四人目:二虎田 遂(にこだ とげる)
「カハッ! こんな時期に新入りかよ」
「あ、よろしくお願いします」
「お前、ここに来るってことは、そうとうヤベー奴だな!」
「そうなんですかね……」
「まあ仲良くやろうや。俺もお前も、どうせ死ぬまでこん中だ」
「いや、僕は戻りたいんですけど……」
「ムリムリ諦めな。俺も色々試したが、どうやっても出らんねぇよ」
「どんなことをなさったんですか?」
「あん? そうだな~食事を運んできた看守を捕まえて脅してみたり、関節を外して格子から抜けようともしたな。それから、血を垂れ流して鉄格子を劣化させてみたり、小便ぶっかけてコンクリートに穴開けようとしたり。まあ色々だ」
「す、凄いですね……」
「どれもダメだったけどな。カハハッ!」
「脱獄はもう諦めたんですか?」
「さ~それはどうだろうな。カハハッ!」
「ところで、そこに転がっているパン。なんか多くないですか?」
「あん? 硬くてそんなに食えねぇんだよ。いつも疲れて残しちまう」
「あ~スープに入れてもドロドロになるって話ですもんね」
「あれ全部突っ込んだら、パン生地になりそうだ」
「メニューはいつも変わらないんですか?」
「まあ和洋中あるが、中身は大して変わらねぇ。ちなみに明日は洋の日だ」