表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/281

近付きすぎた者

ゲート解析中に、急に倒れてしまった佐上。

 魔法意思とは、どういうものか?

 白峰達からは、魔法を使ったり施したりするときに思い浮かべるイメージであり。世界を超えたような、世界と繋がったような感覚を覚えるようなものだ。そんな風に佐上は説明されていた。

 そして、実際に異世界に引っ越しをして色々な魔法を使ってみたときの感覚も、そういった説明と同じようなものを感じていた。


 でも、そのイメージというものが、固定的であるということが、少し引っ掛かっていた。

 更に言うと、その数々の魔法に対して、魔法意思にも部分的に共通点があるような気もする。

 この世界の人間達が、それに気付いていないはずがないとは思う。だが、この共通点というものが何ものでどんな意味を持つのかはさっぱり分からない。


 地球上の、儀式的、あるいはエンターテイメント的表現という意味でだが。魔法を使うときは、魔法陣を地面や虚空に描いたり、呪文を唱えたり。とかく、何らかの特定の術式を構成して実行するというのが一般的だ。

 そういう意味では、佐上にとっては、この魔法意思というのは要するに脳内で思い浮かべる魔法陣のようなもの。そんな理解だった。

 そして、現代はその魔法陣というか、システムが全然分かっていない。だから、異世界の人達は、遺されたものをそのまま継承して使っていくとか、神代遺跡の中から使えるものを場当たり的に切り取って、何らかの用途に落とし込むしかない。そんな風に佐上は考えている。


 しかし、神だろうが何だろうが、仮に魔法を創ったというのなら、何もかもを無秩序に作るということはしないだろう。


 如何にも、プログラマ的な発想ではあるが、使い回しの出来る部品は最小単位から用意しておいて、またそれを組み合わせて部品を作る。その部品をまた幾つも繋げて、大がかりなシステムを作る。そういう方法が効率的だ。

 また、場合によってはそういう部品群を用意だけしておいて、実際には必要なところに必要な部品だけを呼び出して使う。システム的な話で言えば、モジュールやパッケージ、ライブラリを用意し、使うようなものだ。


 佐上はゲート以外の神代遺跡が具体的にどんなものかは知らない。しかし、そういうものを幾つも作るというのなら、魔法の部品群があり、用途に合わせて部品を使い、神代遺跡を実現させた。そんな話ではないだろうか?

 これが、佐上の仮説であった。佐上自身は見つけていないが、どこかでは同様の発想をしている人間も多くいるだろうと思っているが。特に、偉い学者先生とか。

 なので、神代遺跡を探るときも、思ったのだ。神代遺跡から感じ取れる魔法意思をなるべく広く、全体が分かるようにと。


 彼女が目を瞑り、しゃがみ込んで、虹色の床に手を触れた瞬間。

 際限なく広がっていく意識に、佐上は自我を見失った。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 なんや、これ?

 最初に思い浮かんだ言葉が、それだった。

 目の前には、白い天井。

 続いて、消毒液に匂いが鼻についた。


 静かに、規則的に機械の動作音が聞こえてくる。

 真っ白な布団に包まれながら、佐上は瞬きを繰り返す。

 記憶がまるで繋がらないことに困惑しながらも、佐上は周囲の状況から、ここがどこなのかを理解した。


 病院、ということのようだ。

 頭に何か、覆われるように取り付けられている。

 周囲には誰もいない。


 けれど、ここが病院なら。呼べば直ぐに誰か来てくれるはずだ。

「よっこいせ」

 彼女は元気に上半身を起こし、ナースコールの呼び出しボタンを探した。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 翌日の夕方、海棠が見舞いに来てくれた。

「大丈夫ですか? なんか、佐上さんぐったりしてますけど」

「ああうん。大丈夫や。朝から、何かある度に医者から質問攻めされて、検査して、疲れただけやさかい」


 佐上は大きく溜息を吐いた。

「うちは、本当に全然何ともないって言うてんのにな。しつこいったらあらへんわ。こんなところ、長くいたら病気になってしまいそうや。さっさと退院してしまいたいわ」

 悪態を吐くと、海棠は苦笑を浮かべた。


「でも、良かったじゃないですか。本当に何も無くて。みんな心配したんですよ?」

「ああうん。まさかあれから、丸一日気を失っていたとは、うちも驚いたわ。心配掛けて、悪い思うとる」

「お医者さんからも何度も訊かれているかも知れませんけど。後遺症も、無いんですよね?」

 佐上は頷いた。


「うん。全然そういうのは無いわ。何か、物凄いのに頭使って疲れたような感覚はあったんやけど。それだけやし。それも、頭痛薬貰って寝たら無くなったしなあ。お医者さんが言うには、頭の働きも正常そのものやと。念のため、あと一日か二日様子見て、それで大丈夫そうなら、もう退院ゆうことらしいけどな」

 この点、自分でも大事無くてよかったと思う。

 医者に付き合わされてじっくりと話は出来なかったが、改めて家族にも話をした方がいいだろう。


「ちなみに、あのとき佐上さん、何を視たのかとか、何か覚えてたりしませんか?」

 佐上は肩を竦めた。

「いや、これが全然さっぱりやな。落ち着いたら、何かの拍子に思い出したりするところもあるかも知れんけど。何にも覚えてないんよ」

 漠然と、巨大すぎる何かを感じたような気はするのだが。説明のしようが無い。


「あ。そういや、うちが倒れてから実験はどうなったん?」

「ゲートの神代遺跡については、調査は一時中止になりましたよ。騒ぎでそれどころじゃなかったですから」

「あちゃあ。そら、ほんまにうち、迷惑掛けてしまったなあ」

 佐上は顔をしかめた。


「でも、別にちょっと興味深い実験結果が出ましたよ。もうじき、ニュースにも出ると思いますけど」

「へえ? どんな?」

「こっちの世界でも、ゲートの周辺。というか、渡界管理施設の中なら、微量ながらマナが検出されたみたいです」


「マジでっ!?」

 海棠は大きく頷いた。

ボツネタ。


佐上「知らない、天井や」

佐上「いや、言いたくなるやん? こういうシチュやと」


劇場版も完結したという意味では、時事ネタ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ