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銃と魔法の見学者

行政についての軽い説明回。

 装備について確認し合う日が決定したその翌日。または、確認し合う日の前日。

 ティケアから「会って貰いたい人たちがいる」ということで、 白峰はその日も午後の言語習得についてはそこそこに切り上げることになった。

 ニュアンスでしか分からなかったが、会わせたい相手というのは、この街を統べる責任者達のことらしい。そして、その人達が明日の情報交換会での見学者だという。当日、全くの面識が無いよりは、有った方がいい。また、ひょっとしたら今後ともお付き合いが必要になるかもということで、白峰も了承した。


 ふと疑問に思い、アサやティケア達は責任者と違うのかと訊いたが、少し立場が違うようだった。

 彼らは、この国の中央、王都とこの街との間を繋ぐ役割をしている。そういう意味では、より国に近い。

 それに対して、これから会う相手は、この街、地域の統治を実質的に行っているという話のようだった。

 つまるところ、アサの家はは古くからこの地を統べてきた領主であり。そして、やっていることは県知事のようなもの。対して、これから会う相手はこの街の市長のようなもの。そういう事なのだろう。


 建物の中を案内され、その奥の部屋へと向かう。

 考えてみれば、この建物もどこか雰囲気がそういう、市役所に通じるものがあるような気がした。アサやティケアが自分を招いた屋敷の外装も、そして会談に使用している部屋も、装飾には凝っていた。

 それに対して、この建物の外装は至ってシンプルなものだった。それと、入り口から入って脇の通路の奥に、長いカウンターと長椅子が用意された部屋が見えた。こういう部屋がある施設は、病院とか郵便局とか、それこそあとは市役所のような場所ぐらいしか、白峰には思い浮かばない。


『こちら です』

 翻訳機から音声が流れる

 この建物の職員だろうか? 自分とあまり歳が変わらないように見える男性。案内役の彼が、部屋の戸を開けた。

 部屋の中には数人の男女が、既にいた。年齢はいずれも、ティケアと近いようだった。

 何故こんな真似を? と、ティケアにも訊いたが。要するに彼らもまた、一目異世界の人間というものがどういうものなのか、その目で確かめたい。そういう事のようだった。


『この 彼 ―― ―― 人間 です』

 ティケアが、こちらに手を向けて、彼らに紹介した。

 それに続いて、白峰も自分に手を当てた。

「こんにちは。白峰晃太です」

 イシュテン語で挨拶をすると、彼らは少し驚いたようだった。

『私達 言葉 分かる のか?』

「少し です」

 軽く微笑んで、白峰は答えた。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 何事も無い。というのは、それはそれで大変結構なことではあるのだが。

 毎日毎日、こうしてゲートの前で一日中突っ立っているとというのも、なかなかに辛いものがある。そういう意味では、根を上げずにこうして職務を遂行している機動隊員達、つまりは突っ立っている仲間は偉いなあとか有島は思う。自分も含めてであるが。

 と、桜野がゲートから離れ、こちらに近付いてきた。


「あの、有島さん。ちょっと、お伺いしたいのですが」

「どうかしましたか?」

 有島は小首を傾げた。

「いや、別にどうかしたというほどの話でもないのですが。彼ら、魔法を使うらしいんですよね? あの錫杖を使って?」

「そうらしいですね」

「どういうものだと思いますか? あるいは、そういうところについて、あの若い外交官の人、情報を持って帰ってきたりしているのでしょうか?」

「その情報については、詳細は不明です。まあ、何かを撃ち出して敵を攻撃するという、それこそテレビアニメの世界のもののようですが? 誰からも聞いていませんか?」


 そう訊くと、桜野は困ったように顔をしかめた。

「いや、そういう話は聞いているのですが。もう少しこう、それ以上に何か無いものかなと思った次第でして」

「残念ですが、ありません。だからこそ、そこを明日確認するんです。ゲート越しですが、我々も見学出来るわけですし」

「我々の手に負えるようなものだったら、いいんですけどねえ」

「それは、あちら側もそう思っているでしょうね。詳細は不明ですが、白峰君が初めて向こうに行った日は、市中で人影を見なかったそうです。おそらく、こちらと同じように区画封鎖を行っているのでしょう。安全は確認したい。だからこそ、我々の力を推し量るための材料が欲しくて、こういう話になったのですよ」


「まあ、そうなんでしょうね。実際、我々も気になって仕方ないわけですし」

 それもあって、念のためということで、自分にこうして新たな情報が無いか探りに来た。そういうところか。

「あと、公開する手はずも、予定に変更は無いんですよね? 今のところ」

「ええ、ありませんよ?」

「彼ら、過剰にこう……我々のことを脅威だって思わなければいいんですが。あまり、恐がらせたくは無いんですよね」


 情報交換の結果、更に武力の集中がエスカレートし、緊張状態が悪化しては元も子もない。その点では、彼らのことを脅威だとは思いたくないし、また思わせたくもない。それが、桜野の本音だろう。

「それについては、私も同感です。ただそれすらも、明日の結果と、その後の交渉次第ですね」

「有島さんは、どう思います? 上手くいくと思いますか?」

「勝算はあると見ていますよ」


 ただ、その結果、場合によってはそれで桜野と向こうの隊長との交流がそこで途切れてしまうことになってしまうかも知れない。彼らが楽しそうに雑談する姿を見ているだけに、その可能性については、有島は言い出せなかった。

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