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【外伝的小話】堕ちた女達

以前にも前書きで書きましたが。

これを書いている奴に、サブタイトルがこれでもエロを期待してはいけません。


ちなみに、クムハ夫妻の話は時系列的には前話よりも少し前の話となります。

いっその事、ほとぼり冷めた頃にこのエピソードを移動させた方がいいかも?

CASE1:クムハ=ハレイ


 最近、妻の様子がおかしい。

 彼女の夫、リンレイは焦燥感を抱きながら、妻の変化を整理する。無言で厨房に立ち、洗い終わった食器を磨きながら。


 まず、上の空になっていることが増えた。ご飯を食べたり、娘の世話をしているときも、ちょっと目を離した隙に心ここにあらずといった姿を見せている。

 一方で、妙に落ち着かない姿も見せている。そわそわと、まるで何かを待ちきれないかのように。そして、そんな姿を見せたときには、ほぼ決まって、外に出ては空を見上げるのだ。とても、切ない表情を浮かべながら。


 妻とは長い付き合いだ。職場結婚で、結婚する何年も前からの顔見知りだし、結婚してから娘も大分大きくなってきた。

 だというのに、妻があんな。そう、「女」を感じさせる表情を浮かべるのは、見た覚えが無い。

 聞き捨てならない独り言も、何度か聞いた。「次はいつになったら」「もう、待ちきれない」「ダメよ。私には愛する夫と娘が。しっかりしないと」「これはそう、遊び。遊びなんだから」「でも、あんな凄いの忘れられない」。そんな独り言だ。


 大きく、リンレイは溜息を吐いた。

 状況証拠が揃いすぎている。


 元々、飛空挺乗りというのは選ばれた女性のみが就ける花形職だ。いつまでもこうして、街の片隅で小さな料理屋を営んでいるような男にしてみれば、高嶺の花もいいところだ。

 それに、彼女は器量だって悪くないし、性格もいい。子供を産み、三十歳を過ぎてもなおその体型は崩れていない。少々、突っ走る性格ではあるが、一緒にいると飽きないし気を遣わなくて、自然体でいることが出来る。


 そんな女を他の男が見たら、それはやはり、魅力的に映ることだろう。

 船乗り達の話で、港ごとに恋人や現地妻を作っているような人間の話も聞くことがある。飛空挺乗りも、一箇所に留まらず、あちこちへと長期滞在するという点では船乗りと同じだ。

 実行出来る環境は、いくらでも整っている。


「たっだいま~♪」

 店の戸が、妻の上機嫌な声と共に開かれる。買い出しから返ってきた妻は、満面の笑顔だった。

 笑顔を浮かべていることが多い妻だが、彼女がここまで笑顔を浮かべるのは、久しく見ていなかったような気がする。

 ああそうだ。結婚したばかりの頃は、いつもこんなだったな。などと、当時の記憶がリンレイの脳裏に蘇った。


「おかえり」

 ぎこちなく、彼は笑顔を浮かべ、彼女を出迎えた。

 悲痛な決意を胸にしながら。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 夜もすっかり更けた頃、ハレイは唐突に夫から「大事な話がある」と言われた。

 娘を寝かしつけて、居間へと向かう。

 とはいえ、心当たりがさっぱり無い。


 ひょっとしたら、「そろそろ二人目が欲しい」という話だったりするのだろうか? それなら確かに、夫婦間でも大事な話ではある。

 とはいえ、仮にそういう話ならハレイとしても歓迎するところである。子育ての大部分を夫に任せてしまった以上、そこは気掛かりではあるが。娘のシィノも大きくなって、そういう問題も乗り越えられるというのなら、何も問題は無い。

 それに、シィノくらいの子だと、弟や妹が欲しいと言い出しても、不思議では無い。

 ハレイは席に着いた。テーブルを挟んで、夫と向かい合う。


「何? あなた?」

「ああ。さっきも言ったけれど、君に大事な話があるんだ」

「ええ」

 夫は、とても真剣な顔をしていた。けれど同時に、今すぐに泣き出しそうな顔をしていた。


「離婚しよう」

「は?」

 全く予想していなかった切り出し方に、あんぐりと彼女の口が開いた。

 数秒遅れて、理解が追い着く。そして、一気に焦りが湧き上がる。


「え? ちょっと? 何で? どうして? 私何か悪い事した? えっと? ごめんなさい。シィノの世話を押し付けすぎて、怒っているの? それとも、まさか――」

 考えたくもなかった可能性に、ハレイは戦く。


 夫は誠実で優しく、腕のいい料理人だ。ふと立ち寄ったこの店で、味に惚れ込み、そしてやがては夫の人柄に惚れ込むような女が現れても不思議ではない。

 考えて見れば、自分はしょっちゅう家を空けているような女だ。その時間を狙って、そんな二人が逢瀬を重ねていたとした可能性は十分にある。

 自分にお淑やかさといった、女らしい色気が無いことは自覚している。そんな自分でも受け入れてくれた夫を心から愛していたというのに。


「好きな人でも、出来たの?」

 だというなら、絶対に容赦はしない。夫も、相手の女もだ。

 ハレイの心の底から、激情が燃え上がる。一方で、どこか冷静に、自分もイシュテン女だったのだなと思った。

 ぎろりと、彼女は夫を睨んだ。


「何を言っているんだ。浮気しているのは、君の方だろ」

「は?」

 何を言っているんだこの人は? 彼女の思考が一瞬、停止する。


「最近の君の様子を見ていれば分かるさ。いつもいつも、上の空で。浮気相手と会うのが待ちきれないって顔して。今日もそうだったんだろ。おかしいと思ったんだ。君が自分から買い出しに行くなんて言い出すなんて。浮気相手と会っていたんだろ。あんな、上機嫌な顔。くそっ!」

「あ~? ええええぇぇ~?」

 ハレイのヒートアップしていた頭が、一瞬にして冷えた。これ、絶対に勘違いされているやつだと思う。


「あなた? それ、誤解よ?」

「しらばっくれるなっ! 相手がどんな奴かは知らないけど。君をあんなにも夢中にさせる男なんて。畜生っ!」


「あなた? ひょっとして、少し飲んでる?」

「ああ、少しだけだけどね。飲まずにこんな話、出来るわけがないだろ」

「ああ、うん」

 半眼を浮かべ、彼女は夫の脇に置かれた杯に視線を向ける。杯の中身は空になっていた。銘柄は何が入っていたか分からないが、何となく強めの酒を一気にぐいっとやった気がする。


「えっとね? まず、あなた勘違いしているわよ? あれは遊び。遊びなのよ」

「何が遊びだよ。遊びだろうが何だろうが、浮気は浮気だろ。君がそんないい加減な貞操観念の女性だったなんて、あんまりだ」


「うん。説明間違えたわね。遊びって、そういう意味じゃないの。私も大人だから、そこはきちんと家庭と両立させるように、節度を持ったお付き合いをする気よ」

「お付き合いを続けるって、開き直る気かっ! そんな真似、許されるわけないだろう。君は人妻で、娘の母親なんだぞ」

「うん。分かってる。分かっているから。ああもう、どこから説明すればいいのよ」

 自分も少なからず動揺しているなあと、ハレイは頭を抱えた。


「とにかく、あなたが考えているようなことは何も無いのよ。私が愛している男はあなただけよ」

「じゃあ何か? つまり、君は女と浮気をしているとでも」

「全然違うっ!」

「何が違うって言うんだ」


「いい? 私が夢中になっているのは、エースっていう名前の」

「つまり、そいつが、君の浮気相手の名前か」

「だ~か~ら~っ! 違うの~っ! もう、今度一緒に行ってやりましょ? そうしたら、あなたも――」

「一緒にヤろうだなんて、そんな破廉恥な真似に誘う気か。馬鹿にするなっ!」

「何で、分かってくれないのよ~っ!」

 どうしてこんな事になったのかと、彼女は嘆いた。


 Ace In The Sky。それは、異世界の戦闘機を操縦して敵機を打ち落としていくという、リアルな映像が売りの3Dフライトシューティングゲームである。ルテシア市民に対し、IT技術に対する警戒心を解いて貰うために持ち込まれたテレビゲームの一つだ。


 飛空挺乗りであるクムハ=ハレイとしては、そんなゲームがあると聞かされれば気になって仕方ない。

 そして事実、一度やってみたら彼女はその虜になってしまった。毎日、そのことばかり気になるというものだ。


 とはいえ、プレイ希望者は多いのでそうそう何度もプレイ出来ない。そして、こういうゲームに夢中になっているとは、バレたら妻として体裁が悪いかなと思い黙ってしまったのだ。

 あと、二回目の予約を確保出来たのが、今日の買い出しついでである。その予約を取る為の機会を伺っていた。

 そんな話が夫に伝わるのに、夜明け近くまで時間を使って。ようやく、クムハ夫妻の離婚危機は去ったのであった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆

CASE2:ミィレ=クレナ


 うーん。と、ミィレは唸った。

 スマホの盤面には、日本語で3つの選択肢が並んでいる。


「好きな食べ物について」

「好みの女性について」

「大事なものについて」


 サガミから紹介されたゲームだが、ジャンルとしては仮想恋愛ゲームというものらしい。難しい操作は必要なく、文章を読み進めて、時折こうして出てくる選択肢を選んで、攻略対象の相手と恋を成就させるというゲームだ。

 そして、今は主人公である少女が、攻略対象の男性キャラに対して質問をしようというシーンなのだが。果たして、どれが正解なのやらと。


 「食べ物」では、当たり障り無いのはいいのだが、その分進展しない気がする。

 「好みの女性」では、あまりにも意識してますアピールしすぎで不自然すぎる気もする。いきなりそんなこと訊かれても、引かれそうだ。

 「大事なもの」では、そういう方面へのアピールは薄いが、これはこれで重すぎる気がする。


 セーブはしているのだが。ここから読み進めていくとなると、結果に辿り着くまでにまだ時間が掛かるのだ。ニホン語は難しい。故に、選択には慎重となる。

 意を決して、ミィレは「大事なものについて」を選択した。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 その翌日。

 ミィレはサガミを掴まえた。

『ソル の 恋 話 どう 攻略 する 正解か 教えて 欲しい?』

 うんうんと、ミィレは頷いた。


「お忙しいのは分かりますけど、どうか」

『私 も 一部 しか 分からない。誰か 好きな 人 いるのか?』

 そう訊かれてミィレは小さく呻くが。背に腹は代えられない。


「この人です」

 スマホにダウンロードしたゲームを見せる。

『ふ~ん? この人 ですか。ああ 人気ある らしい ですね』

「分かりますか?」


『ネット 探す する。多分 分かる。そうしたら 後で 教える。それで いい?』

「ありがとうございます」

 これで、何度も攻略に失敗しているので心が折れかけていた。

 ネットで検索するという方法も考えはしたが、それもまたどこをどう探せばいいのか、よく分からなくて断念した。


『しかし、この人 少し シラミネ に 似ている 思いませんか?』

「そうですか? 全然、似ていないと思いますよ?」

 にっこりと、ミィレは笑顔を浮かべた。


『え? そう? でも、この 目の形 とか 髪型 とか――』

「全く似ていないと思いますよ?」

『あ、うん。そう ですね』

 サガミは笑顔を浮かべて、同意を返してきた。

 少し頬が引き攣っていた気はするが、それはきっと気のせいだろう。

『ソル=フランシア恋愛譚 -貴方に想いをときめかせて-』

漆沢刀也が別連載で書いている、なんちゃって悪役令嬢ラブコメ(?)の転生先ゲームタイトル。

百人近い攻略可能キャラがいるとか何とか。

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