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光明

先週、先々週とお休みを頂きましたが。

今週からは大丈夫。だと、思います(目逸らし)。

 その日、実験室は歓声に包まれた。

 期待通りの結果が出たことに対するリアクションは、地球の人間も異世界の人間も同じなのだなあとか、そんなことを佐上は思う。

 佐上も佐上で、安堵の息を吐くのだが。


 広域破壊魔法兵器を検知する対象として、プログラミング言語で使われる様々な予約語を使うことは出来ないだろうか?

 その確認の実験をしたのだが、実験が成功した。


 もっとも、その実験そのものは極めて簡単なものである。佐上が組んだり、チェックしたプログラミング魔法を対象に、広域破壊魔法兵器拡散防止機構の人達が、その魔法に予約語が組み込まれているかどうかを判別出来るか試しただけだ。


 互いに、相談が出来ないように分けられ、また魔法を施した物の確認順番も別々に渡している。その上で、何十という実験用の魔法を区別したのだ。

 これが、誰一人として一つも間違えずに正解出来るとなると、偶然ではとても片付けられないほどに低い可能性となる。予約語を対象にして、プログラミング魔法か否かを判別することが、広域破壊魔法兵器拡散防止機構の人間には可能であるという証明になった訳だ。


「これで、皇帝陛下の神器に、予約語がチェックの対象だって覚えさせる事が出来れば、広域破壊魔法兵器と同じようにプログラミング魔法を監視出来るっちゅう話やな」

『はい。 その 通り』

 佐上が確認すると、広域破壊魔法兵器拡散防止機構の人間は頷いた。


「そして、今度はこういう。予約語ばかりを使ったプログラミング魔法を用意すればいいと。おたくらが持っている、広域破壊魔法兵器の魔法意思のように、確認するためのものを」

 そして、その問いにもまた、同様に彼らは頷いた。

 日程まではまだまだ決まってはいないが、彼らのうちの一人が、予約語一覧と化したプログラミング魔法を持って、皇帝陛下へと渡す。そういう事になるのだろう。


 これから、本当に神器がプログラミング魔法を監視出来るのかというのはまたそれからの結果確認となるのだが。それも、上手くいくことを願いたい。

 もっとも、ここまで辿り着けたのなら、それもほぼ問題なくクリア出来るだろうというのが、広域破壊魔法兵器拡散防止機構の判断のようではある。


 主に通貨などに使われるのだが、魔法意思の認識阻害魔法というものもある。そういうのも組み合わせていくことで、プログラミング魔法を施せる場所さえ絞り込めば、無用な拡散の可能性も大分抑えられる。


「後は、どんなプログラミング魔法やったら、安全かつ有益に使えるのか。その確認やな」

 柴村社長ほどに研究者気質というものは持ち合わせていないと思うが、未知に対する好奇心は佐上も刺激を受けている。絶対に、彼らに話すことは許されないし、話す気は無いが。

 それでも、こんな話、もしも社長に話したらどんな顔をするだろうかとか。そんなことを佐上は思った。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 プログラミング魔法の実験が再開された。

 とはいえ、実験の目的や安全性の説明を伝え、識者の許可と地域住民の理解を得た上でなければ行えないので、出来ることはかなり制限されている。

 これも、まだまだ可能な実験は限られているが、その中でも出来るものからやっていくことで、少しずつ切り拓いていけるものがあるだろう。


 まず、プログラミング魔法では一定の単位時間でどのくらいのループ処理が行われるのか? その測定を行おうという話になった。

 これは、施す魔法意思には、純粋にプログラミング部分だけを使用している。何らかのエネルギーを発生させたりはしないので、何かを破壊するような危険性は薄いと判断された。故に、許可が下りた形だ。


 測定単位時間は、一秒で設定し、その間に繰り返し処理を実行する。繰り返し処理が一度実行される事で、内部のカウンタが加算されるというロジックになっている。

 なお、数値計算でよく使われるint型やlong型などでは桁数が足りなくなる可能性も考慮され、カウンタの変数としては、巨大な数値も扱えるそれ用のオブジェクト型を使用している。


 無事に、実験は終了したのだが。

 この結果に、関係者一同は絶句した。

 何故なら、最新のスパコンが処理したかのような値が結果として確認されたからだ。現在、家庭や職場に普及している一般的なPCでも、数億から十数億程度の値が出るのだが、それに比べてもまるで桁が違う。


「ひょっとして、あの時ってこんな数の光魔法が実行されていたっちゅうこと?」

『光 魔法 やる 時間 考える 少し 減る 可能性 ある ですが』

『加えて マナ 減る した 影響も ある です』

 しかし、それらを考慮しても、やはりとんでもない数の光魔法が実行されていたことには間違いないだろう。


『むしろ いや。だとしたら、 あの結果は 被害 小さい 気がする』

『何か 抑制 力 働いた?』

『実験 出来ない。しかし 単純な 予想と あの日の 実態 違う可能性 ある』


 一方で、興奮しながら、この結果を検証しながらああでもないこうでもないと、新たな仮説を考える学者達の声も佐上の耳に届いたりしたが。

 でもやっぱり、魔法というのはかなりとんでもないものなのではないかと。改めて佐上は思った。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 続いて、繰り返し回数を制限した上でのプログラミング魔法を実験することとなった。

 これもまた、繰り返し回数が少ない上であれば、その中で実行される魔法も、そうそう大きな影響は周囲に及ぼさないだろうという考えによるものだった。


「う~ん?」

 佐上を始めとして、実験に参加した人間は納得したような、していないような。そんな顔を浮かべた。

 まず、恐れていた、先日の事故未遂のような真似は起きなかった。そして、予想していたとおりに、プログラミング魔法そのものも終了には至らないようだった。


 では、光がループ回数にそのまま比例して明るくなっているかというと、どうもそういう訳でもなさそうであった。

 体感でもそうだったが、照度計を用いて客観的な値を測定しても、同様であった。

 あまり繰り返し回数を多くしても、ということでその日は最大で10回までの繰り返しに実験を留めて終了したが。どこかで、明るさの限界値があるのではないか? そんな仮説が出ている。


「これで、今度は電気やな」

 電気魔法は、光魔法とは違い、一瞬で実行が完了する。その点を比較するために、実験対象として選ばれた。

 あとは、これが持続的に使用出来るというのなら、その利便性は非常に大きい。地球上で電気を使用して使う道具を持ち込むだけで、異世界で出来ることは一気に広がるのだ。

 様々な期待と不安を抱きながら、彼らは続けて実験を開始した。

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