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お馬さんに夢中

今までのルシフォールなら、例え気紛れであってもこの敷地内に入る許可など絶対に出したりはしなかった。女など、少しでも隙を見せればすぐつけ込もうとするのだから。


男であれば解決法など幾らでもあったが、女ともなればそうはいかない。ルシフォールとて、一般的な常識は備えている。女子供に手荒な真似をするのは気持ちの良いものでもないし、周囲から批判される。


幼少期から嫌という程そんな思いをしてきたのに、何故今回に限ってこんな事になったのか、ルシフォール自身にも分からなかった。


家の借金の為したくもない男と結婚する。しかも相手は、男色家の暴力男。にもかかわらず、リリーシュの顔には悲観的な色が一切見られないのだ。言動にも行動にも、気に入られたいと媚を売る意図が感じられない。


ただの純粋で世間知らずの馬鹿な子供なのかと思えば、意外とそうでもない。慎重に言葉を選び、こちらを不快にさせまいとしているのがちらちらと垣間見えるのだ。


「少しだけ触ってみたいわ。ねぇ、いけないかしらルルエ」


「いけませんよお嬢様。皆様の邪魔になってしまいますし、何より危険ですから」


「でもあの子、とっても賢そうな瞳をしているわ。それに真っ白で綺麗な体。きっと、滑らかで触り心地が良いんでしょうね」


先程まで熱心にこちらを見つめていた癖に、今や馬に夢中で気にも止めていない。寄って来られても鬱陶しいが、一体何をしにここへ来たんだと何故か腹立たしくもあった。


ルシフォールは馬から下りると、騎士見習いを叱責する。普段からの流れではあるのだが、今日はいつも以上にいらいらと気が立ち、声色も低くなった。


「これはこれは、殿下の婚約者様でしたか。寒い中をわざわざこんな場所に出向いて下さり、ありがとうございます」


「私の方こそ、皆様のお邪魔をしてしまい申し訳ございません」


騎士見習いの指導を担当しているベテラン騎士が、にこやかにリリーシュの元へと挨拶にやってきた。彼女はそれに、笑顔で答える。ルシフォールは何も言わず、ただ馬の手入れをしている振りをした。


「まぁ、それは大変な事ですね。国をお守り下さる騎士様には、日頃より大変感謝しておりますわ」


「それが私達の使命であり誇りでもありますので。アンテヴェルディ嬢は、殿下に会いに来られたので?」


「いえ、私一度間近で拝見してみたかったのです。屈強な皆様がどの様に体を鍛えていらっしゃるのか」


()()、だと?ルシフォールはぴくぴくと頬を引き攣らせるが、リリーシュも指導官の男も全くそれに気が付かない。


普段から冷たいそのアイスブルーの瞳が益々細められていくのを見て、彼の側に控えていた騎士見習い達だけがぶるりと体を震わせたのだった。

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