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仙人伝説殺人事件  作者: ノース
解決編
15/19

犯人は……

本格的に推理が行き詰まり、木下は第二の事件の時を一から振り返ってみることにした。始めに、部屋にいると脇田の悲鳴が響いていた。そしてそれを聞いた木下は全員を集めている部屋に向かう。全員の安否を確認した。その時に脇田の悲鳴なのでは? という疑惑があり、全員は離れへ急行することに––––。考えながら木下はあの時のことを再現しながら走った。そして離れへ行くには女湯のドアから行ったらすぐだと中居から聞き、女湯へ––––。幸い、風呂は準備中の立て看板が置いてあったので少し人目を気にしたが捜査のためだと思い中に入った。さっきと違うところは湯が抜かれていたことだった。あの時、そのまま入ろうと足を入れたらかなりの熱さに驚き、玄関から離れへ向かった。

玄関へ行こうとすると、露天風呂に白い塊があるのを見つけた。

––––ん?

気になった木下は湯船に降り、その塊を人差し指で触る。プルプルした感触が指先に伝わった。

どうしてこんなところに……。

よくみると他にも白い粉が落ちてたりしていた。

事件に関係するものな気がして一応スマートフォンで写真に残しておいた。

––––なんだったんだ。あの感触は。

部屋に戻る途中、木下はあの感覚のことを考えていた。どう考えても勝手にできるものではない。誰かが意図的に何かをしたのだ。しかし、それの目的がわからず、木下は次のステップに移った。

事件の再現も終わり、脇田が殺された離れへ行った。脇田の遺体は従業員から借りたシートで覆われている。シートをめくり、再び遺体を調べた。脇田の遺体は硬直が進み、ところどころ硬くなっている。血はすっかり固まり、黒く変色している。脇田の顔は血の気が引いていて真っ白になっている。顔を調べ直すが、切り裂かれた跡以外変わった特徴はない。手を持ち上げ、冷たくなっている指を見る。血が付いていて、手からは血の匂いがする。

爪に、何かの皮が残っていた。

これは––––。

犯人を特定する重要なヒントになる気がした。

事件の再現も終わって木下は一人自室に戻り、これからの対策をすることにした。第一の事件のトリックは解けた。あれは化学的なものを使った毒殺トリックだ。今回の事件も化学を用いた物かもしれない。

そう考え、思考するがいい案が浮かばなかった。

「仙人……」

木下は呟く。

「あ?」

それを聞いた多田野は不満げに言った。

「水の上を歩く仙人って……今回の事件に関係あるんじゃ––––」

「はぁ」

「例えば、水の上を歩いて離れまでの距離を短縮させた……とかは?」

「そう言われるとそんな気もするが、どうやって水の上を歩いたんだよ。ガラスでも張ってたんか?」

「いや、それは俺が身をもって体験した。多分そういうのじゃない。ジェイソンは頭のいい人物だ。そんなモンでいったりしない」

「でも、その推理でいくと俺たちあの時全員離れに行ったんだぜ? そうなると、一人残っていたあの久保って人がジェイソンってことにならないか?」

「ああ。恐らくあの人が犯人だ」

「おいおい、ズバリいくねぇ……そういうのって、結構終盤まで取っておくもんだろ。でも、彼女が犯人だとしたら第一の事件でのアリバイは?」

「あれはトリックだ。ヒントはお前の気体状にしても殺せるのか? という疑問だ。そこから導かれたものは、俺も初めは驚いたよ。よくこんなトリックを考えつけるなってな。トリックの材料はスダチ、氷、タコ糸、紙コップ、シアン化ナトリウム、そしてヒーターだ」

多田野は初めは考えるか、両手を上にあげ、お手上げという格好を取る。

「ヒント!」

「仕方ねぇなぁ……シアン化ナトリウム……だけじゃないが、それは酸性と混ざると強力な毒ガスを発生させる」

「うーん––––いい案が今にも出てきそうで……出てこない……タコ糸にスダチをくくりつけてその絞り汁を垂らした……?」

「惜しいな。タコ糸にくくりつけたってところは正解。でも、それなら氷の説明はつかない。答えは始めにスダチの絞り汁を染み込ませた氷をタコ糸に結び、ヒーターの熱で部屋は暖まれそれで氷が溶けていき、その水が垂れて下に置いてあるシアン化ナトリウムに含まれ、ガスを発生させたんだ」

「まさか……」

「ところがそのまさかなのさ。それで死亡推定時刻を操作し、アリバイを作り上げた」

「で……でも、それじゃあ第二の事件は? あの人、足をくじいて赤くなってただろ?」

「彼女はあの時足を触っていた。その時につねったりして赤くさせて誤魔化すことくらいはできる」

「まさか……彼女が本当にジェイソン?」

「多分な」


––––まさか……彼女が本当にジェイソン?

––––多分な

二人の会話を聞いていたジェイソン––––久保香織は今までの冷静さを取り乱し、瞳孔が開き呼吸が荒くなっていた。まさか、あのトリックを暴かれるとは––––。

久保が三年かけて考えたトリックを一日で解かれ、さすがに焦りが見え始める。あの刑事は自分が犯人だと確信し、そういう捜査を始まるに違いない。久保の脳には刑事にトリックを暴かれるシーンが脳内に再生される。そんなこと、絶対にさせてたまるか。絶対に逃げ切ってやる。

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