一人目:郷田 啄夫(ごうだ つくお)
「どうも。お世話になります」
「あん? 新入りか?」
「あ、はい。今日来たばかりなんです」
「そりゃ災難だったな。俺は郷田 啄夫ってんだ。こんな最果ての監獄に飛ばされるなんて、おめぇ人生の終わりだぜ」
「アハハ……まあ周りは完全に海に囲まれてますからね、この島。脱獄不可能な死刑囚の最終収容所って話ですし……」
「脱獄? んなもんムリムリ。そんなこと考える奴はただのバカか、とち狂ったイカレバカだけだぜ。ま、こんな絶海の孤島に送られる奴なんか、どうせはなっからロクなもんじゃねぇけどな。ガハハッ! おめぇもそう思うだろ?」
「えっと……」
「んで? おめぇはどうしてここに飛ばされたんだ?」
「さぁなんででしょうね」
「おいおい。もったいぶらずに教えろよ。どうせ上司を殺ったとかそんなもんだろ? もしかして、シャブったのか?」
「まあ、当たらずとも遠からずって感じですかね。あ、シャブってはいないです……」
「まあここに来るのは大体そんな奴らだ。人生の墓場なんだよ。ここは。せいぜい楽しもうや」
「郷田さんはどうしてここに?」
「おっ! 聞きてぇのか?」
「は、はい」
「俺は史上初! 十億円を盗んだ銀行強盗なんだぜ!!」
「す、凄いですね!」
「へっ! こんなワル、そうはいねぇぜ。どうやったのか聞きてぇだろ? おい」
「あ、はい! ぜひ聞かせてください」
「まずよぉ~バカでっけー銀行の、三つ隣の家を買ったんだ。ちっせぇボロ屋だったが、そこに二年間も住んでな。銀行の間取りと従業員の行動を全て把握したわけよ」
「なるほど。段取りは大事ですもんね。それからどうしたんですか?」
「地下を掘り進めて、家と銀行を繋ぐんだ。張り巡らされた水道管を避けながらっつーのがかなり大変でな。たった五百メートル掘るのに一年もかかっちまった」
「よくバレなかったですね」
「下にも結構掘ったからな。あとは人がいない時間帯を狙って侵入。床をぶち抜いて金を運び出すだけだ」
「あれ? でも、監視カメラとか警報器は作動してますよね?」
「いんや。その銀行もここと一緒で、かなり年季のはいった建物でな。そんなまともな防犯設備なんてほとんどなかったぜ」
「はぇ~そうなんですか。ちなみにここの床は掘れそうですか?」
「あ~それはちっと厳しい気がするぜ。壁も床もコンクリートで固められてるっぽいしな。それに、掘ろうにも道具がねぇ。さすがに木製のフォークじゃこいつは掘れねぇだろ?」
「あ~確かにそうですよね」