28.出撃
早朝、魔獣の大軍は海に面している所を除いて、全方向から、この城を攻めている。
石垣によって、地上から侵攻していた魔獣は、石垣を登っては転げ落ち、撃ち落とされ、殺されていく。急に徴兵された兵士達も初めは大砲の使い方に戸惑っていたが、魔獣の登る速度は遅く、良い的であり、分かりやすい教官もいたため、既にある程度、大砲を撃つという動作は出来るようになっていた。地上から侵攻してくる魔獣に対しては当分問題は無さそうだ。
空に関してもあまり問題はない。この城には対空砲が大量に存在し、空から来る鳥型魔獣やワイバーンの群れに普通に対応できている。また、狩人が弓で撃ち落としていることもあり、上空への侵入すら、まだされていなかった。
「お前ら!用意は出来てるか?」
アズラがアルマス達に問いかける。
「おうよ、いつでも行けるぜ!」
ワルドが答えた。他の奴らも、しっかり武装している。アルマスに関しては既に剣を取り出して、昨日作成した鞘に締まっていた。また、魔力に変換できる鉱石も買い漁り、本に収納していた。
「貴様ら、出撃の時間だ。」
兵士に言われて、アルマス達はソリに乗り込む。ワルドがソリを引いて、魔獣に突っ込むのだ。
ワルドは鱗を纏い、巨大化して黒い怪物へと変化する。
「こいつは、、魔獣よりとかより、化け物してるな。腕も四本あるし。生物としては、竜よりか?腕が沢山の漆黒の竜、なんか心当たりある気がする!」
周りの兵士はその姿に恐怖し、アズラはワルドの姿を興味深く観察した。
「アズラ!さっさと乗れ!出発するぞ!」
ワルドは自身をジロジロ見ていたアズラを急かしてソリに乗させる。
「結界、張ったぞ!」
「風の準備オッケーです。」
「僕も炎オッケー!」
「いつでもいけます。」
全員が乗ったの確認し、アルマスがソリを結界で覆う。カノンとハクも準備が出来たようだ。風丸は緊急回避要員であり、こちらも問題無いようだ。
「それじゃ、出撃だ!!!!」
アズラが叫び、ワルドが駆け始める。城門は開かれ、ワルドはそれを潜り抜け、空中に飛び出した。城門の先には道はなく、有るのは魔獣がこびりついた、急な角度の石垣だった。
「ハク、かましてやれ!」
ワルドは空を駆けずに落下しながら、ハクとカノンに指示を出す。
「任せて!」
ハクは巨大な火球を出現させ、周辺の石垣から地上にいるの魔獣を焼き殺した。こいつ、人間の価値がどうかとか言っていた気がするが、それはどうなったのだろうか。魔獣の死骸は残っているし、城とか石垣が無傷だから、手加減はしているようだが。
ワルドは死骸が邪魔だったのでカノンに指示を出す。
「カノン、掃除!」
「わかった。」
暴風が吹き荒れ、ワルドの進行方向の死骸どころか魔獣は吹き飛ばされた。
ワルドは地上に着地し、地面を蹴る。アルマスの身体強化は重複して、掛かっており、また、空を蹴って進むより、地面を蹴ったほうがより、推進力を得れるため、音速など簡単に突破した。
結界はワルドを中心に半球状に張られ、結界の外側には熱風が吹き荒れている。
超音速で迫り来る熱風を帯びた物体によって、進路上の魔獣は焼かれ、つぶされた。周辺の魔獣は衝撃波で死んでいった。
城門付近
「見とれてないで仕事しろ!」
ワルセペスが仲間に言う。城門付近の守護をしている彼らは、ワルド達の出撃を見て唖然としていた。押される程ではなかったが、大量にいた魔獣が一瞬で消滅したからだ。
「見とれるのは仕方ないじゃないすか!」
「そうですよ。僕もあんな力強いが欲しかったです。」
「お前は発現してるし、黒いビーム撃てるからいいじゃん。俺なんかまだ、発現してないぜ!」
同じ部隊に配属されているクカラと草太郎が言い返す。
この部隊には、クカラ以外にも、カナ、ゲキカ、草太郎と6班のメンバーが揃っており、トルクスも入っていた。これは偶然ではなく、ゲキカがラカレー家の力を使った方からである。
ラカレー家はスラル王国で、昔から存続している貴族である。国が王政ではなくなった後も、ビジネスで成功し、変わらず力を持ち続けている。現在はカルワルナで学校の支援、選ばれた領主の後ろ盾が主にやっていることである。
また、カナや草太郎のような徴兵の範囲外の人があるのは、彼らが自ら志願したからである。
「あんた達、喋ってないで砲弾の装填を手伝いなさい。カナの植物で楽できてるけど、大変なのは変わらないから。」
ゲキカが二人に指示した。カナは植物を操って砲弾を運んでいる。
「ん?トルクス、お前の剣は消失してなかったか?」
ワルセペスは遅れて来たトルクスが剣を持っているのを見て尋ねる。
「ああ、これはアルマスさんに貰った物だ。本人曰く模造品だから、貰ってくれてもいいだとさ。あと、俺がこれを鞘から抜いて振るってみた時、大層驚いていたのがきになるがな。」
トルクスは剣を抜いて適当に振った。彼から見てこの剣は今まで使った剣より優れていると感じた。また、今まで使っていた剣よりも重いが、なぜか、この剣には何かが足りておらず空っぽであるように感じた。彼はこの違和感をこの剣が模造品であるというアルマスの言葉で無理やり納得した。
「魔獣が再び来たぞ!!」
彼らの雑談は兵士の報告により終了し、彼らは再び砲撃による魔獣の殲滅を始めた。




