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憂うリリーシュ

ーー


もうすぐ、季節は冬になる。冬休みに入ればエリオットが帰ってくるなとリリーシュは思いながら、ベット脇に置いてあるドレッサーに目を向けた。


その中には、今まで様々な理由をつけてエリオットから贈られたリボンやアクセサリーが数え切れない程収まっている。かつて靴やドレスまで贈ろうとしてきた彼に、幾ら幼馴染でもそれはやり過ぎだとハッキリ断った。


その時は捨てられた子犬のような顔をしたエリオットだったが、すぐにパッと笑顔になり「邪魔にならないものならいいよね」と自分一人で結論付けた。


何度も断るのも悪いと思ったリリーシュは、以来あまり高価ではない小物なら受け取るようになったのだった。


「エリオットは、元気でやっているかしら」


ドレッサーを見ると、つい彼を思い出してしまう。寄宿学校に通いながらもエリオットは暇さえあればリリーシュの屋敷を訪ねてくるが、やはり頻度は減る。


リリーシュが本当は、家庭教師ではなく学校へ通いたかったことを知っているエリオットは、ここへ来る度に彼が通っている学校の話をしてくれた。手紙だって、頻繁に送ってくれる。


ふとリリーシュは、この間の伯爵家のご令嬢達との会話を思い出した。


モンテベルダ伯爵令嬢は、言葉の端々からエリオットのことを気に入っているという雰囲気が感じられた。リリーシュが彼と婚約していないと言った時も、あからさまに安堵の表情を浮かべていた。


(彼女は、エリオットのことが好きなのよね)


確か、モンテベルダ伯爵家といえば金貸しでのし上がった貴族だと聞いたことがある。その相手は公爵家や王族にまで渡り、伯爵家といえどかなり力を持った家だと。


リリーシュはその辺りの事情にあまり詳しくなかったが、モンテベルダ伯爵家を敵に回さない方が賢明だということは分かる。


そして彼女と一緒にいたグロスター伯爵令嬢の父親は、商売の才覚に恵まれた人物らしい。領地が海に面していることもあり、船での貿易も盛んに行っているとか。


そうしてみると、我がアンテヴェルディ家は公爵家ではあるものの、ただ領地内にある鉱山に恵まれているだけで他に秀でたものは何もないような気がする。


父であるワトソンに、商売の才能はない。来年には寄宿学校を卒業し、家に帰ってくる予定の兄に期待するしかなかった。


どうしようもなくなればリリーシュ自身が嫁げばいいと、彼女は思っていた。実際、アンテヴェルディ家より爵位は下でも栄えている家はたくさんあるのだから。


「一人で考えていても意味はないわよね。人生、案外何とかなるものよ」


そんな結論に至った所で、リリーシュはやっと母親にアフタヌーンティーに誘われていたことを思い出した。早く行かないと、機嫌が悪くなってしまう。


「ルルエ。お母様に支度をして今から行くと、伝えてくれないかしら」


「かしこまりました。お支度は」


「簡単だから、一人でできるわ」


リリーシュがそう言うと、侍女のルルエは丁寧にお辞儀をして部屋を出て行った。

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