表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ことなかれ主義令嬢は、男色家と噂される冷徹王子の溺愛に気付かない。  作者: 清澄 セイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/172

互いの心情

予想外に嬉しい事をされてしまったルシフォールは、キョロキョロと庭園を見回すリリーシュの顔を見る事ができなかった。


「まぁ、可愛らしい水路が流れているわ」


淡い水色のドレスを身に纏ったリリーシュは、ヘーゼルアッシュの瞳をぱちぱちと瞬かせる。冬の冷えた空気と水の流れが反射して輝いているように見えた。


相変わらず嫌味ばかり口にしてしまうルシフォールと、今日も特に気にしていない様子のリリーシュ。


(今日のルシフォール様は、何だかそわそわしているみたい)


あの舞踏会の夜がルシフォールにとって特別なものになったのと同じように、リリーシュにとっても忘れられない一夜となっていた。


垣間見たルシフォールの孤独と、自分自身が堪えていた寂しさ。受け入れたと思っていたそれは、エリオットの瞳と同じ色のドレスを身につけた瞬間、簡単に覆されたのだ。


そして今日も彼女は懲りずに、エメラルドのネックレスを身に付けているのだった。


「外が、好きなのか」


ルシフォールが一歩先を行き、リリーシュがその後ろを歩く。普段の彼からは考えられない程ゆっくりとした速度である事を、リリーシュは気付いていなかった。


「はい。アンテヴェルディ家ではあまり許されなかった事ですので」


「君の母親は厳しい人だったのか」


「厳しいという程ではないと思います。ただ、私とは価値観が違っていたというだけかと」


「今もまだ、家が恋しいと思うか?」


「二度と会えない訳ではないのですから、あまりその様には考えた事がありません」


「借金と引き換えに身売りした自分を、不憫だとは考えないのか」


口に出した後しまったと後悔しても、既に手遅れ。リリーシュの反応が怖くて、ルシフォールは振り返る事が出来なかった。


「幸運だとは思っても、不憫だとは思いませんわ」


「ふん、白々しい」


「それは申し訳ございません。殿下?」


「…意地が悪いぞ、リリーシュ」


「ふふっ」


リリーシュはわざと「殿下」と呼んだ。ルシフォールはバツの悪そうな顔をして彼女を嗜める。悪戯が成功した子供の様な顔で、リリーシュは笑った。


(ルシフォール様、少し変わられたわ)


事なかれ主義、流れに身を任せるのが当たり前のリリーシュだが、流石にルシフォールの変化には気付いた。


一番最初に顔を合わせた時と、瞳の雰囲気が全く違う。時折チラチラとこちらを伺う様に動くのが、可愛らしいとさえ思ってしまう。


あの夜、エリオットに会えない寂しさをルシフォールで埋めようとしている自分を、軽蔑した筈なのに。


傍にいると言った、咄嗟の台詞。本当はあんな事を言うつもりなどなかったのだ。


(この方とエリオットは違うのよ、リリーシュ)


他人と重ねるなど、ルシフォールに失礼だ。


「今日は、水色だな」


「えっ?あぁ、ドレスの事ですね」


ふいにそう言われて、リリーシュは慌てて笑顔を作る。


「あの夜の深緑のドレスも、まぁ。悪くはなかった」


背中越しでは、リリーシュはルシフォールの表情はが見えない。ドレスを褒められた彼女の顔から笑みが消えた事も、ルシフォールからは見えていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ