これからもよろしく
これにて第一部完となります。
ここまでのお付き合い、有り難うございました。
アサ=キィリンによる天皇皇后両陛下への謁見から、三日が過ぎた。
謁見は終始和やかな雰囲気で行われ、また親書の内容も末永い友好を願うものだった。そのため、全世界に対して友好的なお付き合いへ大きな一歩が進んだというメッセージが伝わることになった。
また、イシュテン王家から贈られたセリテル陶の大皿だが、陶芸に知識を持つ人間を大いに驚かせた。その姿は、未だ謎多き曜変天目茶碗に酷似しており。むしろ文様の輝きや大きさなどを考えると、経年による劣化を差し引いて考えたとしても、現代まで残されてきたどの曜変天目茶碗よりも、優れているくらいではないだろうか。
これにより、また各国の科学者や研究家が分析を期待しているが。仮にも皇室への贈答品であるため、その扱いについては色々と慎重な意見が出て揉めている。
何にしても、贈答品が好意的に受け止められたということには、違いが無いのだが。
今日は、白峰は宮内庁より託された親書と贈答品を届けに来た。贈答品は日本伝統の工芸品であり。親書は日本語とイシュテン語で、末永い友好を共に願う内容だそうな。
時刻はもう夕方を過ぎた。ゲートを抜けて、日本へと帰る時間だ。帰りの馬車の中で、白峰は王都の人達にも、日本の品が喜んで貰えたらよいなと思った。
「シラミネさんも、すっかりイシュテン語が上手になりましたよね」
唐突に、ミィレから声を掛けられた。
白峰は、彼女に顔を向けて、小さく笑みを浮かべた。
「そうですか? ミィレさんにそう言って貰えると、嬉しいです。我ながら、結構頑張ったつもりでしたから」
くすりと、ミィレが笑う。
「お嬢様とも、随分と張り合ったみたいですものね」
「確かに」
特訓時のことを思い出し、白峰は苦笑を浮かべた。
「でも、ミィレさんにも色々と教えて貰いましたから。有り難うございました」
「いえいえ。お役に立てて何よりです」
でも、そうなるとひょっとしたら、彼女との勉強の時間は減ってしまうのだろうか?
「あ、でもシラミネさん」
「はい。何でしょうか?」
ミィレは少し恥ずかしそうに、自分の胸の前に手を組んだ。
「あの。出来れば、準備が整ってからでいいのですが。代わりに私にも日本の言葉を教えて貰えないでしょうか? 少しずつでいいんです。お嬢様にも言われて。お嬢様以外にも、話せる人が増えた方がいいからって。自信は、あまりないですけど」
「はい。分かりました。出来るだけ、期待に添えるように考えます」
「有り難うございます」
確約は出来ない。けれど、なるべく希望に応えたいのは本心だ。だからせめて、それは伝わって欲しいと思う。
「あ、そうだ」
ふと、思い出す。
「どうかしましたか?」
白峰は頷く。
「言葉が通じるようになったら、こっちの人によろしく言っておいてくれって言われていたんでした」
「そうなんですか?」
「ええ、まあ。だからじゃないですが、言葉も通じるようになったので、まずはミィレさんに言いますね。『これからも、よろしくお願いします』」
ミィレも、微笑む。
「はい。私達の方こそ『これからも、お付き合いよろしくお願いします』ね」
どうか、今後もこの交流が友好的に続きますように。
次回から第二部になります。
よろしければ、今後ともよろしくお願いします。
「この異世界によろしく」の物語はこれからだっ! いや、マジで終わりまでの残りの見積もりに目眩がしているんですけど(汗)。
ここまで書くのが最低限の目標だったんだけど。でも、ここまで書いたら「完結させる」まで、遣り遂げたいです。
第一部完ということで、今回の後書きはちょっと長めです。
まあ、あくまでも第一部だの第二部だのは、個人的な区切りでしかないのですけどね。
ちなみに、次回からはマスコミ関係をテーマにお送りしたいと思います。
がっつり、魔法に入るのはその後かなあと。
ただ、ちょっとだけしばらく休ませて下さい。だいたい、年明けくらいには戻ってくる予定です。
マスコミ編もその後の章も、その後も大雑把には展開が決まっているのですが、詳細を固めたいのです。
そんな感じで、来年一年分くらいのネタをイメージ固めておきたいなあと。
申し訳ないです。
ちなみに、もし色々と書けなくなったとしても、エタるような打ち切り方はしないつもりです。
ストーリーの構成として、ここまで書いたら、最終章に相当するような話はいつでも持ってくることが出来る様にしているのです。なので、それを書くことである程度、綺麗に収まりが付いた形で物語を締められるようにしています。締められるはず(汗)
逆に、ここから先はオムニバス的に出来る部分でもあるので、やろうと思えばいつまでも続けられたりもします。
それでは、今回はこれで失礼します。
次回からも、よろしくお願いします。