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魔法の脅威

魔法の威力についてちょろっと見たところで、今後どうするかの会議

 プツリと、動画が止まった。

「――以上になります」

 有島の声と共に、スクリーンに映し出された映像は消え、代わりに会議室に灯りが点いた。

 異世界関連事案総合対策室の一同から、これで何度に目になるのか分からないが、唸り声が響いた。


 それもまた、無理の無いことだと有島は思う。何しろ、魔法である。光弾を撃ち出し、バリアで攻撃を防ぐという、アニメや漫画、ファンタジー小説でしか繰り広げられてこなかった現象が、現実に目の前に起こっているのだから。

「取りあえずだ。あちらで、ゲート付近にいる人達の装備の威力は、これまで見てきた動画の通りである。そう考えてよい。ということかね?」


 有島は頷いた。

「はい。見たところ、威力に関してはこちらの機関拳銃と大差ありません。暴徒の鎮圧という目的を考えれば、そのくらいの威力で十分である。ということかと思います」

「防弾服で防ぐことは可能だろうか?」


「あくまでも、『効果が機関拳銃と同じである』。そういう条件であれば、可能かも知れません。ただ、試してみないことには分かりませんし、その機会は当分の間は得ることは難しいと思いますね」

「ほう? 有島にしては、断定出来ないのは珍しいな。何か引っ掛かるところでもあるのか?」

 桝野の問い掛けに、有島の代わりに白峰が手を挙げた。


「失礼します。有島さんの代わりに、自分が少し説明させて頂きます。自分はこの分野の専門知識はありませんが」

 白峰の前で、一同が怪訝な表情を浮かべた。

「ええと、まず今この会議室にいる方の中で、創作物の話でいいです。魔法がどんなものか詳しい方はいらっしゃるでしょうか? そういうものをテーマにした物語とか、そういうものを知っている方という意味で」

 そう訊くと、彼らのほとんどは首を傾げた。


 一人が、手を挙げてくる。

「あー、僕の孫娘が魔法少女のアニメとか大好きなのだが、そういうのでもいいかね? それくらいなら知っている」

「あ、それなら私も映画とかなら見たことはあるぞ? だいたい、これもそういうものだろう?」

「うちの婿も、好きらしいなあ」

 そんな声があちこちから湧き上がる中、白峰は続けた。

「ええと、つまりはみなさんは魔法というものも、要するに銃弾と同じものである。そうお考えだということでしょうか?」

「違うのかね?」


 白峰は頷いた。

「いえ、これはあくまでも可能性なのですが。それで、自分の友人もまた、そういった創作物が好きな人間で、その彼が好きな作品の一つが、また魔法に対して詳細な説明がある代物なんですよ。そして、その作品に出てくる魔法というのが、つまりは物理法則から逸脱した概念の数々なんです」

「つまり? 君は何が言いたいのかね?」


「はい。この、彼らが使っている魔法もまた、物理法則を逸脱した結果であるという可能性があるかと。そうなると、つまりはそんな物理法則とは無関係に『問答無用で対象を破壊する』概念という可能性があるのかも知れない。ということです。つまりは、物理法則に縛られた防弾服なんて意味が無い。そして、その魔法を防げるのは、同じく魔法のみであると」

「なんだとっ!?」

 白峰の説明に、どよめきが湧いた。


 それに対し、有島が咳払いをする。

「いえ、あくまでも可能性です。この手の問題を考えるときは、常に最悪を想定しないといけません。その原則に従うならば、こういう可能性も考えておいた方がいい。そういうことです」

「では、逆にこちらの攻撃に対して、あちらのバリアが無力であるという可能性もあったりするのか?」

 有島は首を横に振った。


「その可能性は、有り得るとは思いますが、低いでしょう」

「何故だ?」

「あちらの魔法というものが、どのようにして発達してきたのかは分かりません。ですが、弓や投石のような攻撃が、あちらの世界に無いとは考えにくいのです。そんなものも防げない防壁など、意味がありません。なので、そこは防げるようになっている可能性が高いと見ています」

「つまり、最悪あちらには、こちらの防御は一切通じず、またこちらの攻撃も一切通じない。魔法というものがそういうものであるという可能性があるということか。考えたくはないが、こちらに攻め込まれるようなことがあった場合、もしくはこちらから攻め込まなければならなくなった場合、勝ち目はあるのかね?」

「それについては、今後も、ここでの話も含め、深く考えていかなければならない問題ではあります。ですが、私個人の意見としては、大雑把な予想として、防衛であれば十二分に勝ち目があります。それに対して、攻め込むのはあまり現実的ではないでしょう」


「どういうことだね? まず、どうやって守るというのか?」

 有島は頷いた。

「まず、彼らの使ったあの魔法の特徴として、恐らくですが射程が短い。高い精度を持って遠距離の攻撃は出来ません。これは、機関拳銃も同様ではありますが。ですが、人が意志をあのような形で伝え、構えて発動する以上は、狙撃のような真似は難しいと思われます。また、あの防壁の展開も、即座に事態に対応するには時間が掛かっています。つまり、超長距離からの攻撃に対して脆いと考えられます」


「そうか。つまりはスナイパーや、それこそ長距離攻撃が可能な兵器を使えば――」

「はい。その通りです。尤も、楽観的なことを言ってしまうならば、こちらの世界では魔法そのものが使えない。故にあちらからの武力侵攻は不可能。そういう可能性もまたあるわけなのですが」

 そう言って、有島は肩を竦めた。

「では、次だ。こちらからの侵攻が困難である理由は?」

「はい、これも単純な理屈です。こちらとあちらを行き来出来るゲートが、人一人が通れるサイズしかありません。ですので、効果を発揮するであろう大型兵器を持ち込むことが出来ません。また、仮に陸上歩兵部隊だけで攻め込むにしても、武器弾薬を始めとして補給が必要になります」


「なるほど。これは確か、以前にも君に説明を聞いたことはあったが、その認識に何も変わりは無いということだな」

「はい、その通りです。いえ、むしろより困難であることを確認出来ましたね。あちらには魔法があるということ。白峰君の説明によると、この魔法にはそういった補給が必要無い可能性が高いです。手段も限られた上で、無限に弾薬を用意出来るに等しい物量の相手に侵攻をするのは、かなり厳しいですね。また、そういった戦い方の経験では、あちらの方が上でしょうから」

「それに、彼らの魔法というものが、今日見たものの範囲に収まるとは限らないしな。こちらには機関拳銃の他に、狙撃銃や兵器があるように、向こうにも更に大威力を持った魔法の武器や兵器があるとも限らん。そして、そういうものは、あちらも伏せていることだろうし」

 一様に、会議室の面々は頷いた。


「では、次の話に移りましょうか。我々はこれを踏まえて、彼らとどのように向き合うべきだと思いますか?」

 今日の会議も、長くなりそうである。

次回は、異世界サイド

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