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この異世界によろしく -機械の世界と魔法の世界の外交録-  作者: 漆沢刀也
【異世界生活開始編】
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ミリユイ商店街 -女性編-

何だか、思ったより長くなったので、今日の投稿は二話に分けました。

その二話目です。


 ミリユイ商店街の入り口へと到着したところで、佐上達は男性陣と別れた。月野と白峰は瞬く間に道の奥へと向かっていく。何をそんなに急いでいるのかと。こういうのを見ると、やっぱり男女でものの考え方とか違うのかなあとか思ってしまう。

 時刻は15:30を少々過ぎたところだ。思ったよりも物件の確認が早く済んだおかげで、買い物の時間にも大分余裕がある。それに、見て回るのは今日だけでなければいけないという訳でもない。

 外務省の仕事を優先したいということを考えれば、男性陣は今日中に終わらせてしまいたいのかもだが。

 商店街の道幅は結構広い。馬車二車線分の道と、歩道が用意されている。だが、運搬用の車両が通っていないときは、自由に道を歩いていいようだ。


「最初 どこ 行きます か?」

「せやなあ。予定通り、家具から見に行こうか。やっぱり、間取りとか考えないといかんし」

「分かり ました。案内 します」


「そういえば。アサさんも、こんな風に買い物したりするんですか?」

「ほとんど ありません です」

「そうなんですね。お気に入りのお店とか、知りたかったんだけどなあ」


「そういう お店は ここ 別の 場所に ある 多い です」

「あ、そうなんですね」

 ミィレは頷いた。


「それと、 お店の 人 が 家に 来ます」

「うわ。そういうことですか。確かに、言われてみれば私達の世界でも、上流階級の人達ってそういう買い物の仕方、多いです」

 改めて、庶民の常識とは別なのだなあと思い知らされた。

「アサ 姫 様。外に出る こと とても 好き です。なのに」

 ミィレは苦笑を浮かべる。


「まあ、しかしなんや。あの人ら、見てくれは悪くないのに浮いた話が全然無い理由、分かった気がするわ」

「ですねえ。玉の輿狙いの人達が寄ってきたり、お見合いが紹介されたりしそうなものだと思っていましたけど」

「それは 今の 話 ですか?」

「んー? 恋人がいるかどうかっちゅう話?」


「はい」

「せやな。噂で聞いただけやけど、月野は過去に何度かお見合いも紹介されたことあるらしいわ。けれど、どれもダメだったみたいやな。まあ、そうやろ。あいつアホやし。あんな、ネチネチぐちぐちと細かくて理屈っぽい奴、誰が好きになるかい。目付きも悪いし」


「白峰さんも、報道を見た限り、学生時代に知り合った女性はいたようですが。あまり長続きした感じはなさそうですね。いつも言葉の話ばっかりして、でなければ世界経済だとか政治だとかそういう話しかしなくて、流行とかあまり興味なかったみたいです。話通じなかった子、多かったんじゃないかなあ。それに加えて、思いっきり男性的なものの考え方していたようですし」

「どっちも、女性の扱いってものに疎そうやな。大丈夫なんかと心配なるわ」

 佐上は嘆息した。


「いい人達 思う ですが?」

 首を傾げるミィレに、海棠がにまっとした笑みを浮かべた。

「何ですか? 興味あります? この世界の女の人も、こういう話好きなんですか?」

「いえ。そういう 違う です。好きな 女の人 多い です けれど」

「ああ、まあ分かっとるて。うちらも、あの人らのことはいい人やと思っとる。せやけど、男として見れるかどうかは、別問題やっちゅう話やな」

「そういうことですね」


 お? と、佐上は視線をミィレの後ろへと向けた。

「ミィレさん。あれ、なんです? めっちゃええ匂いしているんやけど」

 佐上が指さした先には、少し小さめの店があった。造りとしては、上半身だけが表に出ている。焼き鳥やシュークリーム、アイスを売っている店をイメージさせた。

「ロシェ の 店 です」

「ロシェ?」


「お菓子 です。焼いた パン。切って 甘い 色々 乗せて 食べます。甘い 汁 浸ける ことも あります」

「ほうほう」

「食べます か?」

「せやな、食べてみたい」

 大衆向けのお菓子っぽいし、流石にこれで予算を超えるとかそんなことは無いだろう。


 ミィレと共に店に近付く。彼女が注文を伝えると、店員はギョッとしたようだったが、直ぐに何事も無いかのような顔に戻った。

 ほどなくして、皿に載せられたロシェを渡された。

「やっぱり、驚かせちゃいましたかね? 私達」

「こっちにしてみたら、丸耳の異世界人やしなあ」

 ぼやきながら、佐上はロシェを頬張った。


「美味っ!」

「美味しいですねこれ」

 一口大のパンは外はさっくりと焼き上がり、中のモチモチとした食感とのイントネーションが堪らない。今回はクリームを塗っただけの代物だが、さっぱりとして落ち着いた味に仕上がっている。

「そう 言って貰えて 嬉しい です」

 ふふ、と。ミィレは笑みを浮かべた。


「でも、私達を見掛けても、そんなに騒がれたり囲まれたりはしないですね。有り難いですけれど」

「前 から ここの 人 に 言っています。それに 私 この アサ 家の 模様 ある 服を 着ています から」

「なるほどなあ」


 言われてみれば、白峰だって以前からあちこちを回っていたはずだが、囲まれたり妨害されたような報告はしていなかった。こういうところ、言えばきちんと分かってくれる人達なんだなあと、佐上は理解した。

 これもまた、こちらで住むことの判断が下りた理由なのかも知れない。


「ところで、サガミさん や カイドウ さんには、好きな人 いますか? または、どんな人 好きですか?」

「え? えぇ? それ、訊くんかい」

「まあ、人間そういう興味は誰しもあるものですけど」

 改めて訊かれると、何だかこそばゆい。


「せやなあ。うちは、落ち着いていて、目立たないながらも助けてくれるような。そんな人が好きやなあ。うん、恥ずかしいけど。例えばティケアさんをもっと若くしたような感じの……って、なんでそんな顔するん?」

 見ると、ミィレは眉根を寄せ、沈痛な表情を浮かべていた。


「すみません。少し 言いにくい 話 あります」

「ああいや。あの人、結婚しとるんやろ? 分かっとるて、耳飾りしているし。うちかて、流石に人様の旦那さんに恋したりとかはせんて。それに、こっちの世界の人やし」

 慌てて佐上は手を横に振った。

「いえ、そういう 話 違う。私 言いたい 話」


「ほな。何や?」

 恐る恐るといった体で、ミィレは口を開いた。

「ティケア 月野さん とても 似ている です。仕事 厳しい。若い頃 もっと。月野 さん と 似ている でした」

 思わず呻いた。佐上の顔が凍る。


「うわ。佐上さん大丈夫ですか? 物凄い顔していますよ?」

 その声に、意識を取り戻す。

「ごめん。ちょっと、気が遠くなってた」

 嘘やろ? あの渋い感じのイケメン紳士が? あのド腐れ眼鏡とそっくり? いやいや、そんな訳無いやろ。これは何かの間違い。間違いや。あくまでも、ミィレの人物評だから、うん。


「佐上さん、どれだけ月野さんのこと苦手なんですかと。流石に、少し月野さんが可哀相に思えてきますね」

「いや、逆にうちが言いたいんやけど。何で海棠はんはあいつのこと、平気何や?」

「ええ~? 佐上さんも言っていたじゃないですか? いい人ですよあの人? そりゃ確かに、初めて会ったときは、深夜の裏路地でいきなり声かけられて、殺されるかと思いましたけど。あんまり表情には出さないけれど、秘めたる情熱っていうか、そういうのが熱い人だと思いますよ?」


「マジか。マジかあ。海棠はんには、あいつがそんな風に見えとるんかあ」

 悪い男に騙されないか、心配になってくる。年上として、これはよく、注意してみてやらないといけないかも知れない。


「海棠さん。どんな 人。好き ですか?」

「私ですか? う~ん? でも、正直ピンとこないんですよねえ。男の人と付き合った経験が無いわけじゃないんですけど、何だか刺激が物足りなくて。今は仕事が恋人って感じです」

 お前、そういうこと言っていると婚期逃すぞ。うちみたいにな? いや、まだ終わってないけどっ! というか、可愛いだけあってやっぱりモテモテかいっ!

 佐上はじっとりと湿った視線を海棠に送った。


「そういう、ミィレさんはどうなんですか? 私達にだけ言わせるというのは、狡いでしょう?」

 それもそうやな。と、佐上は相づちを打った。

「ごめんなさい。質問 しました けれど。私は、考えたこと ありません でした」

「そうなんか?」

「はい。私は アサ 姫 様 助ける。それが 私の 全部 です」

 アサは微笑む。それは揺るぎなく、誇りに満ちた笑みに見えた。

おかしい。何故かただの恋バナになっている気がする(本日二回目)。

次回こそ、魔法関係の話をきちんと話題にしたい。頼むぞ、男性陣。

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