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空の大穴

光徒歴程(原典)第一章『o nom ir igaru』より

まだ人々が光を知らぬ頃。

暗い世界で、ただ永遠を生きていた頃。

一羽の鳥が、空を見上げておりました。


「この空の向こうには、何があるのだろうか?」


鳥はいつもそのようなことを考え、物思いに耽っては、大地を蹴って翼を動かしました。

幾日も幾日も、ただ上を目指して当てもなく飛び続けました。


人々は、そんな鳥を見て笑っておりました。


「空の向こうなど無い。何もないに決まっている。どこにもたどり着けはしないよ。」


「可哀想に。彼には現実が見えていないのだ。」


「馬鹿なことはやめて、お前も地上でゆっくりと暮らすが良い。私たちと、永遠に。」


様々な人が鳥に声をかけました。

されど、鳥は諦めることを知らず。

何十、何百、何千、何万の時を、夢のために費やしました。

どんなに翼が痛んでも、決して羽撃くことをやめませんでした。


そんな鳥を、人々はもう笑いはしませんでした。

心ない言葉を吐くことも、哀れむこともやめ。


鳥を天に押し上げたのは、人々の声援でした。


「この空の向こうには、何があるのだろうか?」


「きっと、夢の終着にふさわしい宝があるだろう。」


「あるいは、厄災か。いずれにせよ、辿り着いてみなければ。」


知ることを諦めなかった鳥。

好奇心に駆り立てられた人々。

鳥はその翼にたくさんの想いを乗せて飛び立ちました。


ギシギシと軋む翼、痛むほど鼓動する心臓の音。

自分の座標も分からぬほどやみくもに。

人々の声も届かぬほど遠くに。


ふわりと行く手を阻む黒い天幕。

ついに、鳥は世界の最果てにたどり着きました。


「この空の向こうには、何があるのだろうか?」


鳥は、天幕に口付けをしました。

その瞬間、青い炎が鳥の口先に灯り、黒い幕に燃え移りました。

あまりに急速に、無慈悲に。

炎は天幕を焼き、大いなる光が空の向こうから降り注ぎました。


穴から降り注ぐ光に焼かれ、鳥は青い炎を吐きながら破裂してしまいました。

その飛沫は天幕に飛び散り、黒い空に星明かりを灯しました。






_________________________


光は世界を照らし、多くの人々を焼きました。

現在の星の民に文明と寿命を与えた大いなる光は、通称「イガル」と呼ばれ、古代語で「青い炎」を意味します。

また、現在でも、旧民族アユ・シエス・イグは光を避け、永遠の命を保っています。


光がもたらした熱によって、天幕が揺れ動かされ、明るい時間と暗い時間が交互に訪れるようになりました。

明るく暖かい光の時間には、鳥が開けた穴とされる「月」と、鳥の骸から飛び散った「星霞」が、黒い空に青白く煌々と輝いております。

寒く暗い闇の時間は、「星霞」が少なく、イガルの加護を受けられないために、魔物やロストが活発化するのです。









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