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第十六話「アレ」の話
長年、連れ添った夫婦が、どっちも名前が出てこなくて、「アレ」、「ソレ」ばかり云ってると。自虐的に語っておられるのをよく見かけるが、それで事足りるなら、「名前」を口にする必要がないとも云える。何故なら、言葉は自分の気持ちやイメージを他人に伝えるためのものだから。
「アレ」で伝わっているのに、いちいち名前を出す意味がない。「アレ」で通じるというのは、それだけ夫婦のコミュニケーションがハイレベルになっている証拠。
ただ、他人に「アレ」は通用しない。同世代で似た立場ならともかく、背景の違う相手には名前が必要だ。そしてそれを思い出すことは「頭の体操」になる。
以上のことを整理すると
第一に、夫婦で「名前」を思い出す必要はない。
第二に、他人と話していても「名前」が出てこない場合は。そもそも他人と話す機会が少なすぎるのではないか。
となると結論は、夫婦の時間が長過ぎる。他人と話す機会をもっと増やすべき! というところか。
ありがとうございました。