第6話
拝啓、お父様、お兄様方。いかがお過ごしでしょうか。
僕はげんきです。最近はメイドのアンリさんと計算ごっこをしたり天体観測ごっこをしたりたのしくすごしています。たすけて。
うすうすそうなんじゃないかなと思ってはいたが。このメイド、マジでやべぇ。色々なことを徹底的に詰め込まれる日々です。何が恐ろしいって、効率的に覚えさせるんだよ。一歳児相手に。気になったことを質問しても淀みなく答えるし、その内容も全て理解できる。アンリさん、ほんとに何者だよ。なお、勉強中、休息はありません。これにはスパルタ軍も驚......いや、それに比べればましだろうか。
とまあ、こんな感じで商家の息子としてのイロハを叩き込まれた。マナー、常識、数術、天文学、外国語、他諸々とまあ、多岐にわたる。これらの習得の所要時間、2年。この体はやはりスペックが高かった。なんて恰好付けたいけれど、実のところ、アンリさんが鬼畜教育.......もとい、すべてお膳立てしてくれていただけに過ぎない。
とはいえ、そんな地獄の日々も今日で終わる。
昨日突然、
「さて、私の教えられるのはここまでです。明日、ちょっとしたことをお教えすれば免許皆伝となります。後は独学なり師事するなりして坊ちゃまご自身で精進なさってください。」
と言われたのだ。
いつ終わるのか分からないスパルタエデュケーションに怯えていた俺にとって、その言葉はとても甘美な響きに聞こえた。「自由」の言葉が頭をよぎる。メイドの手口が半ば詐欺師的手法だったとはいえ、確かに勉強を教えてほしいと頼んだのは俺だ。だがあんな過酷なもんだと誰が予想できたであろうか?体感だと一日30時間ぐらい勉強させられていた気がする。いや、ここも一日は24時間ではあるのだが........
とにかく、辛かった日々から解放されると分かり、思わず涙が零れた。
「あれ?坊ちゃま、もしかして喜ばれてます?」
いやいや、まさか。
そして訪れたるは翌日の朝。
「坊ちゃま、私は今から、最後の授業として時空魔法を教えて差し上げます。」
「は?」
俺は、あまりの急展開に唖然としていた。