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“聖剣”はポニーテールと共に  作者: 飛鳥
二章〜少年期
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二章プロローグ〜“王子誘拐”

二章スタートは前作とは違うスタートになりますが、大筋は変わらずです。

2月で二章を終わらせる為に更新話数が日によって2話あります。

 〜レイス視点〜


 目が覚めたら手足を拘束されていた…ついでき目隠しされているし口も塞がれている。

 何故こんな状況なのか、それは簡単…誘拐だ。



 ✴︎✴︎✴︎



 エルフの国…というより俺の父の国メニア連合国。

 父はザスティン・アルメニア、誰もが知るエルフの英雄であり、最強の魔法使い。

 その長男のシグナス、そして次男の俺。

 偉大すぎる父と優秀な兄を持った俺は一応第二王子なんて呼ばれる。


 まだまだ謎の多い魔法。

 どうすれば魔法を扱えるようになるのか、その謎はまだ解き明かされていない。

 父はその謎を解き明かす事を目的と語っていて、解き明かすには至っていないが、新たな魔法を作り出した。

 それは古代文字を使わずともマナを操作して扱う魔法で、練度によって差はあるものの誰もが同じ魔法を扱えるというところまできた。


 兄はそんな父を補佐しつつ、剣の道を志していた。

 メニア連合国はエルフと獣族の国、身体能力の優れる獣族の中には剣術に優れる者も多い。

 兄はそんな人達の下をまわって剣術を学ぶ。

 かつて争ったバルメリア王国にいる、父が認める実力者である元剣聖の下にも行き、そして現在の剣聖とも戦ってきたのだ。

 赤い髪の剣聖との話は帰ってから兄に何度も聞かされた。

 美しい外見に似つかない苛烈な剣だとか、稲妻のようだったとか、自分はまだまだ弱いと…、すでにエルフの中では訓練相手も見つからないような兄がそういうのだからよっぽど凄いのだろう。



 そんな父や兄を誇りに思いながらも俺の中では違う感情があるのを知っていた。

 偉大な父の息子だと常に周囲に期待される…そして優秀な兄と常に比べられる…そんな日々は俺にとってはストレスでもあった。


 そう、俺は期待に応えれる程の才能はなかった…、何を頑張っても兄に劣る俺は、何かを頑張ろうなんて思えなかった。




 そんなある日に警備の隙間を縫って外へ抜け出した。

 大森林の中に不自然に存在するメニアの首都アレクシスは自然からかけ離れた…違和感しか存在しない城を中心に広がる街。


 そこにはエルフと獣族達が住んでいて、人族の街ほど人は多くないけど、賑やかで栄えているといえる大都市。

 城の外に出るにはいつも護衛が居た俺にとって、1人で街を歩くことが出来るのは楽しかった。

 護衛がいては好きなことはできないし、あれはダメだのなんだのって口煩い奴もいる。

 そんな俺にとって1人というのは素晴らしいものに思えた。


「見かけない顔ね、アンタ誰よ」


 1人で街を彷徨いていた俺に声をかけてきたのは獣族の少女だった。

 ウェーブのかかった長い茶髪、そして頭の上には獣の耳。

 年齢の割には発育も良好そうで、顔も少し大人びているが美少女と言えると思う。

 気の強そうなのが顔を見ただけでわかるのは個人的にはマイナスだけど…。


「んー、ゴメン!あんまりタイプじゃないんだ」


 俺は素直にそう言ってその場を去ろうと背を向ける。

 彼女は口を開いたまま固まっていた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?誰がナンパよ誰が!!」


 そうやって怒声を上げながら追いかけてきて俺の肩を掴む。

 獣族故か幼くとも怒声に力強さを感じる。


「そんなに落ち込まなくていいよ?そりゃ俺が美少年だから声を掛けたくなるのもわかるし?振られて腹が立つ気持ちもわからなくもないけどさ」


 俺は美少年だ。

 エルフだから美形が多いのも勿論親に恵まれた。

 大人が求める才能とやらは受け継がれなかったかもしれないが、容姿はしっかり受け継がれている。


「ナンパじゃないって言ってんでしょ!!気持ち悪いのよクソガキ」

「気持ち悪い?……嫉妬かな?」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 俺は彼女の言葉を聞いて本気で不思議に思った。

 俺はどこをどう見ても気持ち悪いなんてとこはないはずだし、そう思って彼女をしっかりと上から下まで見てから結論を出した…うん、嫉妬か、それなら仕方ないね。

 しかし彼女はさらにヒートアップする、まぁ図星をつかれたのはだから仕方ないね。

 俺はこれ以上絡まれまいと無視するように歩くが、彼女はそれを許さない。


「…そんなに俺が好き?」

「んなわけあるか!!見かけない顔だからアンタ誰かって聞いてんのよ」

「…ナンパ?」

「ちがぁぁぁぁぁう!!!」


 顔を真っ赤にして怒る彼女、何がしたいのか何が言いたいのかイマイチよくわからないけど、面白い子なんだと思う。

 はぁはぁと息を切らしながらこちらを睨み付ける、そんな顔したら美人が台無しだね、タイプじゃないんだけど。


「ともかく、この辺最近人攫いが多いのよ…、ガキンチョ1人でウロウロしないで他所に行きなさい」

「なるほど、早く言ってよね」


 呼吸を整えてから俺にそんな事を言う彼女。

 納得して返した言葉にさらに彼女はイライラしているように見える。忙しそうだねこの子は…。

 ただ俺としては極力面倒に巻き込まれないようにしたい、抜け出しといてからに面倒に巻き込まれるなんて事があれば何を言われるかわからない。まぁ父は何も言わないだろうが過保護な母と真面目な兄は考えるまでもない。

 ここは素直に忠告を聞いておこうと思ったと同時に少し疑問もあった。


「えっと、君は?」

「アタシは大丈夫だからいいのよ!早く行きなさい」


 納得のいかない回答だったが、それほど興味があるわけでもないので気にしないことにした。


 その日の俺は街を適当にふらついてから来た道を戻って城に帰った。





 そんなこんなで城を抜け出して街を散策する事が増えた。

 城の警備を抜け出すのも慣れたものだ、そもそも城の一部は一般人も自由に出入りできるようになっているので、人に混ざれば案外簡単に出入りできるものだ。

 最も普段はそんな手は使わないが…。


 厳しい修練の息抜きに抜け出してた俺は、ある日街で祭りをやっている事を聞いた。

 どうしても行きたいなら護衛を連れて行けなんて言われていたが、護衛を連れて行くのは楽しめないので宜しくない。

 それでも祭りが気になる俺はいつものように抜け出して行くことにした。




「アンタ…ガキンチョは祭りにでも」

「いや、その祭りに行くためにそこ突っ切った方が早いんだよね」


 また獣族の少女と遭遇した。

 別にあの時以来ではない…彼女とは城を抜け出すとたまに遭遇していた。

 同じ場所ではないが、基本的に裏道を塞ぐように遭遇している気がする。


 いつも何かとしつこいので言う通りにしているが、本日は夜から少し用事もある…ならば抜け出さなければなんて事はない、祭りは今日が最終日なのだ。


「この先は危ないのよ、だから別の道を行きなさい」

「やだよ、今日は急いでるんでね」

「あっっ…」


 そう言って俺は彼女を避けて通る事に成功した。

 後ろで何か言おうとしていた気もするが、そんな事はあんまり関係ない、俺は急いでいるのだ。


 薄暗い裏道を抜けるため走っている。

 途中から聞こえて来る賑やかな音に、少し気分が上がってきた気もしてきた。



 そんな時大人とぶつかった……。


「いった…あー…」


 尻餅をついて転けたまま、お尻をさすって起き上がろうとすると周囲に大人数名が俺を囲んでいるのが見えた。


「…ナンパですか?」

「へへっ、そう見えるかい?」

「残念ながら…見えないね」






 ✴︎✴︎✴︎



 そんなこんなで今船の中だと思う。

 一度だけ行った海岸と同じ匂いや音が聞こえた後独特の揺れる乗り物…つまりはそう言うことだ。


 エルフの王子である俺を誘拐…ねぇ、売り飛ばされるのだろうか?

 流石に俺の立場的にも簡単に殺されたりはしないと思うけど…。


「おい…大……王子…」


 エルフは耳が良かったりする、微かに聞こえて来る声に耳を傾ける。


「バルメ……ファリム……高くか…」


 バルメ……行き先はバルメリアかな?

 理由はわからないが王族の俺を欲しがってる人がいるみたいだね。

 兄や母は俺を探そうとするだろうけど、多分父はそんな事しない気がする。

 父はいい王であっても良い父では絶対ない。

 兄は国の為に必要として、期待しているのかもしれないけど俺は必要とされていない。

 理由は簡単、それほどに父子の会話は無いのだから。


 こういう時もっと焦ったり怯えたりするのかと思ったけど案外冷静でいられた。

 それでも焦りも恐怖も無いわけじゃない、大丈夫だと自分に言い聞かせた。

 俺が最も父に似たと言われたところは、変な焦りや恐怖をもたない精神的な面、こういうとこだったなと今更思い出した。

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ここまで読んで頂きありがとうございます。 稚拙な文章ストーリーではありますが、 気に入って頂いた方は 『感想』『評価』『ブックマーク』『レビュー』 して頂けると嬉しいです。
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