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残された人達

 渡界管理施設。そのルテシア側にある、各国外交官用の仕事部屋。

 ここは今、だらけにだらけた雰囲気が蔓延していた。

 昨日に休みを取ったゴルンはそこそこしゃきっとしているものの、ライハは天井を見上げ、セルイは机の上に垂れている。


 ルウリィは昨日に引き続きアサのプライベートビーチに行っている。ディクスは今日が休みだ。

 普段の約半数がいない。仕事も、こうなるように調整済み。となると、緊張感に欠けるのも仕方ないことだろう。むしろ、これまでが働き詰めだったのだから、こういうときこそ気を緩めるべきだと。

 何かあったときのため、この場に詰めてはいるが。


 働かない頭で、ライハはぼんやりと現状と今後の話を考える。

 連日の過密スケジュールの結果、どうにかこうにか異世界側での国際的な組織に加わった国々。国家として認められている国々と挨拶は出来た。日本と明らかに敵対している国は、コンタクトの取りようが無く、また伝え聞く内情なども鑑みて、付き合う価値は無いと判断したが。


 アサ=キィリンではないが、通路が繋がった異世界の先が、ニホンであってくれてつくづくよかったと思う。他のほとんどの国でも問題は無かっただろうが。明らかに、面倒になっていた可能性が高い国々というのもあった。その様な国と通路で繋がっていたら、今頃どんなことになっていたことやらと。


 更に言えば、アサ=キィリンもまたイシュテンのみの国益を優先した動きをしていなかったことも、よく分かった。若者にありがちな、青臭い理想主義の賜物かも知れないが、これらの信頼こそが、ある意味で最もイシュテンに貢献したとも言えるだろう。

 そういう意味では、繋がった国がイシュテンであったこともまた、自分達にとっては幸運だったかも知れない。


 一緒になって働いてくれている各国の外交官は、みな自分達の仕事を最大限の力で果たしてくれている。おかげで学術。芸術。インフラ。経済。食文化。さらにはそれらが、今に至るまでの歴史。そういったものを各国ごとに概要としてまとめて、イシュテンの王都であるイシュトリニスへと送ることが出来た。


 こうして、直に各国の情報を知ることが出来た。では、今度はその次の段階の話だ。

 こちらの各国と、異世界の各国との間で、正式に国家承認を行い国交を結んでいく。この方針そのものについては、ニホンからも聞かされている話であり、認識に異議は無い。大凡の国家は、信頼して国交を結んでも問題は無いだろう。懸念が残る国家については、慎重に見極め、国交樹立は後回しにさせてもらうが。


 今頃は、イシュトリニスにある各国の大使館でも、仕事に追われて大変なことになっているのだろうなあと。そんなことをライハは思う。こっちはこっちで、各国の情報を整理して送ればいいだけだが。いや、それも大変な作業なのだが。あっちはあっちで、貰った情報から具体的に方針を決めて、各国と調整をしなければならないのだから。


 次に、連絡手段と、交通のインフラの問題だ。

 こちらも、ニホンから話に出ているとおり、実現しないことには国交樹立への道も長いものになるだろう。

 ライハはスマホを懐から取り出し、何とはなしに眺めた。

 掌に収まるこんな小さな機械で、遠くにいる人間と会話が可能だというのだから、異世界の技術は想像を超えている。こんなもの、空想魔法小説の産物だとばかり思っていたが。


 非常に便利な機械だと思う。しかし、これをそのままこちらの世界で流通させることが出来ないことが、残念でならない。材質もそうだし、広域で使えるようにするためのインフラ整備にも時間が掛かりすぎる。魔法工学なる、魔法と機械技術の融合で乗り越えられないかという発想もあるようだが、実現性はまだ未知数だ。


 ただ差し当たって、まず可能としたいものは電力の確保だろう。

 パソコンやスマホもそうだが、異世界から持ち込まれている機械は電力に依存している部分が大きい。そして、逆に言えば電力さえ確保出来れば、あちらの世界の技術で大抵のことは何とか出来る。

 交通手段についても、電力さえ確保出来れば、こちらの飛空挺よりも安価で大型のものを製造することも、十二分に可能性があるそうだ。


 そんな訳で、電力供給用の魔法装置。とでも呼べばいいのだろうか? その研究の可否については、用途やメリットを記載して伺いを立てている。イシュトリニスからはまだ正式な返事は返ってきていないが、悪い方向には話が転がっていないそうだ。

 権利云々についても、どこかの国家が独占するものではなく、異世界も含め超国家的な資産として扱う。そういう話でまとまりつつある。

 今はまだ朧気だが、こうした権利関係を考えても、後々は異世界とも融合した国際組織が立ち上がるということになるだろう。


 自分が死ぬまで、どこまで進んだ姿を見ることが出来るのかと思うが。

 ライハとしては、定年後は故郷に戻って、家族と一緒に過ごすことを夢見ているのだが。この街の未来もまた、気になるところだ。そういう意味では、アサ=キィリンが少し羨ましいかも知れない。

 そのアサ=キィリンはきちんとリフレッシュ出来ているのだろうか? それが少しだけ、気掛かりだ。

 次なる局面は、すぐそこで。そんな話が、これからも絶え間なく続くのだから。

本来なら、今頃ってこのあたりまでエピソード進んでいるはずだったんだよなあと思いつつ。

まだここかあと思う今日この頃。何だかんだ、着実に予定消化はしているんですけどね。


あと、すみません。来週は個人的な都合でお休みとなります。

それと、「八月中はもしかしたら投稿が不安定になるかも」と言っていた原因のリアル事情が、時期がずれて、より大事になって現実味が増してきました。

数ヶ月ほど、そのリアル事情で投稿出来ない週もあるかも知れません。すみません。

流石に、年内にはこの問題も片付くと思うんですが。

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