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荘重なる月光の狐

光徒歴程(原典)第七章第三節『ioru ok soid』より

荘重なる者の物語


荘重なる者イオル・オク・ソイドの伝承



双頭の狐 咆哮は気高く

光を携えて 風と共に駆ける

双頭の狐 咆哮は気高く

子等を携えて 魂と共に往く


我は風と共にあり

我は心と共にあり




 イオル・オク・ソイドは二つの頭を持つ美しい毛並みの狐であり、その月のような蒼銀の毛は多くの星の子たちを魅了したと伝えられています。右の頭イオルは聡明で冷静な心を持ち、左の頭ソイドは勇壮でかつ高潔な心を持っていました。

 星の子戦争前期、イオル・オク・ソイドは各地を巡り、その地に新鮮な風と新しい種を運んでおりました。彼が運んでくる風は仄かにイガルの力を帯びており、黒い炎を追い払い、瘴気を消し去る効果があったとされています。

 イオル・オク・ソイドは星の王の声を聞きつけ、星の子戦争七日目の宵刻、黒い炎の夜にテオフィルスに向かい、王からある命令を受けました。

「貴殿には我が光を与えよう。暗闇を照らし、子等の道標となれ。」

 イオル・オク・ソイドはその命に従い、星の子達を引き連れてテオフィルスを出発しました。彼らの咆哮が風を呼び、瞬く間に黒い炎を退けるその神々しい姿は、多くの戦士、民達に希望を与えました。イオル・オク・ソイドが進軍した際に通過した虹の入江、ユラ、ガッサンディ、アペニン山脈近郊に、彼らの勇姿を讃える歌が多く残されています。中でも最も有名なのは、ガッサンディに伝わる古い歌『双頭と月』。以下に記述するその歌には、イオル・オク・ソイドが黒き炎に臆することなく立ち向かう様が雄弁に語られています。


【双頭と月】

空を揺らす青い風 双頭が往く先は暗黒

されど立ち止まることなかれ

我ら光に愛されたものとして

双頭の風は恐れを知らず ただ凛とそこに在り

空を揺らす青い風 双頭が往く先に影

されど立ち止まることなかれ

我ら光に愛されたものとして

双頭の風に月の加護あり すなわち、光と在り

黒き炎、双頭の行く手を阻み

大きな口を開き 双頭を丸呑みにする

されど希望を歌う風は潰えず

されど希望を灯す魂は潰えず

黒き塊を引き裂き出る 空を揺るがす双頭の声

声は風となり 風は意志となり

星霞を波立たせ 月を運ぶ

月を戴く双頭 蒼銀の輝きに満ち

青き風で黒き炎を討ち滅ぼす



 この歌はイオル・オク・ソイドとネガルの戦いを語る歌として歴史的価値のあるものとされ、現在多くの文献に掲載されています。一度はネガルに呑み込まれながらも、それを打ち破った強さ。天幕を揺らし月を動かすほどの咆哮。彼らの伝承に多くの子供たちが魅了され、やがて多くの学者が生まれました。

 この歌が伝わっているガッサンディの一部地域では、月のことを『イオル・オク・ソイドの冠』と呼んでいます。また、月が見える時間に吹く風を『希望の風』と呼び、その風に当たった動植物の毒や瘴気が弱まることが知られています。


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