一章エピローグ〜“別れの握手”
クリスとシグナスの試合の後は、俺やクリスはドレイク達と別に夕食へ、そして本人は遠慮していたが、シグナスも一緒に夕食を食べる事になった。
シグナスにも弟が居て、俺と同じくらいの年齢らしい。
ちなみにザスティンの年齢は100を超えているらしく、俺の知るファンタジーの知識同様エルフとは長寿の種族らしい。
正直見た目はシグナスとそんなに差があるようには見えない。
ちなみにクリスは23歳、ドレイクは60歳でシグナスは21歳らしい。
他に俺が年齢を知っている相手は、アルミーナが今14歳、ミリターナが18歳、少し離れたエイルーナが7歳だった気がする…。
いつか弟と会う事があれば是非仲良くしてくれと頼まれた。
シグナスは数多くの魔法を操るエルフの英雄ザスティンの息子ではあるものの、魔法の才に恵まれず剣の道を選んだのだとか。
故に剣聖であるクリスや、ザスティンから聞いていたドレイクに会いたかったので、着いてきたらしい。
元々外交も兼ねての王都へ来ていたらしいが、ザスティンが旧友を訪ねると突然言い出したのが事の始まりなんだとか……。
仮にも王様であるザスティンの護衛にしては少ないと思ったが、そもそもこの辺は治安も良く凶暴なモンスターもいない上に、ザスティンの心配なんて誰も必要ないので、最低限の護衛だけだったらしい。
つまりは現状最強の魔法使いであるザスティンに、歯向かう賊もいないし、居たとしても賊程度の規模であれば話にならないのだろう。
俺としてはどんな魔法が使えるのか聞きたいし、さらに言えば是非見せていただきたいものだが、そんなお願いはしようとは思わない。
その後はクリスとシグナスによる剣士の…というか、俺の感覚でいうならオタク的なトークが展開されたので良く覚えていない。
構えのなんたらから、剣の種類やら名剣の話、さらには歴史に名を残すかつての剣豪だったりなんだりと…。
この世界の知識はまだまだビギナーな俺は全く着いていけず終始ボーッとするしかなかった。
その後は入浴を済ませて眠った。
✴︎✴︎✴︎
1日とは経過するのが早い…クリス達の見守った後時間経過も早く、気が付けば翌日、ザスティン達の帰りの見送りである。
「次来る時は王都で待て、私から出向く」
「老体には王都までの早駆けは厳しだろう、私と貴様の仲だ、気にするな」
ドレイクからすれば、一応王様であるザスティンがわざわざ屋敷に足を運ぶより、王都から連絡をして自分が向かう方がいいと思っているのだろうが、ザスティンはザスティンなりにドレイクに気を遣ったらしい。
最も本人は不本意そうではあるが……。
そう言いながら握手を交わす2人。
かつては敵同士であったが、今はお互いを認め合った関係、好敵手の理想なのではないだろうか?と思わなくもない。
「先日は無理を聞いていただき、ありがとうございます、良い経験をさせていただきました」
「こちらこそありがとうございます、お互い精進していきましょう!」
クリスとシグナスも握手を交わしながら互いに挨拶をしている。
一晩で2人は結構親交を深めたようだが、息子という立場からすると、何となくではあるが複雑な気分である。
クリスはまだ23歳であり、5歳の息子がいるとはいえ肩書は剣聖であり、そしてアストラルの名を持ち…おまけに美人である。
再婚を考えてもおかしい事じゃないだろうし、恐らく俺の知らないところで見合いの話もあったりするのかもしれない。
だが長い人生で、パートナー不在というのは…、そりゃ前世で独身貴族なんて言葉もあったし、1人で自由に過ごす生活を否定するわけじゃないが、少なくともクリスが1人が平気なタイプには見えない。
そう考えると良いパートナーを探すべきなのでは?そりゃアストラルの家の事を考えれば再婚なんてのも複雑かもしれないけど……。
うん、こんな事を考えてもキリがないな…。
でもクリスに新しく男が出来たりなんだりってのは考えただけで複雑である。
「負けはしたが良い動きだった、しっかり修行を続けなさい」
「はい、ありがとうございます」
俺が変な事をうだうだ考えていると、ドレイクとシグナスが言葉を交わしていた。
そのまま俺に視線を移すシグナス。
「いつになるかわからないが、今度弟を紹介するよ」
「仲良くなれるといいですけどね、お気を付けて!」
弟はどんな人なのだろうか?
わかることはイケメンエルフである事は間違いあるまい。
「噂以上だった、機会があれば共に戦えるといいな」
「光栄です」
隣ではクリスがエルフの英雄に称賛の言葉を貰っている。嬉しいのだろうが全然真面目な顔が作れていない…口元が普通ににやけている。
ザスティンがクリスと握手した後、その隣の俺を見下ろしてくる、じっと俺を見つめられる。
「昨晩ドレイクとも話したが、私は本国で魔法学園を創ろうとしている、完成したら来るといい」
「は、はい!」
この世界にも学校が存在しているのは知っている。
義務教育なんてものがないので、来るのは富裕層なりなんなりとある程度余裕がある者か、推薦なりと色々異なるが確かに学校はある。
バルメリア王国にも王都ゼレーネにあるのだとかで、俺も10歳を過ぎたら通う予定なんだとか。
言葉通りなら魔法に特化した学校といったところだろうか?それを想像するだけでワクワクする!
「次は貴様がメニアに来い、もてなしてやる」
「…老体には厳しいかもしれんな」
2人は最後まで仲良さそうに笑っていた。
ドレイクは今まであまり話す機会も多くはなかったが、基本怒っているんじゃないかってくらい怖い顔してるけど、こんな光景を見ていると普通に気のいい人なんじゃないかと思う。それほどに楽しそうだった。
ザスティンとシグナスは馬車に乗り込み、そして来たときのようにエルフの護衛達に囲まれて走っていった。
アストラル邸一同でそれを見送る。
なんだかんだ楽しい1日だったし、貴重な人達と少しだけ話す事が出来た。
今度会う時はしっかり俺も話に混ざれるようになろう。
一章〜幼年期は一応ここまで…です。
転生ー5歳までのお話になります。
一章エピローグとありますが、多分エピローグの話が追加されると思います…。
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