33.侵入者
カルワルナ メヤタルナ城塞
異変はアルマス達が蛇ゴリラと交戦している時に起きていた。
城塞の中央付近にある司令部で警備兵が不審者の男に注意をしていた。
「貴様ら!誰だ!?関係者以外立入禁止であるぞ!」
「はいはい、すいませんね。」
男は素直に来た道を戻ろうと後ろ向く。
「あっ、目撃者は殺すんだった。」
パーン
警備兵は心臓と頭を撃ち抜かれて即死する。幸か不幸か、兵士は痛みを暇もなく逝けたようだ。
「人類の最新兵器っていうのは便利だな。契約内容は壁の破壊だったか?壁は城を囲ってるから、取り敢えずここを処理してから、テキトーな方角に直進するか。」
城門付近
現在、城門前では、魔獣の数は少しずつ減少している。カルワルナの人々は知らないが、理由としては蛇ゴリラによる魔獣を生産していた本陣の壊滅、ワルド達の走行による蹂躙が大きくかかわっていた。
「今はまだ、多いがあと十分もすれば、草太郎一人で十分じゃないか?」
魔獣を砲撃しながらクカラは喋る。
「流石に僕の体力が持たない。だから、しっかり手伝えよ。」
草太郎は黒い光で的確に魔獣の頭を貫いていく。数百匹も殺っていると、その動作からは無駄がかなり減り、効率も随分上がっているようだった。
「ゲキカ、イライラしてるけど、どうしたの?」
荷物運びをしているカナはゲキカが苛立っているのを見て尋ねた。
「あの時間にうるさい司令部の伝達が遅れているのよ。魔獣の数が減少していることを伝達兵を通して、しっかり連絡しなきゃいけないのに、肝心の伝達兵が来ないんじゃ意味ないじゃない!」
ゲキカの勢いに若干カナは押されて言葉が出ず頷くことしかできない。
「まあまあ、落ち着けよ。ゲキカ嬢。貴族のラカレー家なんだから優雅でないと。」
ワルセぺスがゲキカに話しかける。ゲキカは少し深呼吸をした。
「そうですわね。魔獣が急激に増えて応援が必要という訳でもないので、焦る必要もありませんね。伝達兵は転んで遅れているとでも考えておきましょう。」
ゲキカはそういうといつもの調子に戻った。
そうこうしているとドタバタと急いで走ってくる足音が聞こえてきた。
「噂をすれば来ましたわね。」
ゲキカはやっと来たと思い伝達兵が上がって来るであろう階段の方へ向かおうとした。そのとき、兵士の叫び声が聞こえた。
「やめろ!やめてくれ!俺はまだ、死にt」
「今の人類って奴は最後くらいかっこよく決められないのかね?おっと、仇討ちかい。とろいね。」
兵士を殺しながら、階段をゆっくりと男が上がって来た。大量の返り血で男の服は汚れていた。
「名乗れ、貴様何者だ。」
ワルセぺスは他の兵士に撤退しろと指示し、少し前に出て、男に尋ねる。
「不意打ちしないのか。階段を上がって来た瞬間なら、上手くいったかもしれんぞ。」
男はワルセぺスと話し始めた。
「俺は不意打ちが苦手でな。なにより、お前、不意打ちに対しては容赦しないだろ。」
「そりゃそうだ。するのはいいがされるのは嫌いなんだ。」
「そうだろ。それなら、俺は正々堂々と時間を稼ぐぜ。」
「本人の前で時間稼ぎ宣言とは面白いな。いいだろう、気に入った。我が名はカト。汝の名を聞こう。」
「ワルセぺスだ。」
「ワルセぺスか。全力で来い。相手をしてやろう。参加したい奴はここに残れ。」
ここに残るはワルセペスとトルクスだけであった。他に残りたい人もいたが、ワルセペスは足手まといと一蹴した。
「二人でこの俺を倒せると思っているのか?」
「いいや、時間稼ぎにはなるだろう。」
「ほう、そうか。で、そっちの名前は?」
カトはトルクスに話し掛ける。
「トルクスだ。青二才だから、手加減頼むぜ。」
トルクスは剣を抜き答えた。
「いいだろう。それでは戦いを始めよう。」
その一言を待っていたかのように、速攻でワルセペスは毒の塗られた矢を放つ。
「遅いな。」
カトは簡単に矢を掴み、折った。
「はあああ!!」
トルクスはカトに急接近し、斬りかかる。カトは刃がない横から、剣を叩き、剣の軌道を変えた。
「呆気ないな。」
カトは隙だらけのトルクスを手刀で貫こうとしたが、それは叶わない。
「っく!???」
カトの腕に不可視の矢が刺さり、その衝撃で手刀の位置がずれたため、トルクスを手刀が貫くことはなかった。
トルクスはすぐにその場を離れ、体勢を立て直す。
カトは腕の矢を抜き、ワルセペスに殴りかかる。
ワルセペスも剣を抜き、振り下ろす。
「どうして、剣と拳がぶつかって平然としてんだよ。」
ワルセペスの剣とカトの拳がぶつかり合う。カトの拳は剣で叩き斬ることは叶わず、何なら、ワルセペスは押されている。
「俺のほうが力が強いんだよ。」
カトがワルセペスの剣を押しきり、剣を吹っ飛ばす。そのままの流れでワルセペスを殴ろうとするが、トルクスがそれを妨害する。
カン!カン!カン!
トルクスとカトのぶつかり合いが続く。危ない場面も多いがそこはワルセペスが補助をして、トルクスを支える。
「光よ!」
トルクスはその一瞬で剣を輝かせて振るう。刀身がカトに触れた瞬間、光が放出され、カトは吹っ飛んだ。剣は光が放出されたあとも光輝いている。
トルクス自身は気付いていないが、剣の変化は刀身が輝き出したこと以外にも、装飾が少し豪華になっていたり、刀身が伸びたりしていた。変化した理由としては、この剣がアルマスから貰った聖剣のコピーつまり虚剣であったからである。これにより、トルクスは今まで自滅覚悟でやっていた光の放出をポンポンできるようになった。
「流石に直撃は痛いな。少しギアを上げるぞ!」
カトは何もなかったかのように起き上がる。
カトはワルセペスに急接近し、殴り付ける。ワルセペスは透明化して隠していた盾を使い防御する。
「脆い!」
盾は一撃で砕かれ、そのまま拳がワルセペスの腹に当たる。
「あがっ!?」
先程とは段違いの威力の拳は鎧を変形させワルセペスの体に甚大なダメージを与えた。ワルセペスは仰向きに倒れ、そして、蹴飛ばされた。
この一撃により、ワルセペスは瀕死状態になり、もう戦える状態ではなくなった。
「余所見するとは余裕だな!」
トルクスはカトの蹴りを運良く剣で受け止める。
「はあああ!!」
剣の輝きはより明るくなり、カトは光にジワジワと焼かれていく。
「ちぃっ!その光厄介だな。俺を殺せる可能性がある。仕方がない、俺も少し魔法を使おうか。」
そう言うと、カトの周りに複数の陣が現れる。
「さあ、第2ラウンドを始めよう。」




