インタビュー ウィズ 佐上弥子
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
アサ=キィリン女史は「日本のマスコミは持論の為に事実を都合よく印象操作する」と主張している。しかしちょっと待って欲しい。その主張は早計に過ぎないだろうか。
彼女らの真摯な姿勢が、今ひとつ伝わってこない。
例えば、日本のマスコミからは、「我々には国民を代表して権力を監視する使命がある」と主張するような声もある。
このような声に、彼女は謙虚に耳を傾けるべきではないか。
思い出してほしい、外務省は日本のマスコミによる「真実を伝えよ」という叫びを無視している。
アサ=キィリン女史は、日本のマスコミによる権力の監視が間違いであるかのような発言をして、批判を浴びた。
確かに日本のマスコミには、ときには権力に対し攻撃的にすぎ国家運営の萎縮を招くと言われる問題もある。だが、心配のしすぎではないか。
彼女の主張は一見、一理あるように聞こえる。
しかし、だからといって本当に、日本のマスコミは持論の為に事実を都合よく印象操作すると主張できるのであろうか?
それはいかがなものか。的はずれというほかない。
事の本質はそうではではない。その前にすべきことがあるのではないか。
アサ=キィリン女史は、未来を担う一員として責任があることを忘れてはならない。
彼女の主張には危険な匂いがする。各方面の声に耳を傾けてほしい。
彼女の権力側に立つ思想、そして異世界のマスコミの在り方に、疑問を抱くのは私達だけだろうか。
異世界のマスコミも、権力が暴走することは望んでいないはず。しかし彼らの在り方では権力者に都合のいい論が溢れ、権力を監視出来ないのである。
「日本のマスコミは持論の為に事実を都合よく印象操作する」と主張する事はあまりに乱暴だ。アサ=キィリン女史は再考すべきだろう。
繰り返すが、異世界のマスコミの在り方では権力者に都合のいい論が溢れ、彼らを監視出来ない。
アサ=キィリン女史が「日本のマスコミは持論の為に事実を都合よく印象操作する」と主張したことは波紋を広げそうだ。今こそ冷静な議論が求められる。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
佐上は新聞を折りたたみ、床へと叩き付けた。
「また、こいつらはアサのことを。ざっけんなやっ!」
げしげしと新聞を踏みつける。
ここ毎朝、こんな感じだとは自覚もしているが、それでも確認せずにはいられない。
ちなみに、新聞代は出していない。金を払ってまでこんなものを買う人間の気が知れない。ホテルのロビーに無料配付されているものを貰っている。
何で無料配付なんぞしているのかとフロントに聞いたら。近年は新聞も売れず、部数も減ったのだが、その部数が少しでも多く見えるように、新聞社はこうしてビジネスホテルなどに無料で置いていくようになった。という話だった。
新聞が売れなくなるとか、当たり前やろがと佐上は思う。今はもうネットの時代やぞ? 過去にどんな報道していたかも、当人の発言が実際どうだったかも、直に確認出来る時代やぞ? それをコロコロと言うこと変えていたり、間違いを誤魔化したりしていたら、信用無くすわ。信用無くした商品が、売れる訳無い。
まあ、こんな話は、最近自分が当事者になったこともあり、前々から色々と言っていた父親に話を聞いて知ったことがほとんどなのだが。
ちなみに、母親の方は、父も娘も理屈っぽくなって困るとぼやいていたりする。
舌打ちをして、机に向かう。イシュテン語に比べて、皇共語の調整の進捗が遅れているので、今はそっちを手伝っている。しかし、こちらは文法の並びが英語や中国語の並びに近いので、なかなか苦労する。皇字とかいう表意文字の扱いについては、取りあえず音声の方が何とかなってから、方針を決める予定になっているが。
スマホが鳴った。
佐上は液晶を確認する。月野からだった。
『もしもし。おはようございます。月野です』
「ああうん。おはようさん。何かあったんか?」
時間はまだ九時を少し回ったくらいだ。彼からこんな時間に電話が掛かるのは、珍しい気がした。
『ええ、少し佐上さんに協力して頂きたいことがありまして』
「ふーん? どんな?」
『はい。ちょっと、時間が掛かってしまいますが。この電話で、取材に応じて欲しいのです』
「はあ? どういうことやねん?」
『それは、今から説明します』
「おう」
『まず、今のマスコミ報道の状況ですが。佐上さんもご存じだとは思いますが、我々に対して批判的な印象で報道されています』
「せやな」
『一応、先日の記者会見で我々も事情については説明し、多くの国民や海外の外交機関から理解を得ることに成功しました』
「せやけど、マスコミは相変わらずやで? あと、マスコミの言うことを鵜呑みにしとるの結構もおるし。何でやねん。話よく聞いたら、外務省の方がよっぽど話に筋通っとるやろ。本当のことを言っても信じていないの、マスコミだけやん」
『その通りです。ですが、人間どうしても印象が判断に影響を与えるのは仕方ありません』
「まあ、そうやけど」
『なので、今度はそういう印象から判断する人達に訴えかけます』
「どうやって?」
『あまり時間は無いのですが。今度の週末。多くの視聴者が家でニュースを見ることが出来る時間を狙って、もう一度記者会見を開く予定です。勿論、我々も勝手な編集を防ぐため、同時にネット配信を行います』
「うん」
『ただし、今度は前回とは少し違うやり方をします。どうしても、我々だけではマスコミのような印象に訴えかけるような真似は出来ません。そういう仕事の仕方は、していませんからね』
「まあ、そうかもしれんな」
『ですので、そのような経験を持つ方達に協力をお願いすることにしました。これで、印象に訴えかけるような記事を用意してwikiに投稿し、またそれを基に記者会見を行います』
「はは~ん。なるほど、そういう訳か」
『はい、そういう訳です』
「でも、そんな協力してくれる人おるん? ああいや、それが、見付かったっちゅうわけか」
『その通りです。具体的には、異世界の新聞記者と。落ち着いて聞いて下さいよ? この騒ぎの発端となった、雑誌の女性記者です』
「はいっ!?」
佐上の口から素っ頓狂な声が漏れた。
「ちょっ? ちょっと待て。この騒ぎの元になったって。大丈夫なんかそいつ?」
『大丈夫ですよ。詳しいことは、彼女に聞いて下さい。本人もこの件は心を痛めていまして、頼んだところ是非とも協力させて欲しいという話でした』
佐上は唸った。
『それで、彼女が記事を作ります。また、記事には佐上さんのことも書く必要があります。なので、彼女からの取材を今から受けて欲しいのですよ』
「なるほどなあ。それは分かったけど。じゃあ、今から外務省に行けばええの?」
『いえ、最初に言いましたが、この電話で大丈夫です。今から、代わりますから』
「せやったな。うん、分かったわ」
でもなあ。いくら月野がそう言ったところで、どこまで本当か分かったものじゃない。
どんな理屈があったのか知らないけど、うちらをこんな目に遭わせた元凶や。きっちり、その辺も言わせて貰うからな。
『お電話代わりました。初めまして、海棠文香と申します。佐上さん、今日はよろしくお願いします』
「はい。よろしゅうお願いします」
若い女の声だった。可愛い声やなこの野郎。月野のボケ。若い女の色香に騙されてるんとちゃうんか?
うちは、絶対騙されんからな。そこら辺、きっちり見極めたるし、落とし前付けさせたる。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
うんうんと、佐上は何度もスマホ片手に頷いた。
『佐上さん。今日は本当に有り難うございましたっ!』
「おう。そっちも、これから大変やけど頑張ってな。応援しとるでっ! よろしゅう頼むな」
『はいっ! 精一杯、頑張ります。失礼しますっ!』
そして、電話が切れる。
時計を見ると、気付けば十時に差し掛かろうとしていた。あっという間に時間が経ったものだと思う。
「ざっけんなやマスコミっ!」
隣室に響かない程度の声の大きさで叫ぶ。
「何やこれ。あの子ええ子やん。めっちゃええ子やん。折角書いた記事を全然違うものにするとか、あんまり過ぎるやろ。そんな会社、辞めたって正解やっ!」
眼鏡を外し、袖で涙を拭う。
アサどころか、こんな子にまで非道いことするマスコミ。絶対に許さんっ!
佐上は固く決意した。
佐上がチョロインなのか、海棠の取材力がハイレベルなのか、どっちなのやら。
まあ実際、創作の雑誌記者の場合は悪く書かれることもあるようですが、本当に仕事する人はコミュニケーション能力が求められるようですからねえ。
海棠の人垂らし能力が高いのは、間違いないと思うけど。
でもあともうちょい、あともうちょいで、マスコミ編も終わるはず。
冒頭の部分は、それっぽいキーワードを入れたら、それっぽい文章を作ってくれるメーカーで生成された文章を手直ししたものになります。
まさか、こんなサイトが出来るほどとはなあ。
ちなみに、冒頭の文章に説得力を感じる方もおられるかも知れませんが、少し慎重に考えてみて欲しいです。
最初に提示された論題は「マスコミの印象操作」であって、「権力の監視」ではありません。
指摘された問題に対し、この社説(?)では別の次元の問題を持ち出し、しかも本当に問題が起きているかどうかの根拠も提示せずに、問題があると指摘して己の非を打ち消し、どっちもどっち論に持ち込んで誤魔化しています。
本当に答えるべきは、「印象操作」というものをどのように防ごうとしているのか? 何故、そう言われることになるのか? といった話であるにも拘わらず、そういう回答がありません。
「心配のしすぎではないだろうか?」の一言で、根拠も無く矮小化して終わらせています。
なのでまさしく、印象操作なのです。
詭弁というのは、やり方は色々とありますが、論題に対し論点をすり替えて回答するのが共通した特徴になります。なので、この記事での文章は詭弁に該当するのです。
こういう報道をマスコミがしていないか、購読者はよくチェックすべきなんでしょうね。今の時代。
まあ、気を付けるべきはマスコミだけじゃなく情報発信しているところ全般なのでしょうか。