一章 履歴書
「それでは、お座りください」
三人のうち真ん中に座っている男が言った。
「え、あ、はい」
状況がのみこめないまま僕は椅子に腰掛ける。
「それでは最終面接を始めます」
僕からみて右手の方に座る男が落ち着いた声で そう言った。
「ちょっと待ってください!」
僕は人生で久し振りに大きな声を出した。三人の面接官らしき男達はこちらをみて目を丸くしている。そこで僕は口を開いた。
「そもそも面接って何ですか!?僕は履歴書を
出した覚えも面接を受けた覚えもありません!」
僕の記憶に何らかの障害がなければここ一ヶ月間は外にでることもなければ、ましてやペンを持つこともなかった。持っていたものといえば、ゲームのコントローラー、スマートフォン、パソコンのマウスくらいだろうか?
だから、僕が面接を受けているというのは何かの間違いだろう。たぶん同姓同名の人がいるんだろう。
さぁ、はやく家に帰って秋葉原へ行こう。
あれ?でもどうやってここへ来たのだろうか?
そんな不思議な思考を、かき消すように面接官の一人が口を開いた。
「いや、履歴書はここにありますよ?」
そこにあった履歴書の顔写真は間違いなく僕の顔だった。