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怯えても仕方のないことなので

初めて見る黒地に金の刺繍が施された服装は、ルシフォール殿下にとても良く似合っているとリリーシュは思った。流石王族ともなれば、流行も最先端なのだろうか。


アンテヴェルディ公爵領は領地内に鉱山を持つことで有名な貴族だ。よって、王都とは程遠い山脈近くの山奥に存在している。


ラズラリーの強い希望もあって普段は王都にあるアンテヴェルディ家の屋敷で過ごしているのだが、リリーシュは本当は本来の領地にある屋敷で暮らしたいと思っていた。


領民達は皆山育ちで気性が荒っぽい者も多いが、カラッとしていて気前が良く接しやすい。リリーシュがアンテヴェルディ家の娘だと知っても、変に気を遣わず接してくれるところも、彼女は好きだった。逆にラズラリーは、それが嫌だったようだが。


とまぁ結局は何が言いたいのかと言うと、リリーシュは流行に疎く、また興味も然程ないということだった。


「お召し物がとても素敵です、殿下」


彼女は心からそう思っての言葉だったのだが、どうもルシフォールはそう捕らえなかったようだ。自分を見て早速媚びてきやがったとでも言いたげに、思いきりリリーシュを睨みつけてきた。


「どうせお前も、暫くすれば追い出してやる。無駄な方便を使うな」


「いいえ、方便ではありません。殿下の瞳や髪のお色と、とても良く合っていると思ったのです。それに私の領地では金の髪は珍しいので、先程初めて拝見した時は見惚れてしまいした」


「アンテヴェルディのところの田舎者と同列に扱うな、実に不快だ」


「申し訳ございません、殿下」


どうやら、何を言っても彼は不快らしい。ここまで嫌悪感を露わにされたのは流石に初めてだったので、さてどうしたものかとリリーシュは内心頭を悩ませた。


「殿下、アンテヴェルディ公爵令嬢に座っていただいてはいかがですか。ご令嬢をいつまでも立たせたままでは、殿下の男としての資質が問われてしまいますよ」


ルシフォール殿下の斜め後ろで背筋をピンと伸ばし立っていた男性が、彼にそう助言する。リリーシュは顔には出さなかったが、殿下相手にそんな物言いをする従者が存在していることに驚いた。


殿下はムッと眉間に皺を寄せたが、叱責する気配はない。どうやら、このやり取りは珍しいことでないらしい。


「どうせ、座りたくもないだろう?許可してやるから、今すぐ部屋に戻れ」


(どうしましょう。こんな時は素直に従うべきかしら。だけど折角お会いできたのに、このまま帰るだけというのも嫌よね)


考えた結果、リリーシュは従わないことにした。


「本音を申しますと、私はもう少し殿下とお話がしたいです。今戻っても、またこれまでのように豪華な食事を部屋で一人寂しく食べるだけ。美味しい食事は、誰かと一緒に味わいたいのです」


殿下に意見など、本来はタブーなのかもしれない。怒られたらその時は謝まればいいかと、リリーシュは呑気に思った。

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