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想いの力を、ただひたむきに

「あっ、あのルシフォール様」


「ん、どうした?」


「あの、その…っ」


王族専用の馬車とはいえ、スペースには限りがある。ルシフォールはこれでもかという程リリーシュの隣にピッタリと寄り添い、アイスブルーの瞳をきらきらと輝かせながら至近距離で彼女を見つめている。


リリーシュは非常に落ち着かない様子で、頬を紅く染め視線をキョロキョロと彷徨わせていた。


(お顔を見られないわ。だって、ますます素敵になられてるんだもの)


黄金色に輝くプラチナブロンドの髪は以前より伸びていて、すっきりと後ろで一つ括りにされている。


二十四となったルシフォールは、愛しいリリーシュに会えなかった時間の分だけ憂いを帯び、美しさに色気が出されている。


深く刻まれていた皺が取れた分整った顔が惜しげなく披露されており、更に久し振りの再会という事もありリリーシュの胸は痛いほどに高鳴っていたのだ。


しかしルシフォールは攻撃の手を休める事なく、やっと触れられる愛しい恋人にこれでもかと愛を伝えたくて堪らなかった。あれだけ捻くれ者で天邪鬼だったかつての彼はどこへやら、一変して黄金色の蜂蜜の様に甘い男へと変貌を遂げたのだ。


いや、正確に言えば彼は元からリリーシュに対して内心はでろでろに甘かった。ただそれを素直に伝えられなかっただけで。


離れている間は想像以上に、辛く本当に寂しかった。誰の策略なのか、彼女と離れてからの二年弱は目が回る程忙しかった。そんな経験を経て、ルシフォールは想いを伝えないという事のばかばかしさを思い知ったのだ。


愛する人の傍に居られるという事の尊さも。


「リリーシュ、会いたかった」


「それはもちろん、私もです」


「泣かせてしまってすまなかった」


もうすっかり乾いている彼女の涙の跡を、ルシフォールがその綺麗な指先でそっと撫でた。


「これからはもう、お前の事を泣かせたりしない」


「幾ら涙を流そうとも、私は構いません。ルシフォール様を想っての事なのですから、私は嬉しいのです」


「リリーシュ…っ」


何て愛おしいんだと、今度はルシフォールの方が泣いてしまいそうになった。リリーシュは照れながらも、嬉しそうに頬を膨らませて微笑んでいる。


ーーあぁ、幸せだ


ーーあぁ、幸せだわ


ルシフォールもリリーシュも、離れていた間も一日たりとて互いを忘れた事などなかった。周囲に祝福され、共に過ごせる未来を夢見て一生懸命に直走ってきた。


その努力と強い愛が今、遂に身を結んだのだ。


馬車の中で二人は、その存在を確かめ合う様にぴったりと寄り添う。リリーシュはもう、恥ずかしがって身を捩ったりはしなかった。

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