魔法現象の観測
短いですが、いよいよ以て魔法というものを器具を使って計測していきます。
魔法の施し方の体験をしたその翌日。
今度は魔法現象の観測を行うことになった。とはいえ、これも一気に大がかりな測定など出来るはずもなく、持ち込んでいるのはサーモグラフィー搭載のカメラだとか、照度計だとか、電流計だとか、そんなものぐらいだ。
それらを使って、少しずつ進めていく。
のちのちは、より大がかりで精密な測定器を持ち込み、専門の技師にも協力をお願いすることにもなるのだろう。
今日は灯りの観測と熱の観測だ。
市販の灯りや、調理用の熱板を講義室に用意している。
それと更にもう一つ、彼らに渡されたものがある。
マナの測定器。これをルテシア大学から渡された。『視る』といった言葉を発することで、マナの測定器に施された魔法は発動する。
魔法は周囲のマナを魔法意思という形にして、対象の物体に込める。そして、発動もまた、マナを消費することで発動する。
この話は、白峰が異世界に訪れるようになった頃に、ミィレから聞いている。公表もされている。
その上で、如何にしてこのマナという存在を確認していたのか? それについては、徹底的に秘密にされた。アサ達に何度訊こうと、答えようとはしなかった。
理由は説明された。これもまた、詳細は説明されなかったが、軍事、防衛上の理由によるものだと。
なので、この話はそれ以上に問うことは止めにしていた。
こんな、マナを観測出来るものがあると分かっていれば、当然「地球上でも魔法が使えるか確認出来るのか?」という話になってくる。魔法の有用性、可能性に有益な利用方法を夢見る人間は多い。
しかし同時に、魔法を使った武器が使えるのか? そういう話にもなってくる。
結局、その話はお互いに武力的侵攻に意味が無いという結論に達したことから、立ち消えとなった。完全に消滅、ということは互いに人間である以上は、それもまた無い話だが。
そして、それでもなお。地球上で魔法というものが「使える」にしろ、「使えない」にしろ。確定してしまえば、その影響は未知数だ。研究者ならずとも、知りたい人間は多いだろうが、この問題の確認は影響が分からない限りは、止められることだろう。
それでも、こうしてマナの測定器というものを教えて貰えたということは、そこまでは信頼が進んだ証であると、白峰はそう理解した。
『視る』と手にしたマナ測定器に伝えてみる。
不思議な感覚だ。魔法を使うときはいつもそうだが、魔法意思が脳内に浮かび上がる。しかしその感覚は何というか、五感のどれとも違う。世界と繋がった。そう感じる感覚だ。
そして、マナ測定器の魔法を使いながら視る世界。それは確かに『何か』が満ちていた。まるで、光や空気のように、そこにあるのが当たり前のように。
「それでは、始めます」
まずは、灯りの測定からだ。
カメラと照度計の準備は既に出来ている。
「灯せ」
その言葉と同時に、灯りの魔法を施された立方体は発光した。照度計の数値も上がる。その様子をカメラは正確に記録していた。
また、発光する立方体を覆うマナが、精度は分からないが、確かに「薄く」なっていくことも感じる。
この実験に参加している、他の学者達がどう判断するかはともかく、これは確かに、マナを消費して魔法が発動していると考えるのは自然だ。
『脳波計も必要だな。これは』
誰かの独り言か。その呟きは、ドイツ語だったような気がする。
どうやら、研究に必要なものは、まだまだ増えそうだ。
人の感覚という曖昧にして説明が難しいものを如何にして数値に落とし込むのか?
こういう事を考える度に、自分はSF書いてるよなあとかと思う。
SFというジャンルが人気今ひとつだろうと、「もしも」でこういう考察をするのは楽しい。




