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この異世界によろしく -機械の世界と魔法の世界の外交録-  作者: 漆沢刀也
【ファーストコンタクト編】
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アサ=キィリン秋葉原に立つ

アサ=キィリンがゲートを抜けると、そこは不思議の街でした?

時系列的には、白峰とゲートで擦れ違ったところからになります。

 ゲートから来訪してきたのは、濃紺の服を身に纏う若い男だった。歳は二十代半ばくらいだろうか?

 ゲートの前に並ぶ、衛士達の服装とは大分異なる。また、アサが知るどこの国の服とも異なっていた。強いて言えば、自国を含め近隣諸国の高級軍人の軍服から、装飾を取り除いたものに近い気がする。

 だが、その若い男を軍人とは思えなかった。軍人にしては、鍛え方が足りなさすぎる。衛士風の男達の方が、遙かに醸し出す雰囲気はそれらしい。


 まあ、当然ではあるか。そう、アサは判断した。

 ゲートの向こう側から来訪してきた若い男も、自分と同じ立場の人間ということだろう。折衝役ということだ。実際、彼が纏っていた服も礼装としての品格を備えていたように思う。

 すれ違い、一瞥しただけだったが、彼の印象は悪くなかった。人の性根というものは面構えや視線に出る。だからそこを見逃すなというのが父や母からの教えだった。

 その点で、彼を信頼出来そうな人間だと判断した。


 ゲートを通過し、アサは「異世界」へと訪れた。

 「これはまた、随分と想像外のところだ」と、彼女は思った。

 伝聞では聞いていたものの、実際に目の前に、天を貫くかのような高さの建物が建ち並ぶ様は圧巻だった。こんな街は、彼女の世界のどこにも存在していない。

 強大な力を持った世界だと、伺い知れる。


 それにしても、と思う。

 あの、少し離れたところの高い建物に描かれた可愛らしい女の子の絵は何なのだろう? あのように大きな絵画として描かれるような、著名で高貴な娘がこの世界にはいるということだろうか?

 それにしては、股部に縞々模様の下着らしきものを見せているあたり、どうも違うような気がする。この世界の文化傾向がよく分からない。


 ふと、彼女は違和感を覚えた。

 この世界、何かがおかしくないか? あるべき何かが足りない?

 そして、直ぐにその違和感に気付く。


"まさか、神がいない?"


 そんな馬鹿なと思いつつ、アサは髪留めに手を伸ばした。だからといって、それで何が分かるわけでもないのだが。気休めにもならないが、本能的なものだ。

 魔法の類を感知する髪留めからは、一切の反応が伝わってこない。彼女の世界では、そんな事はあり得ない。神の御心、即ちマナを精製した品がそこらにある街は勿論のこと。世界中にマナが満ちているのだから。

 この髪留めは、攻撃的なものではないし、念のための護身として身につけてきたのだけれど。

 この事態をどう考えればいい? 暇乞いをして、逃げ帰るか?


 そんな僅かな逡巡に気付いた様子も無く、こちらの世界の衛士の中から、一人の中年女性が現れた。傍らにはその上司と思われる初老の男が立っている。

 彼らの服装もまた、あの若い折衝役と通じるものがあった。

 中年女性が素早く近付き、何事かをしゃべりながら、こちらの両腕に触れた。上へと力を込めてくる。手を上げろということか?

 アサは素直に従った。

 それでよし、と言っているかのように、女性は微笑み、頭を下げた。何となく、雰囲気が侍女長に似ていると思った。


 ペタペタとこちらの体のあちこちに手を触れてくる。それで、アサは彼女の目的が何かを察した。ボディチェックか。

 続いて、先に丸い輪っかの付いた棒で体近くをなぞる。だが、これはよく分からない。これもまたボディチェックの一環だと思うが、神のいない世界で何をどうやって確認したというのだ? この棒は、魔法の品に近いものを想像させるのだけれど。


 それが終わると、彼女は輪っか付きの棒を男に渡し、こちらかを見て横を向いた。手を開いて腕の先を彼女の前に向ける。その腕の先に視線を向けると、そこには黒塗りの物体が、扉を開けていた。

 その姿に、彼女はまたも当惑した。

 車輪が備え付けられていることから、それが移動するための乗り物だというのは、何となく想像が付く。だが、それを引く人も馬もいないのにどうやって移動するというのか?


 いや、一つだけ可能性を思い付く。

 これはつまり、機械的機構が高度に進化したその先の結果によるものではないだろうか? その仕組みは、さっぱり分からないけれど。この世界には神がいない。故に、機械を発達させることでその文明を発達させてきた世界という可能性がある。


「面白い」

 彼女は呟いた。それが、彼女がこの世界に来て初めて発した言葉だった。彼女以外、その言葉の意味をこの場の誰も理解は出来なかっただろうが。

 アサは胸を張り、大きく笑みを浮かべた。

 面白い。興味深い。この世界のこと、まずはよく見させて貰おうじゃないの。


 中年女性の誘導に従い、その後に続き、黒塗りの車の中へと乗り込む。革張りのシートは柔らかかった。

 中年女性が乗り込むのも確認して、前の座席に座る運転手がレバーを操作した。

 馬のいない車が動く。

 そのスピードは、馬よりも遙かに速かった。

アサが見た、看板でパンツを見せている女キャラクターの台詞イメージ。

「はい、異世界のお嬢様にパンツを見られても、はるにゃんは大丈夫です!」

……やっぱり、大丈夫じゃないなこれ。


次回は、アサがとっても偉い人と会います。

あと、魔法の設定については、ちょろっとだけ出したけど、まだ細かいところを調整しないとなあ。

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