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真夏のサイン  作者: 星海芽生
6/6

°○5話

『はい、もしもし』



梶くんが電話に出るや否や

私は嬉々とした声で

あのね、と切り出した。



「夏特集のことで、相談があるんだけど!」


『なんですか?

 あ、さっきも言いましたけど

 やりたくない、は無理ですからね』



電話の向こうから、盛大なため息が聞こえてきた。


ほんっとうに、信用がないのね…

別に、いいけど…


出ていくときに

優しい言葉をかけてくれた人とは思えない。



「わかってるよぉ…、そうじゃなくてさ

 取材、というか、材料集めに

 ちょっと遠出したいと思ってるんだけど」


『遠出?』


「そう。

 昔、よく言ってた祖母の家の近くに

 ちょっと、良い感じの場所があって…」


『いいんじゃないですか?

 仕事してくれるなら、僕は何も言いませんよ』


「さっすが!

 話の分かる短父さんで幸せだなぁ~!」


『煽てても休みは増やしませんからね』


「…鬼」


『なんとでも』



ずばりと、言い返されながらも

直ぐに許可を出してくれた梶くんにお礼を言って、電話を切った。




「よし…。これで会えるかも」



取材に行くのは嘘じゃない。

でも、それとは別に目的がある。


本当の目的。

それは、初恋の子に会うこと。


こんなこと梶くんに言ったら

公私混同で怒られちゃいそうだけど

それでも、会いたい。


思い出せば思い出すほど、会いたくなる。



「…そういえば、約束してたな」



祖母のお葬式が終わって

もうここには来ないと知った最後の日。


夕暮れの向日葵園の中で、指切りをした。



─僕、渚ちゃんのこと、忘れないよ


─航くん…


─だから、大人になったらまた会おうね


─……うんっ!



「航くん…」



そうだ、思い出した。

彼の名前は、航くんだ。


航くんも覚えてるかな。

約束を、忘れないでいてくれてるかな。

覚えててくれたら…、嬉しいな。



「…準備しよ!」



幼い頃のドキドキと、今のワクワクが重なって

これ以上ないってくらい、ワクワクしてる。


まるで遠足前の小学生みたいに

1人ではしゃぎながら

ネットで新幹線のチケットを購入し

お泊りの準備を始めた。


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