表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
207/279

帰郷:白峰晃太(2)

今回の話で出てくるキャラ、過去に名無しで存在だけはちょろっと出していたんだけど。

どれだけの人が覚えていてくれたのだろう?

 両親は、平日なので仕事に出かけている。

 地元には、連絡を取っている友人達はいない。彼らも、進学と共に、地方からあちこちへと飛び立っていった。

 そんなわけで、こちらに来て絡める相手はいない。特に、今の季節は誰も帰省していないだろうから。しかし、一日中、家に籠もるというのもつまらない過ごし方のように思える。


 なので、折角の花見の季節だということで、散歩がてら桜を見に行くことにした。一人で。行き先は、家を出て電車とバスを乗り継いで、少し離れたところにある公園だ。

 気楽にぶらっと、と考えていたのだが。


 白峰は目を細める。やっぱりこれ、勘違いじゃないよなと。

 移動の途中で、妙な気配を感じるようになった。尾行されている。

 こういうのも、一種の職業病というのだろうか? などと、白峰は思う。

 家風的なものもあって、幼少の頃から常在戦場の精神を叩き込まれた。そして、国外で研修を受けたこともあり。屋外に出たときは常にどこか、警戒を怠らないようになっていると思う。


 同じ花見目的の人間がいるのだと考えれば、たまたまつかず離れずということもあるだろう。そんな具合に、意識しすぎの可能性もあるのだが。だからといって、こうもぴったりと後ろに、あるいは横に近付いてという真似はしないと思うのだ。

 公園がある駅の出口を抜けたところで、白峰は振り返った。特に、剣呑な気配でもないので、おかしな事にはなるまい。


 果たして、姿を確認すると、そこには若い女が立っていた。年齢は自分と同世代に思える。結構な美人だ。こんな美人が日中から一人で何やっているんだと、白峰は自分のことは棚に上げて思った。

 白峰が振り返るのがそんなにも予想外だったのか、彼女はその場に立ち尽くした。少しばつが悪そうな顔を浮かべている。

 どういうことだ? と、しばし白峰は小首を傾げて。

 まあいいかと、先を急ぐことにした。踵を返し、その場から離れようとする。


「ちょっ!? ちょっと待って下さい」

「はい?」

 突然、目が合った女から声を掛けられ、再び白峰は振り返った。

 小走りに、女は白峰の脇へと寄ってくる。


「ごめんなさい。あなた、ひょっとして、白峰っていう名前だったりしますか? 私が高校の頃にクラスで一緒だった人に似ているんです」

「ええと? はい、自分は白峰ですけど? 高校で一緒?」


 どうやら、知っている人間だったらしいと、白峰は少し安堵する。

 しかし、一方で別の問題が発生した。誰なのか全然分からない。当時の女子達と別段、絡むことは無かったので顔そのものをろくに覚えていなかったりする。

 それでなくとも、化粧を覚えたりとかで、この年頃の女性の変化は激しいものだから、尚更分かりにくい。


「あー。その反応。覚えてないんだ? まあ、私達、ほとんど話したこと無かったから仕方ないとは思うけどさ。人違いじゃなくて、よかったけど」

「ごめん。本当に分からない」

 今度は、白峰がばつが悪そうな顔を浮かべる番だった。


「麻見よ、麻見真紀。思い出した?」

 あっ。と、白峰の脳裏に閃くものがあった。言われてみれば、彼女には当時の面影があった。


「ああ、麻見さん? え? マジで? あの麻見さん?」

「あ、思い出してくれた?」

「名前を聞いたら。仕方ないだろ? さっきも言ったけれど、自分達ほとんど話したことが無かったんだから。自分に覚えがあるのって、麻見さんが『困るわ-。男の子にモテすぎて振るのに困るわー』って愚痴ったことがあるくらいだよ? まあ、他にも数回くらいは話したことあるかも知れないけどさ」


「そんな言い方してないでしょ!? 確かに、内容的にはそんな感じだったかも知れないけどさ」

 彼女が唇を尖らせる様子を見て、白峰は微苦笑を浮かべる。少しだけ、懐かしいものを感じた。地元に戻ってきたという実感のようなものを。

「でも、麻見さんはよく自分の顔が分かったよね? 自分、そんなに変わっていないように見えるの?」


「風の噂で、外務省に就職したって聞いていたから。それで、去年にあの騒動でテレビに出たでしょ? あれ見ていたから」

「なるほど」

「あのテレビ見たとき、私本当に驚いたんだからね? あの人、何やっちゃっているの? って。女子達の間でも話題になっていたんだから」


「あー? そんなに? あの後、母親も電話でうるさかったんだけど。自分としては、ただ単に仕事で担当になったっていうだけなんだよ。そんな感覚。勿論、あの時言ったやり甲斐みたいなのは本当に感じているけどさ」

「白峰君、昔からどこか感覚ズレていると思っていたけど。今度のこれも、完全に麻痺していると思うよ?」


 麻見の指摘に、白峰はしばし虚空を見上げ。

「まあ、確かにそうかも知れない」

 素直に頷いた。

 短いですが、場面や展開の都合で今週はここで切らせて下さい。

 あと、今年はちょっと早いですが、来週から例年通りの、プロット調整用の休載期間にさせて下さい。

 来年の年明けから、再開予定です。でも出来れば、この後の白峰と麻見との話くらいは、年内に出しておきたいと思っています。

 ただ、年が明けても4月くらいまでは投稿が不安定になるかも知れません。応募作の執筆に集中したいので。

 それが終わったら、元のペースに戻ると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ