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異世界水着事情

 ココココンと軽い音がドアの外から響いてくる。

「はーい。どちら様?」

『私 です。ミィレ です』


「ああ、ミィレはんか。ええで。入ってや」

 佐上がそう言うと、ミィレが渡界管理施設の外務省用の部屋に入ってきた。胸の前に紙の束を抱えている。


『お昼 時間 失礼 します。食事 してます か?』

「いや、もう済ませたわ。何? 食事に誘いにでも来てくれたん?」

『いいえ 違う です』


「じゃあ、白峰さんにご用事ですか? すみません。今日は外務省から呼び出されて、夕方まで戻って来られないんですよ。伝言なら、伝えますよ」

 ちなみに月野も、民間人である佐上にはちょっと参加が難しいレベルの会議あるとかで、外に出ている。なので、今日はほとんどの時間は女性陣のみが部屋にいることになる。


『いえ。そういう話 も 違う です』

 海棠の質問にも、ミィレは首を横に振った。

『海 行く 日 近い です。だから 水着 一覧 用意 しました。お店 注文 するため。参考に』

「ああ、そういうことか。ありがとうな」


『それまで 水着 買う 時間 無い。心配 しました』

「そういうことですか。お気遣い、ありがとうございます。実を言うと私まだ、水着買っていないんですよね」

「なんや、海棠はんもか。うちもや」


『大丈夫 ですか?』

 怪訝な顔を浮かべるミィレに、佐上はひらひらと手を振った。

「大丈夫や。ネット通販使えばすぐに届くし。うちも単に、どれにしようか迷っているだけやからな」


「あ、佐上さんもですか? 私も何ですよ。どれにしようか迷っちゃって。これなんか可愛いなあと思ったら、そういうのに限って高いんですよねえ」

「あはは。あるある」

 うちは、機能性重視で選ぶつもりやけどな。もう、そんな歳やないし。と、佐上は自嘲するが。

 というか、学生時代でもそんなはっちゃけた格好はした覚えが無い。一度くらい、思い切った真似をしておけば良かっただろうかと今更ながらに思う。


『ツーハン 分からない です。教えて 欲しい です』

「ああ、すまんな。訳せていなかったか。ええとな? パソコンを使って、ネットからお店に注文するんや。そうすると、お店から注文した水着がこっちに送られるっちゅう仕組みや」

「配達先は、ここにしないとダメでしょうけどね」


「せやな。あと、あっちの世界に持ち込むために、ちょっと手間掛かるらしいけど」

『では 私は 余計な 真似 でしたか?』

「いや、そんなこと無いで? そっちの水着がどんな何かも興味あるし」

「そうですよ。私も見てみたいです」

『よかった です』


 ミィレは微笑んで、佐上と海棠の間へとやって来た。

 二人の前に、水着の一覧を置く。おそらく、水着を取り扱っている店のカタログか何かなのだろう。一覧の端には、住所と店名らしきものも印字されていた。


「へぇ~。そちらの水着って、こんな感じなんですね」

『正しい 言う 最近 イシュテン 流行 です』

 興味深げに、佐上と海棠は水着の一覧を覗き込んだ。

 シルエットは上下に分かれたスポーツウェアを思わせるような形だ。上が、結構布面積を取っているスポーツブラの様な具合で、下はスパッツのような格好だ。

 柄は結構派手なものが主流らしい。色とりどりのモザイク模様の柄が多かった。


『もし 好きなもの 見つけたら 言って欲しい です。私 お店に 伝えます』

「そうですねえ。これはこれでなかなか……悩みます」

 海棠が唸り声を上げた。


『二人。どんな 水着 探していますか? 好み。知りたい です』

「せやなあ。今のところ、うちはこんな感じのものを探しているわ」

 佐上はネットで、これまでの検索で候補に挙げていたものを表示させていく。


「へえ。ワンピースタイプですか。いいですねえ」

『可愛い です』

「せやろ? んで、どれにしようかなあってもうちょっと考え中なんや」

 特に、白地に赤の花柄で、アロハシャツに通じているようなものが気になっている。

 しかし、一番の重要ポイントはその布面積の広さである。水着なのに、ゆったり目に見えるデザイン。結構、可愛い見た目であると同時に、これなら大分体の線を隠せる。特に腹。素晴らしいデザインだ。


「海棠はんは、どうするつもりなんや?」

「私ですか? 私は、こういうのがいいかなあって」

 そう言って、佐上が画面に表示させてきたものは、鮮やかなチェック柄のビキニであった。でもって、色々とフリルも付いている。


「な、なかなか大胆やな」

「そうですか? あ、でもこれパレオも付いているんですよ? こういう水着、動きやすくて好きなんですよねえ」

「そういうもんか」


 と、不意に佐上は剣呑な気配を背後から感じた。

 何事? と、思わず振り返ると、ミィレが顔を真っ赤にして目を剥いていた。

 画面を指さして、何事かを捲し立ててくる。


「あの? 佐上さん? ミィレさんは何て?」

「いや、分からん」

 あまりにも早口なのか、それとも登録されていない単語を使っているのか分からないが。翻訳機が機能していない。


「でも、どうやら『えっちなのはいけないと思います』とか、そんな感じのことを言っているっぽいな」

貞淑で知られるイシュテンの女性には、この水着は刺激が強すぎたようだ。

メイドさんに一度は言わせたい台詞ですよね。「えっちなのはいけないと思います」って。

え? 元ネタ原作の年? 深く考えないようにしよう。

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