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スキャンダルを越えて

今回から新章です。

ようやく、魔法関連について書けるというか、その前準備にたどり着いたというか。

 アサ=ユグレイは大きく安堵の息を吐いた。

 娘から送られてきた報告書を机の上に置く。

「その様子だと、どうやら上手くいったようですね」


「ああ。どうやら、想定外のことが起きたようだけれどね。結果としては上々らしい」

「想定外ですか?」

「ああ、印象にも訴える方向の記事を用意して。また記者会見も行うって話だったろう?」

「そういえば、そうでしたね」


「その記者会見で、突如としてサガミ=ヤコが乱入して、マスコミに反論を捲し立てたそうだ」

「ええっ!?」

 妻が固まる。

 こんな彼女の姿、相当に珍しい気がする。


「それで、どうなったんですか?」

「サガミ=ヤコによる情緒的な反論を続けた方がいいと判断して、あちらの外交宮は記者会見はそのまま続行。理論的な反論もツキノ=ワタルによって行われたそうだよ。その様子は全国的に、隠蔽不可能な形で国民に伝えられることになった。そうして、どちらが印象操作をしているのか? という話は、マスコミの方が疑われるようになったというわけさ」


「サガミ=ヤコって、確かキィリンと一緒にいることが多い民間の人ですよね」

「そうだね。言葉を翻訳する機械を作っている人だ。マスコミによる印象操作を仕掛けられて、キィリンが怒りそうになったところで飛び込んでくれたそうだから、正直助かったと言っているよ」

「それは、よかったです。あの子、そういう事には気性が激しい子でしたから」


「まったくだよ。サガミ=ヤコには感謝だね」

 いつか、会うことがあれば直接礼を言いたいところだ。

「それと、突然のアクシデントにも拘わらず、より好都合になればその流れを利用する。どうやら、これはツキノ=ワタルによる即興らしい」

「それはまた。柔軟性と決断力のある人達ですね」


 発案者はツキノ=ワタルかも知れないが、それを承認していくとなると、彼一人で実現出来るような話ではないだろう。

「まったくだ。仕掛けるつもりは無いけれど、搦め手は避けた方がよさそうだね」

 その分、相手としては信頼出来るが。


「でも結局、今のままで大々的にマスコミが行き来するというのは難しそうですね」

「そうだね。先日送って貰った、記事の抜粋を有識者にも見て貰ったけれど。前帝国時代の、国を滅ぼしたマスコミと共通点が多いそうだ」

 特に、広告業と報道が分離していないというのが、似通っている。それでは、広告主に不利な報道は出来ず、公平で透明な報道からは遠のくことになる。


 キリユが首を傾げる。

「あちらの世界では、そのようにマスコミによって国が滅んだということは無いのかしら?」

「幸か不幸か、あるいはキィリンが知らないのかも知れないけれど。無いみたいだね」

 もっとも、似たような状況で、泥を被ってでも国が情報を統制していたことはあるようだが。


「まあこれも、近々こちらの国際代表記者がルテシア市に到着する頃だし。彼らが渡界してあちらの様子を取材し、またこちらのことを伝えることで、徐々に解消すると願いたいけれどね。法整備やこれまでの歴史の違いもあるし、難しいとも思うけれど」

「そうですね」

「代わりに、以前からキィリン達と交流のあったツキノ=ワタル、シラミネ=コウタ、サガミ=ヤコ。それと、最近に記事作成担当として加わった、カイドウ=アヤカがルテシア市に住むことになるけれど」


「カイドウ=アヤカは元々、雑誌記者として働いていたんですよね。彼女には、こちらの報道の在り方について、よく知ってまた広めて欲しいです」

「まったくだ」

 娘の報告によると、カイドウ=アヤカの意欲は非常に高く、そこも期待出来そうではある。

「ただまあ、今回の一件もそうだけれど。やはり、現地で意思決定が出来る体制というのは、今後はより重要になりそうだ」

 ここのところ、直接対応を伝えられなくて胃が痛い日々が続いたものだ。


「記者もそうですが、一緒に旅立った外交関係者や学者の人達も、そろそろルテシア市に到着する頃ですよね」

「そうなる。まあこれで、少しは安心出来るかな。キィリン一人じゃ重荷だけれど、相談出来る相手が増えれば、少しは肩の荷も下りるだろう」

 決して、完全に気を許せとは言わないつもりだが。


「渡界管理用の施設は、ようやくこれから建設を始めるみたいだ。まあ、時が経つにつれて役割も大きくなりそうだから、近いうちに造り直すことになるんだろうけど」

「最終的に、どうなるのと思います?」

「さっぱり分からないね。それも含めて、これから探っていくところだし」

 ユグレイは肩を竦めた。

「取りあえず、僕としては当面、ルテシア市での生活にみんなが馴染んでくれるのならそれにこしたことはないよ」

「そうですね」


「でもって、何事も無いからって、僕達もルテシア市に帰れるようになりたい」

「だったら、お仕事頑張らないといけませんね」

 ユグレイは嘆息した。

 まだまだ王都の仕事は山積みである。

次回ももうちょっと、マスコミ編の後始末な話になるかなあ。

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