腕試し
――…キィ……カタン。
「うっ」
錆び臭い鉄扉を開けて中に入ると、まるでごみ溜めのような、絡みつく腐乱臭が鼻をさす。
オイルランプの弱々しい光に照らされた陰気な空間に、ポツンと置かれた一脚の椅子。そこには、ボロボロの看守服に身を包んだ壮年の男が座していた。
男は手に持っていた酒瓶をひとつ呷ると、足を組んで語り出す。
「お前もこんなところに飛ばされるとは災難なやつだな。まあお前みたいな能無しも用無しも、俺は大好きだぜ。どうだ? たまには囚人どもと遊ぶのも一興だろう? ここはひとつ賭けでもしようじゃないか」
そうして説明した内容はいたってシンプル。
まず四つ全ての牢屋を回り、それぞれの囚人と話しをする。
囚人は牢屋の数と同じく四人。
郷田 啄夫
九ノ葉 佳香
南二城 岩尾
二虎田 遂
会話を終えたらここへ戻り、情報を整理すること。
見事 “ 脱獄王 ” の計画を見破れれば勝ち。計画を阻止できず、まんまと脱獄された場合は負け。
「勝ったらお前はここからおさらば出来る。が、もし脱獄されたならお前が次の死刑囚だ。なかなかにスリリングな面白れぇ賭けだろ? せっかくだ。人生最後まで楽しめや。新入り」
男は最後にそう言い、机に足を載せて居眠りをはじめた。