29.降臨 蛇ゴリラ
高温の竜巻が魔獣の大群を凄まじい速度で突っ切っていく。目標地点は魔獣が発生した中心部、大量の親個体の討伐であった。
「このまま行くと、あと、どのくらいだ。」
アルマスがワルドに疲労回復を施しながら、風丸に聞く。
「あと、二分ぐらいで到着すると思いますよ。」
魔獣の大群の中だというのに、アルマス達は普通に雑談をしている。ここら辺になってくると、強力な個体も出てくるのだか、音速以上の速度でぶつかられたら、ひとたまりもないようだ。
「ん?お前ら警戒しとけ!何か違和感を感じたぜ!」
突然、アズラがそう呟く。
「違和感とは?」
風丸が素早く聞き返す。空間に干渉する能力を持っており、辺りを把握している彼は、自身が感じ取れていない違和感が気になった。花畑の件があったのも関係しているだろう。
「何というか、自分らの領域じゃなくなったというか、侵食されているというのか、世界がなんか上書きされているというか、、、まさか!」
ズガガガガ!!!! バキッ!
何かがぶつかって、結界は砕ける。その何かは結界を壊したぐらいで勢いは止まらない。反射的にアルマスは内側に結界を張ったが結界は紙くずのように破られた。
ぶつかる寸前にアルマス達の見ていた景色が変わる。風丸の転移で難を逃れたようだ。
「さっきのやつは何だ?鱗が見えたから、生物だとは思うが。」
ワルドが聞く。
「蛇とか龍だと、思うぜ。ちょっと見えたが、あれは長かった。」
アズラが答えた。
「それも大切だと思うけど、ここって、大群の中のはずよね?どうして、魔獣の一匹もいないの?」
カノンが辺りを見渡して言う。彼女の言った通り、魔獣はここにはいなかった。あるのは、魔獣がいた痕跡と、至る所に巨大な何かが体を引きずったような跡だけだった。
「アズラ、惜しいな。正解はあれだ!」
アルマスが結界をうまく使い、巨大なレンズにしていた。
アズラ達は、ここから2kmほど離れたところに巨大な大猿?ゴリラ?が歩いている。髪と尻尾が蛇になっており、今現在も魔獣を喰っている。雰囲気からして、自立して動けるようだ。
「あの蛇ゴリラにやられた感じみたいだね。どうする?僕は手伝えないけど。」
ハクは蛇ゴリラの上空を見ている。そこには巨大な龍がいた。
「あのレベルは僕がでしゃばらないとヤバいからね。あっ!アルマス、あの剣のコピー、一本頂戴!コピーなら適性の範囲も大きいし、適性なくても、力で強引に使えるんでしょ!僕なら使えるんじゃないかな?」
ハクがそういうとアルマスは剣をハクに渡す。
「持てるってことは、使えるってことだな。聖剣についても、これから手当たり次第に触らして調査してみようか。ゴリラについては、お前らやるかー?」
「「「「もちろん!」」」」
「って、ことで行ってくる。いや、ゴリラがこっちに来るか。龍は頼んだ。」
「わかった!じゃあね!」
ハクは白い獣となる。初めて会った時より、一回り大きく、二本の角も立派に生えている。なによりも前回より特に違うのは、炎の羽衣を着けていることだ。
グオォォォーーー!!!
ハクは咆哮し、龍のところへと駆けていった。空中走法はいつの間にか習得していたようだ。
ハクのことでアズラが何かを言おうとしたようだが、その前にカノンが話し始めた。
「ハクのことは一旦置いておいてください。あのゴリラが魔獣を食べる度に巨大化してるようなので、今のうちに、ぱっぱと討伐を始めましょう。」
現在、ゴリラの大きさは30m程度。ゴリラは魔獣を掃討していくが、人の味方というわけではない。ただ腹が減っているだけだ。食べる度に巨大化を繰り返していくため、満たされることもない。
「わかった。あとで聞こう!」
「ありがとう。で作戦だけど…」
カノンは作戦を話した。
作戦はざっくり言うと、ワルド、風丸でゴリラを攻撃して倒そう、それ以外の人は補助とか蛇の対応とかをするというシンプルなものだ。
ワルドは変身し、アルマスは全員に各種のバフをかける。
「転移についてなんだが、俺だけゴリラの顔面付近にやってくれないか。でかいのをかましてやる。」
アズラは風丸に提案する。
「わかりました。それでは行きます。」
風丸が転移を発動させ、アルマス達はゴリラの至近距離に移動した。
「景気良く行くぜ!」
ゴリラの顔面付近の空中に転移したアズラは巨大な大砲を取り出す。
ドゴーーーーーン!!!
砲撃を受け、ゴリラはバランスを崩し、後ろに倒れそうになる。
アズラは追撃として、弓矢をとりだして、目に矢を突き刺す。蛇が少し遅れてやってきたが、風丸が転移で回避させ、ワルドがゴリラ本体に攻撃を始める。
アズラの奇襲は見事に決まり、ゴリラの視覚を奪うという結果を得ることが出来た。
フシャーーー!!
顔にダメージを負ったゴリラの代わりに蛇が叫ぶ。
奇襲は終わり、ここから、本格的な戦いが始まる。




