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プロローグ
正直、異世界転生なんて話は、眉唾物だと思っていた。
所詮、現実を見ようともしない奴らの行き着く果てでしかないのだと。
当然、現実を必死に生きていた私にとっては何の関わりも無い話だと。
しかし、社会の荒波に揉まれ、上司に顎でこき使われ、打破できない現状に直面した時、私はその認識が誤りであったことを痛感したのだ。
「ああ、異世界転生は、いわば極楽浄土のようなもの。救いだったのか」
諦めずに私に勧めてくれた友人には感謝しかない。
ただ、惜しむらくは。
「ああ、あと一話で最終話だったのに」
現状一番の楽しみを前に己の心身が限界を迎えたことだろうか。
「もっと堪能しておけばよかった。」
その日、その世界の片隅で、一人の男が過労死により死亡した。