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仙人伝説殺人事件  作者: ノース
事件編
6/19

密室殺人

ふわああぁぁ––––。

木下は大あくびをしながら大きく両手を上げ身体を伸ばす。気持ちいい朝だった。夕飯も最高だった。焼き魚が出てそれをスダチの絞り汁をつけて食べる。朝食も気になるところだが、それより木下は脅迫状のことが気がかりだった。何も起きてなければいいが。どうも昨夜は胸騒ぎがしていた。顔を洗い、眠気を覚まし目をスッキリさせると木下は多田野を起こす前に放送テレビのスタッフ達の所へ行った。部屋は昨日無理やり出て行かされる時にこっそり聞いていた。三一二号室からが部屋だと記憶している。

「金塚さん! 金塚さん! まだ寝てるんスか?」

三四二号室の前に昨日の宴会場で見た顔の何人かが集まりドアを何度もノックしている。

「どうかしたんですか?」

木下は側に行き、彼らの話を聞いた。

「ああ、昨日の刑事さん、それが、金塚さんがまだ起きないんですよ。今日は七時集合だったのに」

腕時計を見ると、時間は七時半確かに少し遅い。寝坊かもしれないが、昨日の今日だ。

「電話とかは?」

「しましたよ。もう何十回も。でも一回も出ないんスよ」

「心配だな……すいません、誰か従業員に言って合鍵か何か持ってきてもらえますか?」

「それなら私が……」と女性が小走りでフロントの方へ向かった。しばらくして従業員一人を連れてくる。

「少しお待ちください」

と言うと、従業員はマスターキーを出しそれを鍵穴に入れる。右に回し、カチッと鍵が開く音がした。従業員がドアを開けると、中におぞましい光景が広がった。金塚が倒れていたのだった。

「かっ……金塚さん! しっかりしてください!」

スタッフの男性が中に入ろうとする。

「だ……ダメです! 入っては!」

「はぁ⁉︎ あんた何言ってんだ!」

「私が調べます」

木下は警察学校での研修で習った知識を頭の中で浮かばせる。金塚の腕を持ち、脈を調べる。しかし、脈は全く動いていなかった。口からは嘔吐物。唇は青白く、手などはそれが見られない。そしてこのにおい……間違いなくシアン化系の毒物を飲まされた物だった。木下はスタッフ達に振り返り、静かに首を振る。

「うっ……」

部屋の近くにいた女性の一人がよろよろとおぼつかない足取りになった。

「どうしました?」

「何だか……めまいが」

「いけない! アーモンド臭です! すぐに換気して!」

木下は窓を全開にし、女性を離れさせる。しばらくすると、女性の顔から生気が出る。それを見て木下はほっと一息ついた。

「まだ症状の軽い方でよかった……もっと吸ってたらやばかったですよ」

「かね……つかさんは?」

毒気に犯され生気を取り戻したとはいえまだ言葉がたどたどしかった。

「残念ながら、亡くなりました。恐らくシアン化化合物を飲まされたものだと思います」

「シアン化……化合物?」

「よくドラマであるでしょう。青酸カリってやつ。それに近いやつです。さて、あなたも落ち着いたところですし警察を呼びましょう」

「ダメです! 圏外になっていて電話が……」

スタッフの男性がスマートフォンを持ちながら言った。

「なんだって! じゃあ従業員の皆さん! 電話を貸していただけないでしょうか?」

従業員の一人が「こちらです」と木下を案内する。電話を取り、一一〇とプッシュする。二、三回ほどのテルで電話は繋がった。

『はい、長野県警––––』

「殺人事件だ! 長野県警の捜査一課を––––」

『場所は?』

「長野県、軽井沢……葵って旅館です!」

『わかりました。ただちに急行いたします』

電話はこれだけだった。電話を切り、木下は急いで現場に戻った。

「刑事さん……今殺人事件って言ったけど、自殺じゃないんですか?」

「違う。自殺なら何か遺書や自殺に使う道具があるはずだ。それも何もない。恐らく殺人事件」

走りながら簡潔に答える。現場に戻り、再び中に入った。

「皆さんは入らないでください。現場保存しますので」

ドアを閉め、木下達は外に出た。あとは長野県警の仕事だった。しかし––––。

「ダメです! 昨日の吹雪の影響で地崩れしてしまい……」

「なんだって? くそッ!」

木下は地団駄を踏む。自分が捜査するしかないようだった。それも、初めての殺人事件だ。

「仕方ない。私が調べます。皆さんは自分の部屋で待機していてください」

中に入り、ドアを閉めると木下と死体だけになる。死体に一礼し、一分ほど黙祷する。

「少し調べさせてもらいます」

遺体にお辞儀をして衣服を調べる。手に紙のような何かが当たる感触がし、それを取り出した。

“六年前の殺人を忘れるな。ジェイソン”

紙にはそう書かれていた。昨日見た脅迫状と同じ、血で書かれている不気味な文字だ。紙を折りたたみ、袋の中に入れる。死体はベッドで苦しむようにもがいている。寝ている間にでもやられたのだろう。シーツには金塚のよだれが染みついている。

––––ぴちゃん

水が漏れる音がどこからか聞こえた。ベッドの下を見ると、水が染み込み跡ができている。その横に紙コップが倒れ、上には細いタコ糸が吊るされている。

––––紙コップ……水、タコ糸……毒物……。

木下はここまで見つけた証拠を頭の中で整理した。これは密室殺人だ。犯人が仕掛けたトリックが必ず残っているはずだ。

木下が開ける時、窓は完全に閉まっていた。鍵もマスターキーで開けるまで同じだ。一体犯人はどうやって部屋の外に出たというのだ?

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