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花冠を戴く大地の女王

光徒歴程(原典)第七章第六節『Aiart sa spinia』より

祝福する者の物語


祝福する者 アイアート・サー・スピニアの伝承



暁に生まれし娘 空を戴く螺旋の樹

青き星の大地に祝福を、と

時代に花を贈り続ける

其の花散れども枯れることは無し

年輪を重ねて幾千

光を受けて輝く葉と

風に揺れる花枝が

今なおそこに在り続ける

ただ星の巡りを見続ける骸として





 アイアート・サー・スピニアはアストロロジカのラングレヌスに存在する聖樹であり、現在も多くの星の民に愛されています。その幹はまるで腕を空に向かって広げた女性のような形をしており、彼女の頭部には花冠のように常に暁光色の花が咲き続けています。

 スピニアの花弁を拾った者には幸福がもたらされるという言い伝えがあり、日々多くの観光客が彼女のもとに訪れています。しかし、スピニアの花弁は萼から離れるとすぐに燃えて消えてしまうため、拾うことは難しいのです。彼女の伝承は数多く、貧しい者には豊かさを、悲しき者には慰めを与えるといった物語がラングレヌスで語られています。

 その一方で、ある時、幸福を求めた強欲な星の民がスピニアの花弁を取ろうと聖樹に近付くと、幹の剥がれた皮の隙間から青い炎が吹き出し、星の民を焼き殺したという伝承もあります。アイアート・サー・スピニアは星の王の心の化身とされ、正しきを愛し、邪を許さないのです。

 彼女が生まれたのは世界の晴れ上がり直後、空の大穴から落ちた炎が地上で受肉したと伝えられています。そのため、アイアート・サー・スピニアは生まれた時間である暁光に魔力が最大になり、まだ薄暗いアストロロジカをロストから守っているのです。



【アストロロジカの心臓】

 アイアート・サー・スピニアの根は深く、地殻からマントル、核に至るまで星の内部全体に広がっていることが観測されています。それは、アストロロジカの核から魔力を地上に届ける役割を果たし、全ての動植物に生命力を与えていると考えられています。私達が魔法を使った時、副産物として排出される魔力の残滓は空気中に溶け、アイアート・サー・スピニアの葉に吸収されると、根を通じてアストロロジカの核に戻り、そこで清浄な魔力に変換されます。アストロロジカの植物は皆彼女から得た魔力で芽吹き、魔力を灯した実を結びます。私たちは、彼女がもたらした魔力を帯びた食物を食べ、聖樹から発せられる星の息吹きを吸って生きています。アイアート・サー・スピニアがもたらす魔力の循環は、食事を取らず、呼吸のないロストには適用されません。

 この魔力を循環させる働きから、アイアート・サー・スピニアは学者達から『アストロロジカの心臓』と呼ばれています。彼女は星の子戦争終了後、領土浄化のためにその聖躯を捧げて世界機構(システム)の一部となりました。幾百、幾千の時間をかけて、彼女は大地に染み込んだ星の子らの血を吸収し、今なお浄化を続けているのです。

 彼女の魂は聖樹から切り離され、処女宮として現代もアストロロジカを見守っています。

 


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