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この異世界によろしく -機械の世界と魔法の世界の外交録-  作者: 漆沢刀也
【交流拡張準備編】
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雑談:異世界関連事案総合対策室

異世界関連事案総合対策室の雑談。

モブだって、頑張っているんだよ?

そう、例え名前も与えられず、台詞の書き分けされなくても。

 異世界関連事案総合対策室の片隅。

 今日も今日とて、次から次へと出てくる仕事に追われつつ、彼らはキーボードを叩いていた。

 そのうちの一人が、んっと背筋を伸ばした。少し気分転換がしたい。もうすぐお昼だし、少しくらいならばいいだろう。


「なあ、そういえば昨日、月野さんが広報にお願いしていた写真の件、あれどうなったんだ?」

 ちょっと気になっていたことを右隣に訊いてみる。息抜き雑談のターゲットとして選択。

「あれ? 君聞いていないの? あれは結局、広報が月野さんにカメラだけ貸し出すことになったんだよ。写真は全部、月野さんが撮ってくれって」

「え? 本当に? 何でまた?」


「広報も広報で、そっちに割ける人間がいないからだよ」

「なるほど。でも、広報のカメラってあれ、結構いい値段する奴だよな? レンズもでかいプロ用の。そんなのを貸し出す方も貸し出す方だけど、月野さん扱えるのかな?」

「そこはまあ、カメラも優秀だから何とかなるってさ。それに、月野さんなら何だかんだ上手くやるでしょ。あの人、ああ見えて色々と器用だし」

「まあ、そうかも知れないけど」

 人間関係以外はな。と、内心ツッコミを入れるが。


「広報も、凄いのに嫌な顔していたけどな。これ以上仕事増やすのかって」

「ああ、今は白峰君が持ち帰ってきた本をwikiにアップロードする作業で手一杯なんだっけ?」

「そうそう、そこに今度はあの異世界のお嬢さんの写真もアップロードする仕事も追加されたわけだ。じゃあ、写真くらいは撮ってきてくれってなるわな」

「確かに」


 ちなみに、これも暫定ではあるが、外部発信についてwikiを新規に構築するというのも、そこに至るまで少し揉めたそうである。

 最初はシステム開発会社に、ホームページの拡張を頼もうとしたのだが、「これまで通りのお役所のルールで、いちいち画面ファイルのテストをやってとか到底出来るか」と猛反発を食らったとか。

 で、「そうまで言うなら、wikiを構築するためのサービスを探すから、それで記事を自由に編集してくれ」と、そういうことになった。


「まあ、それはそれで大変だけれど、新ネタを提供できる分、マスコミからの要求もちょっとは和らぐだろうし、いいんじゃないか?」

「まあなあ。連中もしつこいよなあ。比較的安全そうだって分かった途端に、今度は異世界に行かせろときたもんだ。今はまだ、それどころじゃないってのに」

「特に、NTK(日本テレビ協会)ですか?」

「そうそう。民放じゃないからって、それだけでさも国を代表する報道機関のような顔されてもなあ。そんなことで、特別扱いなんて出来ないっての」


「それで、今度は外務省が情報統制をしているんじゃないかとか言っている人も出ているみたいですしねえ。国家権力の横暴だとかそんな論調にすり替えていって。そんなことしていないってのに」

「国家権力を監視することと、国家権力に反発することを混同していないかね? あの連中?」

「ネットでは、逆にそういうマスコミやコメンテーターに対する反発の声も大きいのにな?」

 やれやれと、溜息を吐いた。

「でも、向こうに行ってみたいって言う人達。マスコミだけじゃないですよね?」

 今度は左隣から声を掛けられた。


「そうそう。世界中の学者連中が、政府機関を通じてそんな話言ってくるんだものな」

「向こうに行くだけで、新発見の宝庫になりそうですからねえ。そりゃあねえ」

「物理学者は向こうの魔法の解明について興味津々。地質学者や天文学者も、金属が本当に少ないのか。それで星の構造がどうなっているのかとか調べたいと言い出すし。栄養学の先生も鉄分の摂取がどうなっているのか気になると。歴史学者も、金属加工技術なしでどう技術や科学が発達するのか知りたい。生物学者も、向こうの生物観察したい人、採集したい人、ゲノム情報を解析したい人。まあ、次から次へと」


「気持ちは分かるけど。政治的に国際的な調整も無しにやれるかっての」

「他にも製薬会社とか、向こうの世界の生き物で、何か有効な成分が見つからないかとか期待しているようだし」

「食品会社もな。新しいパンや酒の酵母を手に入れられないかと躍起になってる」

「それも、生物災害(バイオハザード)が恐いから、持ち込み、持ち出しをきちんと管理しないとダメだってのに。それをどうするかまだ何も決まってないっての」

 それも含め、いつになったらこの仕事は終わることやらと。

 自分達のような下っ端もそうだが、各省庁や各国と調整しなければいけない上層部は、更に頭が痛いことだろう。


「あとは、ネットで技術者か? 魔法工学とかいうキーワードを持ち出しては盛り上がっているな」

「一体何を作るつもりなんだよ連中? 面妖な、変態技術者どもめ」

「知らねえよ。とにかく、だから魔法関連の知識とかも欲しいとか、そっち方面の教科書も持って来いとか言ってる」

「白峰君も、もう一人じゃ持ち帰れないから、そういうのはゲートで直接渡して欲しいって言ってたな」

「まあ、仕方ないよな」

「wikiにアップロードする予定の書籍、どんどん増えてるみたいだし?」


「もうさ、あっちの世界の大学がやっているように、こっちもバイト雇った方がいいんじゃないか? 丁度、大学も夏休みだし。学生に頼めば来るだろ。いっそのこと、向こうみたいに、大学に預けてもいい」

「そうだな。後で提案してみるか」

「ああ、書籍で思い出した。出版業界を初めとしたエンターティメント関係の業界も、注目しているみたいだな」

「え? 何で?」


「向こうの文学作品やベストセラーとかから、新しいネタを持ってこれないかって。面白い話があれば、翻訳しただけで売れるかも知れないだろう? ジョーク集でも最初は需要あるだろうし」

「ああ、なるほど」

「そういえば、白峰君が持ち帰った、異世界の国際ジョーク集とかもwikiで人気があるんだっけか?」

「そうそう。翻訳機から解析されたデータで、あちこちの大学や研究者から訳されてな」


 こんな具合に、wikiに上げておけば、翻訳までは勝手に有志によってミラーサイトで翻訳される。有志は、少しでも更新者として名前を残そうと、張り合っている状態だ。

 イシュテン語についても、既に辞典の編纂がこれまたwikiで行われている。教科書の作成に乗り出した学者もいるらしい。

 正直言って、外務省としては大いに助かっているが。翻訳を省の仕事としてやるには、仕事量が膨大すぎる。書籍をスキャナーで読み取ってアップロードするだけで手一杯だ。


「料理のレシピとかも好評らしいな。異世界風カレーとか? 何か、早速真似する店もあるようだし」

「香辛料がどうなっているのか分からないけど、スープカレーを吸水性のいいスポンジのようなパンに吸わせて食べるんだっけ? 白峰君によると、日本のカレーに比べて、胡椒か唐辛子か、そういう香辛料がそれぞれ存在感を出していたそうだが」

「食パン使ってやってみたけど、俺は嫌いじゃなかったぞ?」

「君、やったのかよ」

「普通のカレールーだけどな?」


「まあ、でも最初はこんな具合に食べ物から交流した方がよさそうだよな?」

「この辺、ジョークじゃないけど、日本人も食べ物に拘る国民だよなあと思うわ」

「いいんじゃない? その分、あちらと仲良く出来そうだし」

「違いない」

 笑いが漏れた。


「あ、そういえば、こっちの観光ガイドマップみたいなものって、用意どうなっているんだ? あっちの人に渡す用の」

「適当に、市販のものを購入してる。翻訳は、仕方ないから白峰君に向こうに持っていって貰って、説明しながらあっちの人に訳して貰う手はずだ」

「なるほど。それはそれで大変そうだな」

「まあ、詳細な説明まではしなくて、有名どころの名前だけを押さえておけば、しばらくは大丈夫だろ」

「だといいけどな」

「向こうのガイドマップも、今日、白峰君が持って帰ってくる予定なんだよな」

「ああ」


「マスコミ対策はどうなる?」

「まだ、詳細決まっていないけど。こればっかりはマスコミと国民に徹底してお願いするしかないだろ。囲み取材みたいな真似は厳禁だとな。あと、勝手に写真を撮るなって」

「それについては、付き添いを警察かどこかにお願い出来るかな?」

「そうだな。多分、必要だな」


「一応これも視察ということで公務だから、変な取材の仕方とかで行動を妨害するなら、公務執行妨害も適用できる。その説明もマスコミと国民向けに追加で」

「公務執行妨害も適用できるって、そうなのか?」

「ああ。法律関係に進学した知り合いに聞いたことあるんだよ。公務執行妨害は、公務員に暴行とか恐喝が行われたら成立する。んで、この場合の暴行は、いわゆる暴行罪とは違って、もっと広義に捉えられるんだと。だから、殴るとかじゃなく、ムカついて水ぶっかけても成立するし判例もある。要するに、公務を滞りなく遂行出来る様にするための法律だから。だそうだ」

「へー」


「あと、入出国在留管理庁にも協力を頼んでるんだよな。あれどうなってたっけ?」

「まだ、調整中だ。担当が決まらないそうだ。まあ、もうちょっと余裕あるだろうから、もうしばらくは催促はしなくていいだろうけど」

 向こうも向こうで、準備は必要だろう。

 それに、異世界側でも準備が整わないことにはどうにもならない。


「しかし、何だかんだで向こうと行き来するための情報が出てくると、自分でも行ってみたくなるよな」

「確かにな。飯、美味いらしいし?」

「ガイドブックにどんなものが載っているのかも、興味湧くよな」

「あーあ、俺も早く異世界に行ってみたいもんだ」

「だなあ。ま、そのためにも今はこの山のような仕事を一つずつ片付けるしかないけど」

「いつか終わることを信じて、か」

 取りあえず、昼飯を食ったら、また頑張りますかねっと。

 そんなことを彼らは心の中で誓った。

魔法工学とか、早く書きたいなあ。

あれやらこれやら考えているし、そういうのを出したくてこの話のネタ考えたんですけどねえ。というか、それもメインになるはずだったのですが。

あと、1話か2話くらいで、番外的な視点も終わって、白峰達の方に視点が戻るはず。

公務執行妨害については、解説している弁護士の説明とかを色々と漁って解釈した限りでは、合っていると思いたい。

料理については、今後も似たような脳内料理を書くことあるかもですが、味は保証しません(おい)。

あまりに酷そうだったら、試作するようにするかもですが。

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