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誰かに似ていると思ったら

その日は結局、リリーシュは部屋で食事を摂った。執事のフランクベルトに「量を減らして欲しい」と頼むこと数度。やっと一人で食べきれるほどの食事になった分だけ、虚しさも減ったと彼女は思った。


ふかふかの白いパンを口に運びながら、先程会ったルシフォール殿下の顔を思い浮かべる。殿下はとても綺麗な男性で、あれならばどんなに悪評が広まっていようと結婚相手は引く手数多だろう。


確かに、殿下はとても感じが悪かった。と同時に、不思議な人でもあるとリリーシュは思う。


共に食卓に着く気がないのに、なぜわざわざ夕食時に食堂に呼んだりしたのだろう。行動と言動が、一致していない。


それにリリーシュは、暴力を振るうくらいなのだからもっと筋骨隆々で殺気を垂れ流しているような人物を想像していた。


しかし実際全くそんなことはなく、彫刻のように整っていた。そして拳にモノを言わせそうな雰囲気はなく、どちらかといえば言葉でネチネチと相手を追い詰めるような性分に見えた。


側から見ればどちらだとしても結婚相手としては最悪なのだが、リリーシュは物理的に痛みを与えられないのなら本当に助かったと、素直に思った。


確かにルシフォールの態度は酷いものだし腹も立つ。しかし、深呼吸を繰り返し心の中のチクチクとしたものを取り去ると、不思議とこう思えてくるのだった。


(ルシフォール殿下は、()()()()人なのだわ)


と。


現状を素直に受け入れることを得意としているリリーシュは、彼についてそう結論付けた。女性嫌いとの噂もあるから、もしかすると過去に何か嫌な思いをさせられたのかもしれない。しかし、理由などに興味は然程ない。


どんな理由であれ、他人に優しくしようと思えばできないことはない。少なくとも、リリーシュ自身はあんな態度を取られなければならない事柄に覚えはないのだ。


女性という一括りで敵視されているのは癪だが、性別は変えられない。そしてルシフォールの性格を変えることも、リリーシュにはできない。


ならば、受け入れるしかない。もしもっともっと酷いことを言われたりされたりしたら、その時は泣こう。一人で思いきり泣いて、その後どうするかをまた考えれば良いだけの話だ。


ワインを一口飲んだリリーシュは、ふと考える。そういえば以前にも、誰かのことをこんな風に思ったことがあった。


(そうだわ。幼い頃私に冷たかった、あの時のエリオットに似ているんだわ)


もちろん、子供だった分まだエリオットの方が何倍も可愛げがあった。しかし幼い故に言葉がまっすぐで、リリーシュ自身も幼かった為慣れるまでは悲しかった。


多少皮肉ではあるが、エリオットのおかげでリリーシュは辛辣な言葉を吐く男性に幾らか耐性がついていたのだ。


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