルクスを構成しているエネルギーが弾け散った。
魔槍はトルクスによって、軌道を少し右に逸らされたが、城塞を穿ち、その衝撃で城塞の半分は完全に瓦礫の山と化した。
エネルギー体から、物質の体に戻ったトルクスはその光景をただ呆然としていた。




