表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/21

堅牢な黒金の角牛

光徒歴程(原典)第七章第二節『cor at una』より

堅牢なる者の物語

堅牢なる者コル・アト・ウナの伝承


其の身 堅牢にして守護者の証なれば

潔白なるを尊び 盾として君臨す

其の心 透明にして覚者の証なれば

青き炎の加護のもと 盾として鎮座す




 コル・アト・ウナは、二本の鋭い角と、非常に硬い肉体を持つ闘牛でした。その身体に傷をつけることが出来た者はなく、星の子戦争において無敗であったとされています。鎧のような身体は黒金に輝いており、角は星霞の光を受け、青い炎を纏っているかのように仄かに光っていたと伝えられています。

 コルはある時はその角で敵を薙ぎ払い、ある時は硬い身体を盾にして弱き者を守っていました。そんな彼の最も有名な伝承の一つが、星の子戦争終盤、星の王との約束の物語です。

 



【我が身は王の為にあり】

 星の子戦争五日目、光の刻。十二体の聖獣の祈りに応え、星の王が天幕よりもたらされました。星の王はプラト上空から舞い降り、アストロロジカ全土を飛び回り、やがてテオフィルスに降り立ちました。コルは星の王クル・エルス・イガルカに出会い、その聖炎に忠誠を誓うと、彼の警護に就きました。コルは星の王と共にアストロロジカを巡り、数々の聖獣に出会い、共闘し、多くの争いを鎮めました。

 そして、七日目の宵刻、黒い炎の夜。黒い炎がアストロロジカの地を駆け巡り、再征服を始めた頃。

 星の王イガルカは煌々と輝く身体を振わせ、黒い炎を見据えて声を上げました。

「恐れるな、前を見よ。黒き炎の侵略を許してはならぬ。青き炎に導かれし子らは皆、光の祝福を受けた神の子、すなわち我の同胞である。今こそ共に立ち上がり、ネガルを駆逐し、光なき者らに静寂と安寧を与えよう。」

 王の声は風となってアストロロジカ全土を駆け巡り、その声を聞きつけた聖獣に導かれて、多くの星の子たちがテオフィルスに集まりました。その時の光景はテオフィルスで語り継がれる伝承において「宵刻の月」と呼ばれており、聖獣と星の子たちの瞬きによってテオフィルスは宵刻の闇の中で明るく輝いて見えたとされています。

 進軍の前に、星の王イガルカはコルにこう命じました。

「そなたはこの地に残り、守護者として弱きものに寄り添いながら、我らの帰還を待て。」

 コルはその命令を受け入れ、王座を守ることを決意してテオフィルスに残ることにしました。

「青き炎の加護ある者は我に続け!ネガルを駆逐せよ!」

 ああ、どうか彼らに光の祝福があらんことを。聖獣と星の子を引き連れた星の王の軍がどんどんテオフィルスを離れていきます。その背を見送りながら、コルは高らかに咆哮を上げました。


 そうして、幾日、幾年が経ちましたが、星の王や聖獣たちは帰ってきませんでした。彼らがネガルを封印する為に、自らの身を捧げてロジカの環を形成したことを知ったコルは、それでも王の帰還を待ち、王座から離れなかったと伝えられています。

 コルは民に寄り添い、彼らの安寧と平和を護りながら過ごしました。コルの今際には、彼を慕う多くの民によって聖歌が歌われ、一陣の風と共にコルは眠りにつきました。しかし今でも、その子孫は約束を守り、テオフィルスで星の王の帰りを待っています。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ