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この異世界によろしく -機械の世界と魔法の世界の外交録-  作者: 漆沢刀也
【異世界言語習得開始編】
18/279

情報交換の体制は変更となりました

白峰が頑張ったので、外務省とか異世界関連事案総合対策室側も、ちょっぴり体制変更となりました。

新キャラは登場だけど、しばらく影薄いです。

 月野は異世界関連事案総合対策室の片隅に、突然招集された。

 彼も含め、集められたメンバーはいずれも、昨日に異世界からの使者を出迎え、こちらで情報交換を行った人間達だ。いずれも、外務省に所属している。

 何事か、緊急を要する事態でも発生したのか? 一同の表情に、微かな緊張が浮かぶ。


「突然集まって貰って済まない。今日から。いや、今から少し体制の変更をする必要が出てきた。理由はこれから話す。まあ、悪い方向に進んだという話じゃないから、そういう心配はしなくていい」

 メンバーを集めた桝野の言葉に、一同から少し緊張の色が抜けた。

「君達は既に知っていると思うが、我々としても、言葉を覚え異世界の人間と円滑なコミュニケーションを取れるようにするのは、優先度の高い問題となる」


 一同が頷く。昨日の会談で、その重要性は彼らも思い知っている。

「これまで、言語学者を中心に協力をお願いしてきたが、なかなか色よい返事が貰えなかった。だが、昨晩の遅くに、外務省にメールがあってな? 協力させて欲しいというところが出てきた。これについては、何人かは知っていると思う。シフトによっては、まだ詳細を知らない人間もいると思うがな」


 メンバーの一人が手を挙げた。

「それなのですが、大丈夫なのですか? AIを使った翻訳機を作ろうとしているとは聞きましたが、小さな会社なんですよね? 技術力については、一概に規模の大小で判断は出来ないと分かっているつもりですが。身元の確認は取れているのでしょうか?」

「問題ない。既に確認は取って貰って、内調も公安もシロだと言っている。裏社会との繋がりも一切無いそうだ」


「まあ、それもそうですね。念のためでしたが、失礼しました」

 小さく頭を下げるメンバーに、桝野はうむと頷き、小さく笑みを返した。構わねえよ。と、そういうことだろう。

「それで、昨日ここで話して貰った白峰君に、あちらの使者と、言語について色々と決めて貰うように頼んである。これからしばらく言語の習得に力を入れたいという要望を伝え、その際には英語にするか日本語にするか。あとは具体的にどうやって学習するかといった話だ」

「つまり、その話が纏まった? そういうことですか?」

「そうだ」

 桝野は頷いた。


「まず、言語の習得に力を入れる方向で進める。これについては、あちらさんも賛成だとのことだ。まあ、あっちも言葉が通じないのは困っていたんだろう」

 「だろうなあ」と、各から苦笑が漏れる。

「それで、何語を覚えることになったかなんだが。これについては、まずあちらの使者には日本語と英語を覚えて貰うことになった」

 メンバーからどよめきの声が上がった。月野も、思わず目を見開くのを自覚した。

「あの? それ、白峰君がそう相手の方にお願いしたんですか?」

「いいや? どうやら、あのお嬢さんがそう言い出したらしい。よほど、自分の言語学習能力に自信を持っているのか、可能ならそれが一番の選択だと考えた上での判断か。まあとにかく、そういうことになったそうだ」


 で、だ。と、桝野が続ける。

「あっちもあっちで、どうやら今まではあの国というか、あの地方特有の言語で話をしていたそうだ。そして、それとは別に、こっちで言う英語に相当するような、広く使われる言葉があるらしい」

 なるほど、と月野は頷いた。こちらに日本語や英語があるように、あちらにもそのような事情があったとしても何も不思議なことではない。

「それで、彼はどうしたんですか?」


「白峰君も、あちらの両方の言葉を覚えることにしたそうだ」

「え? 大丈夫なんですか? 彼?」

「さあな。有島によると、煽られたように見えたらしいけどな。こう、向こうのお付きの女性が『流石お嬢様』みたいに感激したような顔を浮かべたのに対して、白峰君も『じゃあ、やってやろうじゃねぇかこの野郎』というか『こっちも、意地を見せてやる』というか、そんな感じに火が付いたっつうか」


 あちこちから「えぇ?」といった、ざわめきが湧いた。

「白峰君、結構ちょろくないですか? いいんですかそんなので?」

 そんな、誰ともなしの問い掛けに、桝野は苦笑いを浮かべて頭を掻いた。

「まあ、やる気があるのはいいことなんじゃねぇの? 覚えて貰えるようなら、それに越したことはない。それに、彼ならそれほど分の悪い賭けでもないだろうしな」

「なら、いいのですが」


「まあ、お互いに無理そうなら別の手を考えるまでだ。当人達が一旦それでいくというのなら、それでいい。こちらとしても、各国に対して説明がしやすいしな」

「それはまあ、そうですが」

 これまでは、日本語が中心だったというだけで、無用な詮索がされていたのだ。それが無くなるだけでも、大分楽になる。また、その一方で日本語を覚えてくれるというのであれば、それもまたこちらとしては都合がいい。


 白峰の選択としても、そこで相手に無用の借りを作らないという意味でも、間違ってはいない。

 あの使者がどこまで考えたか、白峰がどこまで考えていたのかはともかく、状況としては最善ではないかと月野は判断した。また、だからこそ桝野も異を唱えていないのだろう。

「それで、どうやってお互いの言語を学習するかだが。翻訳機を開発している技術者の意見も参考にして、まずは日用品の名前を覚えていこうという事に落ち着いた」


「具体的には、どうやってですか?」

「白峰君は向こうの『お屋敷』内にある日用品を見せて貰う。台所とか、そういうところからな。そして、あの使者のお嬢さんにはどこかスイートルームを用意して、そこでこちらの日用品というか、部屋の間取りなんかを見て貰いつつ、そうして物の名前を覚えて貰おうということになった」

「え? 部屋、取れるんですか? 予約とかは? そりゃあ、ホテルのスイートルームなら、セキュリティ的にも格式にも問題ないとは思いますが」


 桝野は小さく嘆息した。

「幸か不幸か、あのゲートのおかげで東京近郊は物流が滞っている。要人が寄り付かん。おかげで、急だったにも拘わらず、空いている部屋も見つかったようだ。ホテルからは喜ばれたみたいだぞ?」

 代わりに、もう少し離れた千葉、埼玉、神奈川あたりに経済的交流が集中しているが。また、東京都の近県だけではなく、各地方都市でも東京の代替として経済が活性化し、特需が生まれていたりする。

 東京都民の怨嗟の裏で、地方はゲート様々とかいう反応だったりするようだ。


「そういうわけで、スイートルームに何人もぞろぞろと行くわけにいかん。また、彼女に色々と教えるのに、翻訳機を作っている民間人一人に任せるわけにもいかん。なので、この体制は変える必要が出てきたというわけだ」

 なるほどと、各が頷く。

「まず、月野君。君にはこれから急ぎ、ホテルに向かって使者の相手をしてくれ」

「分かりました」

 冷静に、淀みなく、月野は二つ返事で了承した。

 いかなるときも揺るぎなく。それが、彼のモットーである。

新キャラ。月野渡。

CVは石田彰さんとか子安武人さんをイメージで。

次回も、まだこやつの影は薄いです。というか、当分は色々仕込み回で盛り上がり的には平坦かも。

佐上が鰹ダシなら、月野は昆布ダシみたいな? 佐上とコンビを組んで、二人が馴染むと、初めて旨味が出てくるようになることを期待。


白峰の反応については、大体こんな感じです。リアル野球盤の杉谷選手ですな。


アサ「じゃあ、私は二つの言葉を覚えることにするわ」

ミィレ「さっすがお嬢様。私にはとても出来ないことを平然とやってのける。そこに痺れる憧れるうっ!」

アサ「……(どやぁ)」

白峰「……(ぴくっ)」

佐上「白峰はん?」

有島「白峰君。落ち着きなさい。無理する必要は無いのよ?」

白峰「大丈夫、頭は冷静ですよ(深呼吸)。最適な選択をしなくちゃいけませんからね」

アサ「……(どやぁ)」

ミィレ「(慈愛の目)」

白峰「やってやろうじゃねぇかこの野郎っ!!」

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