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ことなかれ主義令嬢は、男色家と噂される冷徹王子の溺愛に気付かない。  作者: 清澄 セイ


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ルシフォール殿下のお兄様

アンクウェル第二王子といえば、噂話にさほど興味のない私でも知っている事がある。母であるラズラリーが一時期きゃあきゃあと騒いでいたからだ。


”麗しき悲劇の王子様″


彼はそう、呼ばれているのだ。


「ごめんね、急に誘ったりして。今更だけど、何か予定があったりしなかったかな」


宮殿内にあるお茶室に招かれたリリーシュは、その空間が素敵で思わずぽかんと口を開けた。開放的な天井と大きく造られた窓からは、豪奢な宮殿に雪が降り積もる様がありありと映し出されている。


華奢な作りのシャンデリアは決して華美ではなく、他の調度品の邪魔をしていない。アンティークゴールドのチェアも可愛らしく、リリーシュはこんな場所でお茶を楽しめる事に胸を躍らせた。


「はは、貴女はとても素直な女性だ」


全て表情に出ていたのかと、リリーシュは頬を紅く染めて謝罪の言葉を口にする。アンクウェルはそんな彼女に微笑み、小さく首を左右に振った。


「この部屋を気に入って貰えるのは嬉しいよ。かつての僕の婚約者も、ここが大好きだったから」


「そんな大切な場所をお借りしてしまって、宜しいのでしょうか」


「良いんだ。いつまでも湿っぽい空気を纏わせていては、折角の部屋が勿体無いからね」


「ありがとうございます、殿下」


「アンクウェルで良いよ。リリーシュ嬢」


にっこりと笑うその表情には何処か哀愁の様なものが漂っていて、成る程この笑顔を好意的に捉えない女性は居ないかもしれないと、リリーシュは思った。


アンクウェル殿下が″麗しき悲劇の王子様″と呼ばれる訳、それは彼が元婚約者と死別している事からきている。


アンクウェル殿下の婚約者だった公爵令嬢は、殿下の幼馴染であったらしい。それはそれは仲睦まじく、周囲も温かく二人を祝福していた。


しかし今から約三年前のある日、公爵令嬢の屋敷が火事に遭い不幸にも彼女は命を落とした。燃えさかる屋敷の中を果敢に助けに入ったアンクウェル殿下の体には、今も痛々しい火傷の痕が残っているとか。


そして自身の婚約者が、目の前で炎にのまれていくという悲惨な体験をしたアンクウェル殿下に、周囲は同情した。すぐに次の婚約者を見つけるでもなく、今も尚一途に彼女を思い続けているその姿。


柔和な雰囲気の中に憂いを称えたアンクウェル殿下を、多くの女性が救いたいと思う事だろう。彼が極たまに社交界に顔を出せば、その人気は凄まじいものらしい。


ルシフォールも姿形は一級品であるが、いかんせん癖が強すぎる。その点アンクウェルは優しく一途で、好きな女性を助ける為ならば燃えさかる炎をも厭わないという男らしさも兼ね備えている。


第一王子は既にご結婚されている為、王族に嫁ぎたいと憧れる女性ならばルシフォールよりもアンクウェルを狙うのは極当たり前のことなのだ。


とまぁ、これは全てラズラリーから聞き及んだ事であり、真実であるかどうかは定かではないし、リリーシュは知りたいとも思っていない。


ただ第二王子であるから無下に出来ないだけで、そうでなければ特にお近付きになる理由はない。


それにアンクウェルはルシフォールの兄であり、ユリシスの時でさえリリーシュに煩く文句を垂れてきたのだから、それが兄ともなれば今度は「家族に手を出した」などなんだの騒がれそうだ。自分を追い出す口実を与える様な行動は、なるべくならば慎みたい。


リリーシュの頭の中には、アンクウェルを懐柔してルシフォールに近付きたいという思考が全くなかった。そして、人の心を掌握する事にユリシス以上に長けているアンクウェルは、彼女の人となりをすぐに見破った。


「リリーシュ嬢。これからもぜひ、弟を宜しくね」


温かな笑みと共に突然そんな事を言われ、リリーシュは大いに戸惑う。弟の幸せを心から願うアンクウェルは、彼女のそんな仕草でさえも好意的に捉えた。

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