2.出港
ガサガサ
「食料良し、依頼品良し、商品良し、荷物の確認終了、船の整備はさっきやったし、最終確認終了っと!」
早朝から船に乗り込み荷物の確認をしていたのはカノンだ。万が一のこともあるので、もう10回も確認作業を行っていた。結局あの二人以降大陸に行きたいという人はいなかった。つまり、四人だけの航海である。今回のたった四人による航海は普通ならばかなり無謀であり、彼女のことをよく知らない人からすればバカの所業と思うだろう。しかし、彼女は風を操ることを得意としていた。その出力は嵐すら真っ向から打ち消せるほどである。しかも、今回は荷物の体積、質量をほぼ無視してものを運ぶことのできるアルマスもいる。この二人とプラスで護衛がいるのだから、町の人たちもこの航海の失敗をあまり考えていなかった。
「朝からご苦労さん、とりあえず、俺の方はいろんな物を本にしまってきたから、最悪船の上で1年ぐらい暮らせると思うぜ。」
カノンが確認作業を終えた頃にアルマスも準備を終えて乗船してきた。彼の右手にはカノンには見慣れない杖がある。彼は基本的に荷物を本にいれてくるので手ぶらだ。
「おはようアルマス、相変わらず、あんたの本の性能壊れてるね。その杖どこで手に入れたの?もう魔法使いじゃん」
「それ言うなら嵐すら消し飛ばせるお前も大概だと思うが?杖に関しては、いつか忘れたけど気づいたらあった。あと、バフをばらまいているんだから、魔法使いで良くね?」
二人は適当な会話で残りの船員が来るまでの時間をつぶしている。するとそこに
「おはようございます。時間通りより少し早いですが、この風丸、今参りました。改めて、これからよろしくお願いします。」
風丸は袴姿で到着した。袴の文化はハルル諸島になく珍しかったので、風丸はカノン、アルマスに質問攻めを受けていた。
そしてしばらくして集合時間になろうというとき、港にそれは現れた。
ドカーーーン!!!
アルマスが本を開け杖を構える。カノンが風を纏う。風丸が居合の構えをとる。港には、全身が黒い鱗に覆われたワルドがいた。前より一回り大きくなって、全身から結構な数の棘が生えていた。誰が見ても正真正銘怪物である。
「お、間に合ったか?寝坊したから、ちょっと急いで来たぜ」
ワルドを待っていた三人は衝撃のあまり、固り、アルマスは内心、「今手足どころか全身黒くなっていたくない?」とツッコミたくてたまらなかった。
「お、、おう、、まあ、手足元に戻して早く乗れ。後、船の上では極力その姿になるな、備品が壊れたら面倒だ。出るぞ。カノン!」
アルマスが若干?引きつつ乗船を促した。ワルドは前と同じ姿の戻り、船に乗り込んだ。
「あ、はい!忘れ物はない?、、なさそうだね。それでは、これより船長カノン率いる輸送船テトラ号出港します!!1か月程度の航海だけどよろしくね!」
彼女の合図で帆が張られた。船長兼航海士のカノン、荷物運び兼航海士兼戦闘員のアルマス、戦闘員のワルド、同じく戦闘員の風丸の計4人による、航海が今始まった。