第9話
………なんというか、すごいことになっているなと感じた。異界人というのはプレイヤーのことだろうか?最初の街のギルドがあの売り子の言っていた通りなら、このゲーム本当に大丈夫なんだろうか?
なにかクエストの前振りかもとも思ったが、特にそのような表示もなく会話が終わってしまった。………とりあえずギルドには近寄らない方がいいだろうと市場の方へと足を運ぶ。
市場のほうは天気が悪いというのにかなりの人がいた。大きな声をあげながら客を呼び止めるものや安く買うために店と交渉している声、ただ黙して商品を並べて販売している者など様々だ。人が多いためか、時折すれ違う人とぶつかってしまう。そんなことも気にせずに並んでいる商品を流し見しながら楽しんでいた。
と、いきなり目の前が真っ赤に染まった。所々で爆発がおき、家が倒壊し人が吹き飛んでいく。周りには悲鳴と怨嗟の声が響きわたる。あまりの状況の変化に戸惑っていると、いつの間にか周りには誰もいなくなっていた。
喧騒は止み、所々に踏み砕かれた野菜や武器などが散らばっている以外にはなにもなかった。とりあえず逃げよう。なんか、やば……い……?
逃げようとは考えたが何故か足が動かない。足を見ると膝辺りまでがいつの間にか土の中に埋まってしまっていた。わけがわからない状況でなんとか脱出しようと試みたが、土から這い出ることはできなかった。むしろ暴れるほどにズブズブと身体が底無し沼に入ってしまったかのように沈んでいってしまう。
なんとか這い上がろうとしても掴まるものもなく、そのまま身体は沈んでいき、最後には顔まで埋まってしまい息も続かなくなりそのまま消失した。
「は?」
ヘッドギアを脱ぎ、とりあえず落ち着くために傍に置いてあった水を一口飲む。なんかとっても意味がわからない状況で体力全損してしまったんだが。なぜ街中でいきなり?なんだか心の中にもやもやを抱えながら、ネットにある攻略板を見てみる。
そこには最初の街のことが書き込まれていた。曰く、プレイヤーが乗っ取った冒険者ギルドで邪神を復活させ、最初の街が滅んだと。その記事には動画も貼られていて、誰もいなくなった最初の街を闊歩するゾンビに、首のない馬に跨がった首無し騎士や様々な武装をしたスケルトンに、角が生えた筋骨粒々の男が斧を振り回しながら家屋を倒壊させていく姿が映っていた。
カメラが空へと向けられるとそこには無数の口や眼があった。口が開かれる度に地面がお椀状に抉れ、眼を開く度に光線で街が焼き払われていく。そんな映像が延々と流れていた。
「……………」
うん、『Arcus heroibus versus』やろうか!
打ちきりエンド